まてぃの徒然映画+雑記

中華系アジア映画が好きで、映画の感想メインです。
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サウルの息子 SAUL FIA

2016-03-12 21:03:14 | その他の映画(あ~な行)

2015年のカンヌ国際映画祭でグランプリを獲得した作品。アウシュビッツでゾンダーコマンドとして働くサウルの2日間を追ったもの。

毎日毎日アウシュビッツに運ばれてくるユダヤ人。彼らは服を脱がされて裸でガス室に送り込まれる。ゾンダーコマンドは彼らを追い立て、残された衣服を回収し金品があるか確認する。扉が閉ざされたガス室からは阿鼻叫喚の叫び声が聞こえ、虐殺が終わると死体を運び出して焼却場に運び、ガス室を掃除して、灰を近くの川へ捨てる。ユダヤ人を処分するのにユダヤ人を使う悪魔のシステム、ナチスも恐ろしい仕組みを考えたものだ。

虐殺された死体の山で、まだ少し息のある少年がいた。医務室へ連れていかれるが、おそらくユダヤ人でここで働かされているであろう医者にあっさり絶命させられる。サウルは彼を息子と呼び、ラビの元でユダヤ教の教義にのっとった埋葬をしようと奔走する。

また、一部のゾンダーコマンドはナチに対する反乱を計画していた。ナチはゾンダーコマンドの中から70名をリストアップするよう指示し、自分たちが殺される順番も近いと悟ったゾンダーコマンドは決起する。サウルは息子の遺体を抱え、ラビを自称する男を連れて逃げ出すが。。。

まず画面が特徴的。幅の狭いスタンダードサイズの画面に、中心の被写体以外はピントが外れてボケまくっている。ガス室の死体処理なんかはそうしたボケたフレームの中で行われているが、白い死体が映るだけで凄惨な光景が想像でき、むしろくっきりはっきり映っているよりも想像力が掻き立てられる。

ゾンダーコマンドの機械的な働きぶりも驚きの一つ。目の前で次々と人がガス室に送られていく、その死体を処理してガス室の掃除をして、臭いもキツイだろうしガス室から聞こえてくる叫び声も耳の底に残ると思います。考えたり感じたりすれば発狂してしまうはずで、ただただ目の前の作業をこなして心を殺しているのでしょう。

サウルの「息子をしっかり葬りたい」という思いは、そうした非人間的な状況にあって人間性を繋ぎ止める一つの方策だったのかもしれません。息子は本当にサウルの息子だったのか、ラビは偽物っぽかったですが、ラストシーンのサウルの微笑を見る限りは心を取り戻す手段というか、ある意味象徴的なものだったのかな、と思います。

ナチスのユダヤ人を殲滅する狂気と日本軍の特攻や精神論が幅を利かせる狂気、通底する感覚は同じかもしれません。

公式サイトはこちら

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