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黒沢清監督『岸辺の旅』その3

2017-03-01 05:26:00 | ノンジャンル
 2月21日の朝日新聞の世論調査で、共謀罪に賛成の人が、反対の人を上回っていると書いてあって、びっくりしました。共謀罪を成立させるためには、常に公安が各団体の動きを監視していなければならない訳で、賛成した人は、その辺のことを分かっているのでしょうか?

 さて、また昨日の続きです。
 村中の人が集まる。
 授業。「前は光は粒子でもあり波でもあると話しました。今日は粒子の重さがゼロという話です。空間も宇宙もゼロで埋め尽くされている。無には意味があります」。
 「人気者だったんだね。初めて知った。ねえ、あなたに会う前の話していい? 言ってなかったことが一つあるの。短大に入って1年、高校の先輩と4年付き合ったの。でも結婚ということは考えなかった。別れた後もさっぱり。縁って不思議」「でも聞けてよかった」「本当は言ってないこと一杯ある。気になる? 秘密よ」。
 田舎道を歩く瑞希。カオルは草むらへ。「ウズラがいた。本当は卵取っちゃいけないんだけど」「良太君の弁当、届けようと思ったんだけど、学校にいなくて」「きっと滝のところよ」。
 滝を見る良太。「弁当忘れたんでしょ」「お姉さん、あそこの黒い部分見える? 洞窟だよ。死んだ人の通り道」「じゃあ、こんな場所に来ない方がいいんじゃない?」「ザブンと飛び込んで滝の向こう側に出るんだ」「あの人はここから来たんだ」。
 「ねえ、瑞希さん、カオルさんのこと、どう思う? 息子が亡くなっていろいろあった。息子は私と口論をして旅先で風邪で死んだ。野垂れ死に。カオルが一人で骨をもらいに行かせてくれって。そしてひょっこり優介先生と戻って来た。手足は痣だらけ。魂が抜けたみたいで。滝には行った? カオルはもう生きてない。これ以上、ここから人が消えるのを我慢できない」。
 優介「カオルさんは違う。亭主の方だ。きっと何かしでかして、ゾッとする者になっているんだ」。
 小学校。瑞希は畑で働くカオルに、良太へ弁当を届けることを身振りで示す。
 風、カラス、滝の音。一旦滝に着くが、引き返そうとして振り向くと、人が立っている。「誰?」「瑞希、分からないのか?」「お父さん?」「分かってくれてよかった」「どうして?」「心配でたまらなかった。ずっと見てた」「たったの16歳だったのよ」「お前があの男と結婚した時、悪いことが起きなければと思っていたが」「あの人病気だったの」「かばわんでもいい。お母さんが5年前になくなったのは知ってるな」「向こうでお母さんと会えた?」「穏やかに暮らしてるよ。何も心配しなくていい。だからあの男のことを忘れろ」「私は大丈夫。お母さんにも伝えて」。
 原っぱで遊び回る子供たちの脇を歩く優介と瑞希。
 優介と瑞希の日常。
 2人で見る夕陽。
 月と雲。
 優介は自分の手を見て、隣の瑞希もそれを見る。「違いなんて何もないかも。優介と私。私もとっととそっちの世界へ行っていいのかな」「今のままでいいんじゃない?」。
 良太「お母さんが知らない男の人と歩いていた!」
 山道で男を支えながら歩くカオル。優介「やっぱりお前か」タカシ「意思の弱い女だ」「いつまでもさまよって、女房を困らせて、もうこれぐらいにしとけ。もう十分生きただろう?」「未練があるのはこいつの方だ」カオル「この人は私が看取ります」タカシ「終わりだよ。不安だ。どうすりゃいい? 俺の望みか? 死にたくなかった」。しゃがみこむタカシに寄り添うカオル。
 優介「みっちゃん、空も風も見たい」。
 授業。「今日は宇宙の話です。ビッグバンがあり、今は137億年が経ったところ。宇宙には始まりがあれば終わりもあります。今宇宙は加速して広がっています。人が知っている空間はそのうちの4%だけ。宇宙の大きさは10の500乗。そのうち人は地球に住めなくなり、アンドロメザ星雲と銀河系はぶつかります。私たちはこの時代に生まれてきて本当によかった」。
 ベッドに担ぎ込まれる優介。「ちょっと来て。みっちゃん、好きだよ」と顔を両手で持って、キス。瑞希を抱く。やがて服を脱がし、自分の服も脱ぎ、抱き合い、横たわり、ディープキスの後、求めあう。
 朝。瑞希が目覚めると優介が祈願書を見ている。「これの効果があったのかも。帰る時にはこれを燃やす約束だったね」。
 車窓の風景。昼から夕暮れへ。
 陽光。バスから降り、瑞希に支えられながら歩いていた優介だが、2人して倒れ込み、笑い合う。「綺麗」「うん」「優介が言っていたところはここ?」「他にももっと美しいところがある。行かないと」「行かなくてもいい。うちに一緒に帰ろうよ」。瑞希、泣いて優介にしがみつく。「みっちゃん、ちゃんと謝りたかったんだけど、どうやって誤ればいいのか分からなくて」。見つめ合う2人。「また会おうね」。
 原っぱの上に座る瑞希。やがて祈願書にマッチで火をつけ、燃やす。明るい音楽。海辺を去る瑞希の姿を映して、映画は終わる。

 ひたすら静かな映画でした。