Reflections of Tomorrow

シンガーソングライターを中心に、知られざる未CD化レコードを紹介していくページです

Michael Behnan

2008-10-08 | SSW
■Michael Behnan / Sweet Cosima■

  カナダの SSW、Michael Behnan のファースト「Night Shift Life」は紹介済みですが、今日は彼のセカンドを取り上げて見ました。 レーベルは同じ Mad Dog Records ですが、プロデューサーは前作の Doug Howe から George Bertok(前作にもピアノ等で参加)に交代しています。 Doug Howe は前作ではギターで全面的に参加しており、この交代は大きな意味があるでしょう。 彼に代わってギターでサポートするのは、Martin Hepburn 。 ジャケットの裏には Michael Behnan とともに彼だけが写っていることも、新たなパートナーとしての存在感の重さを表しているようです。 

  プロデューサー、そしてレコーディング・スタジオも変えたことが、どのように反映されているかはわかりませんが、このアルバムは前作よりも内容が濃い作品になっています。 セカンドになって気持ちに余裕が生まれたのかもしれませんが、Martin Hepburn との相性、そして曲調と演奏がよりシンプルになったということが、その理由でしょう。 

  枯れた味わいの名曲「Killaloe」でアルバムは幕を開けますが、この曲で聴ける Martin Hepburn のギターは名脇役ぶりを遺憾なく発揮した名演。 この曲でいきなりノックアウトです。 ブルージーな「Hound Me ’Til I Die」、郷愁あふれる「Trains Never Stop」とスワンプ好きにはたまらない曲が続いた後は、軽いスィングの「Janitor Joe」で軽く一服。 つづく典型的な R&B「River Song」では、昼間からビールを飲んでいるようなルーズな気分にひたり、「Don’ t Call Us」ではさりげない淋しさに包まれます。

  B 面は落ち着いたバラード「Lunchbucket Blues」で始まります。 ここでは Al Kates のペダルと George Bertok の名演が聴かれますが、何よりも曲の良さが光ります。 ちょっと軽めのスパイス「Penny Arcade」に続くのは、アルバム屈指の名曲「Don’t Go」です。 世の中に SSW は星の数ほどはいませんが数多くいるとして、この枯山水のような境地に到達できる人は稀でしょう。 アップなカントリー・チューン「You Name It, I Saw It」を挟んで、タイトル曲の「Sweet Cosima」です。 甘いコジマ? なんてふざけている場合ではありませんが、Cosima は「コシマ」と発音するようで、どうやら人名のようですね。 この曲は比較的平凡な出来。 ラストの「Wake Me Up」は軽いタッチのナンバーながらも、ほのぼのした余韻を残します。

  こうしてアルバムを通して聴いてみると、前作の「Night Shift Life」をはるかに凌ぐ名盤だと印象を強く持ちました。 とりわけ「Killaloe」、「Lunchbucket Blues」、「Don’t Go」の 3 曲の素晴らしさには胸を打たれます。

  Michael Behnan の人生にもっと時間があれば、このような素晴らしい作品をもっと沢山残すことができたことでしょう。 しかし、残念なことに彼はこのアルバムを発表した 2 年後の 1982 年に癌でこの世を去ってしまいました。 彼のパートナーでこのアルバムのジャケットを手がけた画家の Lynda Lapeer もすでに他界しています。 
  このレコードから 28 年も経ちますが、Michael Behnan の音楽はアナログ盤にのみ刻み込まれ、デジタル化されないまま年月だけが過ぎ去っています。 すでに Michael や Lynda にとっては時の流れは存在しませんが、Michael Behnan の音楽に永遠の命を与えることができるかどうかは、われわれリスナーの手に委ねられているのかもしれません。



■Michael Behnan / Sweet Cosima■

Side-1
Killaloe
Hound Me ’Til I Die
Trains Never Stop
Janitor Joe
River Song
Don’ t Call Us

Side-2
Lunchbucket Blues
Penny Arcade
Don’t Go
You Name It, I Saw It
Sweet Cosima
Wake Me Up

Produced by George Bertok and Dee Long
Recorded at Carriage House , Scarborough
Engineered by Frank Watt and Dee Long
Cover Painting by Lynda Lapeer

All Songs by Michael Behnan except ‘Wake Me Up’ by Catfish Willie , ‘Trains Never Stop’ by Roy Payne

Michael Behnan : vocals, acoustic guitar
Martin Hepburn : acoustic lead & slide guitar
George Bertok : piano, mellotron
J.P. Hovercraft : bass, harmony vocals
Frank Watt : drums
Curtis Blue : fiddle
Roly Platt : harmonica
Cathy Ford : harmony vocal
Al Kates : pedal steel

Mad Dog Records MDR-1002