椿は日本特産の花木です。そもそも学名をCamellia japonicaというくらいなのですから。椿がヨーロッパに広く知られたのは1712年のこと。江戸にまで来たことのあるドイツ人の学者ケンペルが、その著書『異国物語』で紹介しています。西洋で品種改良されたものが日本に逆輸入されるくらいですから、ヨーロッパ原産と思っている人もいるようです。日本ではオペラ『椿姫』がよく知られているので、そう思われるのかもしれませんが、「椿姫」はツバキの花とは何の関係もありません。日本語に翻訳する時、何かわけあって「椿姫」とされたのですが、そのわけは知りませんるとにかく私達日本人は、椿の花を日本の花としてもっともっと誇りに思ってよいのです。
ツバキは品種改良をやりやすいこともあって、江戸時代には数百種類の品種が作り出されました。『百椿集』という書物も出版されています。多くの品種がありますが、その原種はヤブツバキと呼ばれている日本固有の野生種です。青森以南の日本全土に分布していますが、本来は暖かい気候を好みます。我が家の周辺の山林にも普通に見られます。高さは十数mに達しますが、生長が遅いので木質が緻密であり、研くと艶が出るので、木工用の素材として利用されています。見かけより樹齢が長く、長寿の木と理解されていました。
日本原産の樹木ですから、『古事記』『日本書紀』にも記載があり、『万葉集』にも九首詠まれています。
『古事記』の雄略天皇記には、「新嘗屋(にいなへや)に生(お)ひ立てる葉広斎(ゆ)つ真椿其れが葉の広がり坐(いま)し其の花の照(て)り坐(いま)す・・・・」という歌謡が記されていて、広い葉と艶のある花が注目されています。
『万葉集』にも同じような視点の歌があります。
①巨勢山(こせやま)の列々(つらつら)椿つらつらに見つつ偲(しの)ばな巨勢の春野を(万葉集 54)
②あしひきの八峰(やつを)の椿つらつらに見(み)とも飽(あ)かめや植ゑてける君 (万葉集 4481)
①は、椿をつくづくと眺めながら巨勢(こせ)の春野を思い出す。②は、椿を植えた恋人をいくら見ても見飽(みあ)きないという意味です。「つらつらに(つくづくと)」を導く序詞(じょことば)と「つらつら椿」という慣用句となっていますが、「つらつら椿」は椿の花がつややかな葉の中に連なって咲いている形容と考えられ、椿は幅広く艶(つや)のある葉が繁り合う中に、紅色の花が連なるように咲いているという理解があったと考えられます。
ツバキは日当たりの好きな花樹で、その葉は幅広く艶があり、太陽の光を反射して輝いて見えます。そんな照り輝く葉の間から、紅色の花が連なって咲くように見える。そんな姿こそ、古の日本人が愛でた椿の見どころだったのでしょう。そう思って、改めてツバキの花を観賞してみて下さい。品種改良された美しい椿はもちろん素晴らしいものですが、万葉時代以来のヤブツバキも、日本原産の日本固有の花として、改めて見直してみてはいかがですか。
ツバキは品種改良をやりやすいこともあって、江戸時代には数百種類の品種が作り出されました。『百椿集』という書物も出版されています。多くの品種がありますが、その原種はヤブツバキと呼ばれている日本固有の野生種です。青森以南の日本全土に分布していますが、本来は暖かい気候を好みます。我が家の周辺の山林にも普通に見られます。高さは十数mに達しますが、生長が遅いので木質が緻密であり、研くと艶が出るので、木工用の素材として利用されています。見かけより樹齢が長く、長寿の木と理解されていました。
日本原産の樹木ですから、『古事記』『日本書紀』にも記載があり、『万葉集』にも九首詠まれています。
『古事記』の雄略天皇記には、「新嘗屋(にいなへや)に生(お)ひ立てる葉広斎(ゆ)つ真椿其れが葉の広がり坐(いま)し其の花の照(て)り坐(いま)す・・・・」という歌謡が記されていて、広い葉と艶のある花が注目されています。
『万葉集』にも同じような視点の歌があります。
①巨勢山(こせやま)の列々(つらつら)椿つらつらに見つつ偲(しの)ばな巨勢の春野を(万葉集 54)
②あしひきの八峰(やつを)の椿つらつらに見(み)とも飽(あ)かめや植ゑてける君 (万葉集 4481)
①は、椿をつくづくと眺めながら巨勢(こせ)の春野を思い出す。②は、椿を植えた恋人をいくら見ても見飽(みあ)きないという意味です。「つらつらに(つくづくと)」を導く序詞(じょことば)と「つらつら椿」という慣用句となっていますが、「つらつら椿」は椿の花がつややかな葉の中に連なって咲いている形容と考えられ、椿は幅広く艶(つや)のある葉が繁り合う中に、紅色の花が連なるように咲いているという理解があったと考えられます。
ツバキは日当たりの好きな花樹で、その葉は幅広く艶があり、太陽の光を反射して輝いて見えます。そんな照り輝く葉の間から、紅色の花が連なって咲くように見える。そんな姿こそ、古の日本人が愛でた椿の見どころだったのでしょう。そう思って、改めてツバキの花を観賞してみて下さい。品種改良された美しい椿はもちろん素晴らしいものですが、万葉時代以来のヤブツバキも、日本原産の日本固有の花として、改めて見直してみてはいかがですか。