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宮部みゆき『楽園』

2008-02-08 16:01:28 | ノンジャンル
 今日、DVDでビル・エヴァンスの演奏の動く画面を初めて見ました。75年のモントレー・フェスティヴァルのものですが、手がむくんでいるのがはっきりと分かりました。この頃から体調を崩していたのですね。また演奏中はほとんど前傾姿勢で鍵盤を見つめ、たまに頭を上げるというのも実際に見て感動しました。

 さて、朝日新聞の年末の特集記事「2007年 心に残った一冊」の対談で紹介されていた宮部みゆきさんの「楽園」を読みました。
 火事で家が半焼した土井崎夫婦は、警察に出頭し、16年前に不良で手がつけられなかった当時15才の長女・茜を絞殺し、家の床下に埋めたことを告白します。15年の時効が成立していて、刑事罰は課せられませんでしたが、土井崎夫妻と結婚を控えた次女の誠子は姿を消します。そんな折り、フリーライターの前畑滋子のもとに、12才の息子の等を交通事故で亡くしたばかりの萩原敏子という女性が訪ねて来て、調査の依頼を受けます。滋子は9年前に大量誘拐殺人事件の取材で有名になり、それで頼ってきたのでした。調査の内容は、息子が生前に書いた絵でした。彼は今回の事件が発覚する前に、家の中に灰色の顔をした少女が寝ている絵を描いていて、息子はこの少女は早くここから出して、と言っていると言っていたというのです。その家は土井崎家の家に酷似しており、蝙蝠の形をした風見鳥の形まで一緒でした。それ以外にも、滋子が9年前に取材した事件を描いた絵も描いていました。敏子は息子が超能力があったのか、それともどこかで殺人の事実を知ったのか、調べてほしいと言うのです。滋子は興味を覚え、ボランティアで調査を開始します。関係者に当たっていくうち、滋子は等が出会った人の記憶を取り込む能力があることを信じざるを得なくなり、それからは茜が殺されたことを知っている人と等が出会った可能性を探ります。そして最後に、茜が殺された当時の彼氏で高校を退学していた三和明夫が土井崎夫妻をゆすっていた事が分かり、茜と三和明夫は悪事を重ね、殺人も犯していたことが分かります。土井崎夫妻はその事実を知って、発作的に茜を殺し、茜は家出をしたことにして、次女の誠子にも隠して生活していたのでした。等は生前「あおぞら会」という子供を対象にした会のイベントによく参加していて、その会の創始者の甥が三和明夫で、イベントを通じて等と三和は接触する機会を持っていました。滋子は土井崎夫妻に手紙を書いて、真実を誠子に夫妻から教えてほしいと言い、調査の結果は外部にもらさないことを誓います。敏子には真実を話し、敏子が家に帰ると、元夫の家族から無理矢理引き離された義理の息子が訪ねてきてくれているのでした。

 長い小説です。話が入り組んでいることもありますが、本筋とは関係ないエピソードが多く、読み終えるのに苦労しました。しかし、これだけ入り組んでいる話を読者に理解させる力は認めざるを得ません。あらすじを読んでいただいて分かると思いますが、非常に暗い話で、茜が薄笑いを浮かべながら友人をまわさせえるシーンなどもあり、救いのない土井崎夫妻の存在や、三和明夫の残虐さなど、楽しく読める小説ではありません。滋子の行動力が唯一の救いでしょうか? 宮部みゆきさんは、私が名前を知っていたくらい有名な作家の方のようですが、本来ミステリー作家の方なのでしょうか? この主人公が9年前に体験した事件を描いた「模倣犯」は怖いものみたさで、ちょっと読みたい気もしています。いずれにしろ、筆力のある方だと思いました。宮部さんのオススメの本をご存じの方は、ぜひ教えて下さい。