「まぼろしのノーベル賞」
❤文芸にかかわるひとの贅沢な自害とりわけ三島由紀夫の (松井多絵子)
1月4日の朝日朝刊にあの三島由紀夫の顔、そして次のような記事が載っている。
作家の三島由紀夫(1925~70)が1963年にノーベル文学賞候補としてスウェーデン・アカデミーに初推薦され、最終選考リスト一歩手前の候補6人の中に入っていたことがわかった。
ノーベル賞の候補者や選考過程は50年間非公開。期間が過ぎたことから公開された。財団によると三島は63年、6人まで絞り込まれたリストのなかに入った。「仮面の告白」「潮騒」「金閣寺」など海外でも知られていた。
68年には川端康成が受賞した。70年11月、東京・市ヶ谷の陸上自衛隊で三島は割腹自殺。
❤ 日本文学研究者で三島と親しかったドナルド・キーンさんは次のように語る。
「三島は作家・評論家として超一流。受賞の資格は十分あった。北欧で日本の専門家とされていた作家から、三島が受賞しないよう選考委員に働きかけた聞いたことがある。川端の受賞で次に日本人がとるのは早くても20年後になり、三島は待ちたくなくて、華々しく死んだ方がいいと思ったのでは。個人的な憶測だが」。
三島由紀夫は作家として海外でも評価され、本も売れ、40代で豪邸に暮らしていた。私は雑誌のグラビアで彼の白亜の豪邸を度々見てため息をついたのであった。山を登りはじめたら頂上に立たなければ気が済まない、だから頑張った。しかし「運」はどうにもならない。自殺する人の多くは負債や貧困、病苦なのに三島由紀夫の自殺は何てゼイタクなのだろう。とめどなき欲望か精神異常か。彼自身の演出によるグロテスクな自死は私にはおぞましい。
新年ですのにシンドイことを書いてゴメンナサイ。今苦しんでいる方々、どうぞ決して自殺など
なさいませんように。もうじき春です。サクラが咲きます。
1月4日 松井多絵子