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浦沢直樹×手塚治虫『PLUTO』第8巻

2010-12-17 06:29:00 | ノンジャンル
 浦沢直樹×手塚治虫の'09年に出版されたマンガ『PLUTO』第8巻(最終巻)を読みました。
 目覚めたアトムは何が起きても周りが対処できるように、お茶の水博士によって科学省の地下最深部へと移送されます。一方、トラキア合衆国大統領はこれですべて計画通りにすべてのスーパーロボットを破壊したことを、真犯人と確認しようとしますが、この計画の生き証人であるダリウス14世がまだ生きていることに気付きます。すさまじい憎悪をもって目覚めたアトムは、地球を亡ぼせる反陽子爆弾の数式をカベにひたすら書き出し、それを書き終えると、カベを突き破って地下から脱走しますが、雨の中、路上で無力なカタツムリを葉の上に戻してあげることによって、正気を取り戻し、そんなアトムをお茶の水博士は抱きしめます。
 一方、天馬博士はさらわれて、アブラー博士の元に連れて行かれ、ゴジという天才科学者が作り上げた傑作ロボット・ボラーを見せられます。現在はアブラーの脳波にしたがって動くだけのボラーに、アブラーは自らの脳を移植して史上最高のサイボーグを作ろうと考え、天馬博士に協力を要請しますが、天馬博士はアブラーに対して「お前は私が作ったロボットだ」と言い放ちます。目覚めなかった完全なロボットに、死の直前のアブラーの感情を注入して目覚めたのがお前で、天才科学者ゴジというのもお前自身なのだ、と天馬博士が言うと、アブラーは「嘘だー」と絶叫して息果て、ゴキブリの群れと化し、それらが去った後には、人口知能を抜き取られたロボットの残骸が残っていました。
 アトムはブラウの前に現れ、あることを頼みます。ブラウはアトムの手に触れさせてもらい、その暖かさ、その心を感じて感激し、再会を期します。アトムは次にヘレナに会いに行き、ゲジヒトが最後の瞬間までヘレナに会いたいと思っていたこと、だからヘレナに寂しがらないでほしいと思っていたことを伝えます。一方、お茶の水博士立ち合いのもと、アトムは科学省の役人たちや警察関係者たちに、ゲジヒトが調べ上げた事件の全貌を語ります。しかしその頃、軍事裁判所でダリウス14世はトラキア合衆国の真下に反陽子爆弾を仕掛けたことを明らかにしますが、トラキア合衆国のエデン国立公園の下には巨大なマグマ溜りがあり、それが爆弾によって噴火させられれば、一ヶ月で地球は滅亡してしまうことが分かります。トラキア合衆国大統領はその爆弾がボラーの正体であることを知りますが、人類は滅亡してもロボットは生き残ることも知ります。
 そして、トラキアのエデン国立公園の地下からプルートゥが現れると、アトムは死にたくなかったスーパーロボットたちを殺したプルートゥを憎しみをこめて破壊していき、プルートゥはついに泣き叫び始め、憎しみは何も生み出さないことを知ります。そしてアトムとともに反陽子爆弾を解体しに行きますが、最後にはアトムを脱出させ、自分は爆弾に突っ込んで行き、地球を救います。アトムはお茶の水博士や、亡くなっていったスーパーロボットたちとともに、憎しみのない世界が来ることを祈ります。そして一方、ブラウは隔離施設を脱出し、アトムの頼み通り、トラキア合衆国大統領を操る事件の真犯人を殺すのでした。

 7巻の感想でも書きましたが、プルートゥの姿はエヴァンゲリオンのようでちょっと興醒めである一方、ブラウがアトムの暖かさに感動する場面、ゲジヒトの死の場面にはホロリとしてしまいました。完全なロボットの人工知能は60億の人格を分析するのですが、人間の脳細胞の数は約60兆個であり、そこまで知能が発達した結果、憎しみではなく、暖かさ、優しさが生まれてくると考えることは、とても感動的な考え方であるとも思いました。ブラウもゲジヒトも憎しみではなく、優しさを持つところまで到達していたのだと語ってくれていたと思います。『PLUTO』、全8巻というのはちょっと長い気もしましたが、傑作であることは間違いないと思いました。人の「優しさ」を知る上でも必読の書です。

 →Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto