ジャズピアニストのジャズ批評

プロの耳で聞いたジャズをミュージシャン流に批評。

O Grande Amor Ⅱ

2014-07-15 03:19:27 | Weblog
この曲の構造上の特徴は何カ所かあるが、まず最初2小節目。キーはややこしいので、Amということにすると、G♯がベースのE7つまり3度がベースのドミナントだ。これはG♯dimと酷似している。表記はどちらでもいい。でもG♯は次に半音上がる音だ。ところがこの曲は半音下がる。つまりここのコードはA♭dimでもあって、このコードは次のGm7-C7によって起きるFのトナリティーのⅢ♭dimでもあるのだ。いわゆる下がるディミニッシュ。この♯か♭かという表記の選択肢は音符を書いても起きることで、トナリティーが変化する調性音楽では常に存在する。というか、これが12音の中での調性音楽なのだ。調性のつなぎ目の部分ではどちらでもよいということに慣れる必要がある。♯だ♭だと目くじらを立てると音楽の本質が分からなくなる。もちろん頭の中では筋道を立てて理解しておく必要はあるが、表記の問題に正解不正解の判定を常に求めるのはナンセンスだ。まあいいかげんさにも限度はあるけど・・・。実際の音楽家の手書きの楽譜というのは千差万別だ。読み手が音楽の内容を理解するしかない。ここの部分ジョビンの手書きの譜面にG♯と書かれてあったのかA♭と書かれてあったのかは分からない。でもそれは大した問題ではない。12音の音楽はそういう音楽なのだ。記譜法は長い時間をかけて考えだされた音楽を後世に伝える貴重な財産だ。でも穴もある。それは構造上しょうがないことだ。楽譜が何のためにあるか?を考えたらつまらないこだわりはなくなる。


スウィート・レイン
スタン・ゲッツ・クァルテット
ユニバーサル ミュージック クラシック