昨日、立ち寄った本屋さんで、こんな本に出会いました。
絵本です。
作者はフランスのティエリー・デデュー。
訳者は柳田邦男。
え?あの柳田さん?
ノンフィクション作家で、最近は原発問題に関する記事や本をよく見かけるけど、
かなり以前、脳死について書かれた本を読んだことがあったっけ。
その時やっと、民俗学者の柳田国男さんとは別人物だと知ったんだよなぁ・・
あの柳田邦男さんが絵本を?
それとも、三人目のヤナギダクニオさん?
と思ったくらい、私は全然知りませんでした。
後で調べてみたら、柳田邦男さんはたくさんの絵本を翻訳なさっているのですね。
ところで、私は、もちろん訳者を見て買ったわけではありません。
本棚から引き抜いた時、この表紙を見てドキっとして、中を開いて、さらにドキドキ。
黒一色で書かれた絵にとても惹かれました。
そして、お話も、その絵のように深く鋭く心に残るものでした。
ヤク―バの暮らすアフリカ奥地の村では、成長した少年を祝う祭りがあります。
その日、少年たちは一人でライオンを倒しに出かけます。
それを成し遂げて帰って来た者は、勇気ある若者として称えられ、戦士になります。
それができなかった者は・・・
ヤク―バは一日かけてライオンを探し歩き、やっとチャンス到来。
が、ライオンはすでに深く傷ついていました。
ヤク―バとライオンは長い間見つめ合っていましたが、
やがて彼はライオンに背を向けて去っていきました。
村に帰ったヤク―バは、皆の冷たい視線を浴び、
与えれた仕事は、村はずれで牛の世話をすることでした。
しかし、その後、
「村の牛たちは、二度とライオンにおそわれることはなかった」
と結ばれています。
本当の勇気とは何か、あるいは「戦わないという勇気」がテーマだそうですが、
この絵を見ていると、もっと素朴な何かを私は感じます。
言葉では上手く説明できませんが、
「勇気」という人間世界の概念ではなく、
人間もライオンも必死で生きている、倒すか倒されるかの世界があって、
そこに情けや憐れみはナンセンスなんだけれど、でも心と心が通い合ってしまったら殺せない。
相手が人間であろうと動物であろうと。
理屈ではない心の触れ合いを感じて、なぜかドキドキして、
とても本棚に戻すことができませんでした。
その素晴らしい絵を全部お見せしたいのですが、それはさすがに著作権侵害です。
関心のある方は本屋さんか図書館でどうぞ。
講談社から出ています。
第2部の「信頼」も、とてもいいです。
私は、こちら(信頼)を先に見たせいか、こちらの方がもっと好きです。