Thad Jonesの作品、Thadといえば、ジョーンズ3兄弟のひとり。3人ともジャズ界のレジェンドになった。ここまで素晴らしい才能がそろう兄弟も珍しい。まん中のThadが結局最初にこの世を去った。でもトランペッターとしても作曲家としても優れ、そしてメルルイスとともに長年運営していたオーケストラは多大な功績をのこした。この曲は3拍子のバラードというべきだろう。歌詞もあるけど、後でできたようだ。最初はトニックとサブドミマイナーの1小節ずつの繰り返し。これがなんといってもインパクトをあたえる。低音はトニックのペダルのケースが多いが、他の音に動いてもなんら差支えはない。サブドミマイナーの特徴音である基音からの距離が短6度の音を効果的に使っている。この音はまさにこういう効果のために存在する「守調的な」変化音なのだ。変化音という発想はどの時代に始まったのかは定かではないが、とにかくその根底にある考えは音楽に「憂い」を持たせるということだ。そのためには和声にちょっと「濁り」を加える。その結果考え出されたのが基音から短6度の音であり、その次は長2度音が上がった増2度、つまり短3度音だ。そしてドミナントの転回形の低音である長2度音が下ったものもある。これは上の長7度音との音程、長6度が膨らんでいるので増6度音程で、結果的に基音の短2度上、つまりとなりの音になる。これらがいわば一次的な変化音だ。12個の音が確定しないころから人間は音楽にいろんな表情を求めて工夫してきたことが分かる。だからそれぞれの音の役割や出来た経緯を把握していないと、結局作りたい音楽にたどり着かないのだ。