えくぼ

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書店が消える

2016-09-22 09:31:26 | 歌う

                書店が消える

 ♠ またひとつ書店が消えてわが街はグルメの街にブティッの街に  松井多絵子

 私の最寄りの駅は急行が止まるので駅の周辺は店が多い。でも書店はまた一つ減り2店しかない。新聞で広告を見て店に行くがその本がない。「すぐにお取り寄せできます」と店員さんは言う。取り寄せてもらったら買わなければならない。これでは本が売れなくなるではないか。昨日の☀文化・文芸の頁に ▲「書店撤退 大型店でも ネットに押され売上減、「ネット書店の台頭とともに、街の小さな本屋が次々と姿を消し、大型書店にも撤退の動きが相次いでいる」

 ♠ 本という本が背をむけ立ち並ぶ振りむかないで、そのままでいて

 おしゃれ老女A子は言う。「いま服がとても安く買えるでしょう。千円の本を買うより千円のブラウスを買ってしまうのよ。着るもので自分を少しは変身できるから」。たしかに新しいスカーフ1枚でも気分が変わる。グルメ老女A子はランチタイムサービスのレストランを見つけて仲間を誘う。費用も2000円を超えることはない。結局、書店へ入っても女たちのお財布は開かないのだ。

 ♠ 『猫を抱いて象と泳ぐ』という本を書棚にもどして書店を去りぬ

 書店を出た私は同じビルの「旅行サロン」に入る。海外、国内の旅のパンプが店内に配置されている。ソファーも多い。私は紅葉のツアーのパンフをソファーに埋もれながら見る。上質の紙のパンプは旅のガイドブックに等しい。私宛ての旅行社のDMも読み物満載、グラビアも上質で捨てかねるものが多い。料理のパンフはスーパーで無料である。

 ネットを始めてから私は辞典を買わなくなった。植物図鑑は花の細部まで画面で見られる。動物、昆虫、魚なども同様だ。地図、天体、海洋、その他、歴史など。パソコン一台あれば、百科事典は要らない。辞典の類は部屋を狭める。しかも高額だ。これらが本の販売額を減少させているであろう。(ネット書店についてまだ私はよく知らない)

 大手の紀伊国屋書店は成長著しいアジアを中心に海外展開に力を入れる。台湾、シンガポール、タイ。8か国・地域に27店を構える。丸善、TSUTAYAなど生き残りへの試行錯誤が始まっているらしい。今日は駅ビルの書店で文庫本を買おうかしら。バッグに入る軽い本を。旅先で読める本を。出版社への私のささやかな応援をしたい。  

            9月22日  松井多絵子