まてぃの徒然映画+雑記

中華系アジア映画が好きで、映画の感想メインです。
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帰ってきたヒトラー  ER IST WIEDER DA

2016-08-09 23:39:25 | その他の映画(あ~な行)

随分と評判がいいらしく、この日のTOHOシネマズ新宿は小さなスクリーンで満席、ここシャンテも残り2席だけという人気ぶり。総統府の地下壕で自決したはずのヒトラーがタイムスリップして現代に、という突拍子もない設定ながら、迫力ありお笑いもあり考えるところも大いにある作品でした。

突然現代にタイムスリップしたヒトラー、周りの人は将軍に命令するような喋りをモノマネ芸人がやっている新手のネタだと思って笑いにする。TV局をクビになったフリープロデューサー、ザバツキは、そんなヒトラーを連れてドイツの各都市を巡り、市民と話す様子を動画にアップした。その再生回数は20万回を超える人気ぶりで、ついにTVの生放送に出演する。そこでも全くあの当時と変わらない演説をするヒトラー。1930年代に大衆の心を掴んだ人心掌握術は、現代のドイツ人の多くをまた虜にした。現代に来てからのことを書いた自伝は大ベストセラーになり、映画化の話まで来る。。。

ヒトラーの時代錯誤な話の内容や行動、仕草を笑いながらも、きっと当時と何ら変わることのない考えと主張がドイツ人の共感を得る様子はドキュメンタリータッチで撮影したのでしょうか、周囲の人たちにモザイクがかかったり目線が入ったりしています。喜んで記念撮影して握手をする人たちを見ると、ゆるキャラを囲んで盛り上がっている日本人と同じような感覚がします。しかし、バーでじっくり話をしてみると移民反対で盛り上がり、アウシュビッツの記憶が鮮明なユダヤ人は認知症っぽいお婆さんまんで、このヒトラーに猛烈な拒否反応を示しました。トルコ系移民の問題に最近のシリア難民問題など、大衆の共感を呼ぶテーマがある一方で、ユダヤというセンシティブなテーマがついて回るのがドイツの特徴なのかもしれません。

他にも、まとわりついて噛みつく子犬をヒトラーがいきなり撃ち殺したり、真顔で「ユダヤ人は何とかしなければならない」とザバツキに言ったり、ドイツ国家民主党の党首と話をしに党本部をいきなり訪れるなど、ドッキリなんだか脚本なんだか分からない演出がたくさんあります。なかでも白眉はテレビの生放送で演説の前に沈黙してスタジオの観衆、そしてテレビの前の視聴者の注目を一身に集める場面。本物のヒトラー(って、なんだか訳分かんなくなってきた)さながらに沈黙と演説の力でスタジオを完全に支配していました。

最初にヒトラーを見出して、ずっと良くできたモノマネ芸人だと思っていたザバツキが、ヒトラーのユダヤ人に対する本音を聞いたことをきっかけに、現れた場所などを再確認してヒトラーが本物のヒトラーだと分かった後の展開も、本人が精神病院に監禁されるという悪夢みたいだけど、日常生活で考えたら真っ当なもの。タイムスリップなんて言って拳銃を突きつけるのは危険人物とみなされても仕方ありません。ザバツキが監督した映画で俳優がマスクみたいな特殊メイクで本人そっくりに扮しているのも、何かの暗喩みたいで面白いんだけど気味悪く感じました。

ドイツでヒトラーをテーマにしたこんなブラックコメディ作品が作れるのは素直にすごいと感心します。世間の反応を忖度して、自主規制しまくりの日本では考えられないですね。

公式サイトはこちら

7/10 TOHOシネマズシャンテ
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