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上橋菜穂子『虚空の旅人』

2008-05-27 18:27:20 | ノンジャンル
 22日に発行されたフリーペーパー「R25」に「国際連帯税」という記事が載っていました。国際的な通貨取引や国際線の航空券に低率の課税をし、途上国の貧困対策などの財源にする仕組みだそうです。導入を表明している国は28カ国、フランスではすでに航空券に課税し年間2億ユーロ(約312億円)を集めているとのことです。日本でも超党派の議員連盟が設立されたそうで、ぜひ実現してほしいものです。

 上橋菜穂子さんの'01年作品「虚空の旅人」を読みました。
 新ヨゴ皇国の皇太子チャグルと彼の護衛であり星読博士でもあるシュガが南の半島にあるサングル王国の戴冠式に招かれます。が、サンガル王国の南の大陸をほぼ征服し、新ヨゴ皇国の人々が昔住んでいたヨゴ皇国も滅ぼしたタルシュ帝国がサンガル王国を滅ぼそうと、その2つの国に挟まれた海に点在する島々の当主である島守りたちに呪術師のスパイを送り込んでサンガル王国を捨て、タルシュ帝国側につくように工作をします。そして海で産まれ海で死ぬ海上で一生を暮らすラッシャローと呼ばれる人々を襲い、命からがら逃げて来た少女スリナァはタルシュ帝国がサンガル王国を攻撃しようとしていることを1人家船に乗って知らせに行きます。また、不思議な能力を備えた〈ナユーグル・ライタの目〉となった5才の娘エーシャナは、これまでのしきたりの通り、人々の醜い面を見せないために目隠しをされて、サンガルの都に連れて行かれ、もてなしを受けた後、海から突き落とされる運命となります。が、エーシャナが都に着くと、思い掛けない事件が起き、チャグルたちもその渦中の人になっていくのでした‥‥。

 守り人シリーズの中でも珍しく海が舞台となっています。今回は、国と国との陰謀と策略をこのシリーズ常連のチャグルとシュガ、そしてサンガル王国の三女サルーナと次男のタルサンが協力して、暴き、そして叩き潰します。サンガルの王族は誇り高い、言い方を変えれば傲慢で差別意識のある人々で、独立心が強い島守りたちとは利害関係で結ばれ、島守りの妻にはサンガル王族の女性がなる、という伝統も、サンガル王族が実質的に島を自在に操るために作用しています。その辺の人間関係が醜く、そこに相容れないサルーナとタルサンが自然にチャグルとシュガに近づく話になっています。これまでのシリーズの冒険的な側面は今回はスリナァが1人で背負っています。それだけ政治的な駆け引きが全編を覆っていて、これまでのような野性的な面は陰を潜めています。それでも結構楽しく読めるのは、トラップがいくつか仕掛けられているのと、誠実に生きようとする人々の思いがすがすがしく語られているからでしょう。シリーズの中では異色の作品かもしれませんが、他の守り人シリーズを楽しめた人にはオススメです。
 なお、詳しいあらすじは「Favorite Novels」の「上橋菜穂子」のコーナーに載せておきましたので、興味のある方はぜひご覧ください。

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