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天童荒太『静人日記』

2010-03-14 13:51:00 | ノンジャンル
 天童荒太さんの'09年作品「静人日記」を読みました。人が亡くなった現場を訪ね、その人が誰を愛し、誰に愛され、誰に感謝されていたかを胸に刻みながら全国を旅する、前作「悼む人」の主人公・静人の'05年12月から'06年6月までの架空の日記です。
 一日完結の話が多い中、最初は自分の管轄地域からすぐに立ち去れと強硬な姿勢を見せながら、何回か会うにしたがって静人の行動に理解を示し、彼の行動を助けてやるようになる警官、日雇い労働者を集める仕事をする一方でやはり彼の行動に理解を示すようになりますが、給与のピンハネで恨みを買い外国人労働者に刺されて死んでしまう男、静人に惹かれ彼に一ケ所に留まって悼みをしてほしいと懇願する聾唖の女性、若者たちに暴力を振るわれ傷ついた静人を手当てしてやり、自分の身内を苦しめる今の行動を止めるべきだと説く、自給自足の生活をする中年女性たちが大きな彩りをストーリーに与えていました。
 中でも特に心に残ったのは、亡くなった人々が楽しく人と語らい、遊び、笑ってい日々や、また彼らが真剣に人と向き合い、誠実に働き、温かい言葉を人に投げかけていたときの姿、そして家族や友人や近所の人々が語った故人への感謝の想いが、その人を彩っていくという静人の考え方でした。それに加えて、あくせく歯ぎしりをしながら忙しく日々を過ごしていても、やがては力尽き、誰もが澄んだ顔におさまってゆくという指摘にも、なるほどと思い、また、曜日ごとに違う愛人の元へ通う夫を探しに出たという女性が、実は施設から抜け出してきた認知症の女性であり、既に夫は亡くなっていることをその女性が介護士に再認識させられると、途端に頬から赤みが引き、目に力がなくなるというエピソードには、読んでいて何とも言えないせつなさを覚えました。あまりのナイーブさに反感を覚える方もいらっしゃるかもしれませんが、読みごたえのある作品です。文句無しにオススメです。

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