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デヴィッド・グレーバー『民主主義の非西洋起源について 「あいだ」の空間の民主主義』その2

2020-11-21 04:59:00 | ノンジャンル
 昨日の続きです。

 クローバーによる、「【付録】惜しみなく与えよ━━新しいモース派の台頭」の冒頭部分も書き写しておきたいと思います。

 新しいフランス知識人が一向に現れないという事実に、気づいているだろうか?
1970年代末から80年代初頭にかけては、あふれかえるほどの有様だった。デリダ、フーコー、ボードリヤール、クリステヴァ、リオタール、ド・セルトー……(クローバーさん、ロラン・バルトを忘れてますよ!)。それなのに、以来ほとんど誰も現れていない。仕方がないので、流行を追う大学人と知的ヒップスターたちは、もう二、三十年前の諸理論を延々とリサイクルしたり、魅惑のメタ理論を求めてイタリアやさらにはスロヴェニアのような国にまで目を向けたりしている。
 こうなった理由はたくさんある。ひとつはフランス国内の政治事情と関わっている。この国では、メディア・エリート層が共同歩調をとって、まともな知識人を頭のからっぽな米国式の有識者に置き換えてしまおうと努めてきたのだ。ただしこの努力は、完全に実ったわけではない。もっと重要な理由は、フランスの知的生活がかつてにもまして政治化したことにある。1995年の巨大なストライキ以来、米国のメディアはフランスの文化ニュースをほとんど取り上げなくなった。フランスは1995年冬のこの出来事とともに、経済の「アメリカ・モデル」を退け福祉国家解体を拒んだ最初の国となったわけだけれど、米国メディアでは直ちに、歴史の波から逃れようともがく愚かな国扱いされ始めたのだ。
 もちろんドゥルーズとガタリを読むような米国人を困惑させることになったのは、米国メディアの姿勢それ自体ではない。米国の大学人がフランスに期待するのは知的にハイであること、自分は今、ワイルドでラディカルな思想に取り組んでいるのだと感じさせてくれる力だ。(中略)つまり、米国のメディアがフランスを馬鹿げた国として描き出しているその一方で、米国の大学人はといえば、自分たちのお眼鏡に適うフランス思想家はいないものか、と探求に乗り出したのだ。
 結果として、今日のフランスの最も興味深い学者たちの一部は、米国ではまるで話題にならない。(中略)頭文字を取ってMAUSSと称する知識人集団がその一例だ。経済理論の哲学的諸前提に対する体系的な攻撃に取り組むこの集団は、20世紀初頭のフランスの偉大な社会学者マルセル・モースを発想源としている。モースの最も有名な著作『贈与論』(1925年)は、おそらく経済理論を背後で支える諸前提に向けられた最も見事な反論である。(中略)モースの著作は━━それが示すのは、非西洋社会のほとんどのみならず、西洋人のほとんどもまた、市場原理のようなものに従ってはいないということなのだが━━かつてなく有意義なものとなっている。グローバル新自由主義の台頭を前にして、フランス好きの米国学者らが何も言うべきことを見いだせずにいるというのに、MAUSSはそれを支える思想そのものに攻撃を加えているのである。(中略)
 モースはまた、革命的社会主義者だった。(中略)
 ロシアの経験から彼が理解したのは、近代社会において(中略)売り買いをきれいさっぱり廃止してしまうことはできないということ、しかも市場倫理の廃絶ならできる、ということだ。労働を協同のかたちで行い、実効的な社会保障を確立し、そうして徐々に、新しい倫理を生み出していくことができるだろう。新しい倫理とはすなわち、冨の蓄積は、ただそれをそっくり他の人びとに分かち与えることができる場合にのみ、弁明可能になるというものだ。結果として生まれる社会で最高の価値となるのは、「公の場で物を与える楽しみであり、美的なものへ気前よく出費する喜びであり、客人を歓待し、私的・公的な祭宴を催す喜び」である。(後略)

 私の大学時代はちょうどポスト構造主義の全盛期で、フーコーやデリダ、ドゥルーズらが特に名をはせていた時代でした。どの文章も原文は難解でしたが、フーコーの監獄論と、ドゥルーズのリゾーム論、それにバルトの遺作となった写真論は理解することができて、今でもドゥルーズの本とバルトの本は家に置いてあります。
ドゥルーズのリゾーム論は、中央集権型ではなく、ネットワーク型の社会を提言したもので、今のインターネット社会をはるか前に予言していた素晴らしい理論です。
 グローバーさんに関しては遺作(?)の『ブルシット・ジョブ━━クソどうでもいい仕事の理論』をアマゾンに注文しておいたので、もうすぐ家に届くはずです。今から読むのが楽しみです!!

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