「読売歌壇年間賞②」
栗木京子選 {評} 九十七歳の小松まつさんの歌に折々に励まされている。この歌は「深呼吸」ならぬ「心呼吸」がすばらしい。心と体を大きく開いて初夏の空気を吸い込む作者。青葉の勢いに負けないぞ、という心意気が輝いている。「さて今日も」という初句の軽やかさも見事。今年も心呼吸で、どうぞお健やかに。
★さて今日も青葉に負けずすごさむと施設の朝を心呼吸する 所沢市 小野まつ
※ 小野さん、おめでとうございます。わたしも心呼吸をします。マスクをかけて心呼吸を。
俵万智選 {評} どの家庭も春を待ちかねていた様子が、たっぷり伝わってくる。垂れ下がる布団を、ハチミツとした比喩が見事。形状だけでなく季節とも響きあう。コンスタントに佳作を送ってくれた岩間さん。大きな景色を捉える視点やユニークな比喩が持ち味だが、この作品にも魅力があますところなく出ていた。
★ハチミツがあふれるやうに蒲団ほす大マンションの春のベランダ 仙台市 岩間啓二
※岩間さん、おめでとうございます。すごい比喩ですね。蜜蜂たちも驚きますよ。夜ごとハチミツのような蒲団で私は眠りたいです。年間賞のおふたりはこの一首だけでなく常に投稿している作品もも評価されているようですね。日頃の努力が大切なことがわかりました。
1月21日 松井多絵子