マキペディア(発行人・牧野紀之)

本当の百科事典を考える

「天タマ」第8号

2018年11月23日 | カ行
「天タマ」第08号(1998年11月27日発行)

          浜松市立看護専門学校 哲学の教科通信

    記名式アンケート「より良い授業のために」

 まず第2項の「家族や友達に『天タマ』を見せたり、授業の事を話したりしていますか。相手の反応はどうですか」はとても聞きたかった事です。

 なぜこれを聞きたいのだろうか、と反省してみると、その理由として、自分が皆さんとほぼ同年令の子供を持つ親であるということがあると思います。子供が学校の様子を話してくれるのはとても嬉しいからだと思います。そして、自分に合う先生に出会って楽しく
やっている様子を聞けば「よかったなあ」と思いますし、逆に「英語の先生は『1年くらいやったって大した事は出来ない』と言って、雑談ばかりしている」といった事を聞くと、とても残念に思います。

 私もドイツ語講師をしていますが、1年間でも工夫をして熱心に教えれば随分出来るようになります。持ち上がりで2年間教えたクラスからは独検3級合格者を3人出しました。

 それに、Aさんも言うように、「この授業内だけでなく、関係するすべての人達とも話し合う必要のある重要な課題ばかり」だと思っているからでもあります。これを機会に対話が少しでも広がって欲しいと思っています。

 しかし、皆さんの中で家族と話している人は3分の1以下でした。中学・高校時代では心理的に難しい場合も多いかと思いますが、もう20歳です。そろそろ家族と大人の関係を作る努力をしても好いのではないでしょうか。

 それに、話した人でも、お父さんという言葉が全然出てこないのはどうしたことでしょうか。家族と離れて生活している人は冬休みに話して下さるようにお願いします。

         回答から

──哲学ってどんなのか知らなかったけど、授業面白そうだね(母)。
──母に見せたが、「おもしろいね」と言っていた。

──私と同年代は哲学=難しいというイメージがあり、概論を学ぶと思われるけれど、通信や授業の様子を友達に話すと、意外な感じを受けるようです。

──母に話したら、「まめだねえ」と一言。
──「専門学校でもこういう風にやってくれるんだねえ」と言っていた。
──家族に話をする事はあります。個性的だと言っています。

──授業で話した事を私がしゃべると、「あんまり哲学っていうお堅い授業じゃないんだね」と言われた。

──姉に見せた。先生は大変だと言っていました。
──友達は「いわゆる哲学のイメージとは違うね」と言っていました。

──家族は「面白い授業だね」と言ってくれている。他校の友達も興味をもってくれ、友達同士で討論している。
──親は興味深く読んでいた。「何の授業なの?」って聞かれた。

──教師をしている知人に話したら、面白そうだと、ちょっと興味をもったようでした。

──家族が私の机の上にあった「天タマ」を読んだ時、母が「みんなしっかり自分の意見を書いてるね。先生もコメントをのせてくれていて、その生徒に対してプラスになるプリントだね」と言っていました。

──驚いていた。毎回読みたい、と言っていた。
──裁判の話など家族に話したら、家族も納得をしていました。病院の評価の話にもとても興味をもって聞いてくれていました。

──裁判をニュースでやっているのを見て、母に裁判のことを授業でやったと話した。また姉には休憩のプリントを見せたり、好き嫌いの区別のプリントを見せた。姉からは『明るい悩み相談室』の本が欲しい。また好き嫌いの区別については、「この分け方は難しい。私はこうやって好き嫌いを分けて考えたことならある」などと言い、2人で話し合いになった。

──恋愛のパターンのテストを行った時、妹に授業のことを話したら、「哲学の時間にそんなこともやるんだぁ」と驚いていた。

   第6項「レポートに対する講師の感想は十分親切でしたか。
       どう思いましたか」

 講師への不満ないし要望はほとんど「レポートへの感想をもう少し沢山書いてほしい」ということでした。まず、皆さんの声を拾ってみます。

──私はテーマが飲み込めてないのであまりよいレポートは書けていないので、いつも感想が少ないのは分かるが、多い人のを見るとやはり羨ましいと思ってしまう。

──先生は忙しいと思うけど沢山書いてもらえるとうれしいです。
──言葉が少し難しい時もある。
──感想がとても短かったりすると、少しさみしい。

──少し簡単すぎる時もあるけど、多くの人のを見るから仕方ないかなと思っている。
──もう少し先生のこともプラスしてあるとよかったと思います。

──もっとコメントがほしい。
──もっとたくさん書いてほしいです(大変だと思いますが、できるだけ)

         講師の考え

 「天タマ」と「感想」の両方を続けるのは難しいと分かった時、私は「天タマ」を優先しました。感想は1人3行を原則として、いろいろな事情で多く書く場合もあります。

 皆に同じ分量を書くのは悪平等だと思います。この授業に取り組む生徒の姿勢や熱意などが違うのですから、そしてそれがレポートに出てくるのですから、それへの反応も違うのが本当の公平だと思います。

 もちろん生徒に対する好き嫌いの感情で区別しているとしたら、それは依怙贔屓であり、悪い事だと思いますが、レポートの内容とか、休んだ人を励ますとかの理由なら、悪くないと思います。

 上の人々への感想を確かめて見ましたが、他の人より特に少なく書いているという訳ではありませんでした。皆さんはどう思いますか?

 大多数の意見は次の3種です。

──先生の感想が少ないと、私のレポートは大したこと書かったかなと思う。ちゃんと読んでくれてるなと思うこともある。
──自分の考え方をより深くさせてくれる感想で、とてもためになる。
──「天タマ」を作る上に感想を全員書くというのは本当に大変な事だと思う。

        講師からのお願い

 「感想」の中に、あなたへの質問を書いているのに、答えてくれない人がいます。これでは対話になりません。ストーカーをしている訳ではありませんから、なるべく答えて欲しいと思います。

            その他

 休憩は好評でした。カンファレンスの人数(3~4人)と時間(10~15分)も、これで好いという意見がほとんどでした。

 レポートを宿題にすることについては、3割くらいの人が「時には好い」で、7割が「止めて欲しい」でした。

 話すスピードを落として欲しい、という意見は、当然の事ながらありました。

 「その他」からいくつか拾います。

──ケーキ作りが趣味ということをもっとくわしく聞きたいです。

──先生の授業は最初に思っていたより楽しかった。「天タマ」ではみんなの意見に触れることが出来、いろいろ考えさせられた。

──より良い授業のために、私達の意見を取り入れようとする先生の姿勢を、他の先生方にも見習って欲しいな、なんて思ったりしています。
──先生のドイツ語、1度聞いてみたいです。

──先生は自分の意見をしっかり持っていて、それに自信を持てているのがすごいと思いました。

──哲学の授業は他の授業にくらべて参加しているという感じがします。

──哲学と聞くと難しいと思っていたが、自分で考え、皆と話して、考えも広がり、興味深いものであると思いました。

──あきない授業で楽しいです。休憩では又、心あたたまるユーモアのある話を聞かせて下さい。

      「マッターホルンの麓」から

 村の北のはずれから、風に騒ぐ小波のように、チーゲ(山羊)の鈴の音が高く低く響いて来る。

 南へだらだら上りになった、たった一本しかない村の通りを、牧童に追われつつ、チーゲの群れが進んで来る。両側の家の間から、一匹二匹、ひょいひょいと現れて、この仲間が殖えてゆく。鈴の音はますます賑やかになる。からんころんと忙しげに鳴る鈴の音が、村の南のはずれに消えかかると、教会の鐘が鳴り出す。そしてツェルマットの朝が始まる。(中略)

 両側から谷を抑(お)し狭めるように、差し挟んでいる高い崖に切り取られて、青空が北から細長く流れている。……峠の向こうにイタリアの空がのびのびとしている。

 地の底から生え抜けたような、マッターホルンの大きな姿が、ただ一つその大空に聳えている。茶褐色の岩肌にまばらに残った白雪が、朝日に眩(まばゆ)いほど爽やかに輝いている。

 思えばこの山一つのために、幾万の人がこの谷へ、自然への限りない憧れに駆られて入って来たことか。それほど底知れない力をもって、人の心に迫って来る。美しいの一言だけでは言い尽くせない。力強いと付け加えてもなお足りない。はっきりと大空に、鋭い直線で描き出す二本の山稜の上に、ゆらぐ光を見るがいい。青でもない、緑でもない、身も魂もその中に溶かし込んで、空高いあの岩の上に、しがみつかずには置かない、不思議な光が燃えている。(以下略)(浦松佐美太郎著『たった一人の山』)
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 関口の意味形態論の例解 | トップ | カント主義の限界 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

カ行」カテゴリの最新記事