ジャズピアニストのジャズ批評

プロの耳で聞いたジャズをミュージシャン流に批評。

O Grande Amor

2014-07-08 02:11:30 | Weblog
ジョビンの作品、1963年に発表されている。大ヒットしたアルバム「Getz Gilberto」では7曲目、当時のLP盤ではB面の最後の方に収録されている。LP時代にはリスナーは盤を置いたら最初から通して聴くのが前提になっていたから、作る方は曲順はアルバム制作の重要なファクターだった。もちろんCD時代になってからもアルバムというのは全体像を意識はする。でも今は聴衆は曲をピックアップして聞くことが多いからアルバムの曲順の価値はかなり薄れてしまった。この曲は「Getz Gilberto」の制作時にはちょっと隠れた存在だったのかもしれない。でもとにかく無数のヒット曲を持っているジョビンの曲だ。順位をつけるのも難しい。スタンゲッツは1965年当時すでにジャズ界のスーパースターでブラジルの若者に付き合う形でこのアルバムに参加したわけだが、この時のレコーディングの様子は何十年もあとになっておもしろおかしく書かれている。要するにミュージシャンの間の関係がぎくしゃくしていたことだ。でもそういうことはこういう企画ではそんなにめずらしいことではなくて、要するにこのアルバムが世界的な大ヒットとなってボサノヴァという新しい音楽を世間に知らしめたという事実がいろいろな逸話を生んでいるということなのだ。ゲッツがボサノヴァをどう思っていたか?それは誰にもわからない。でもその後、ボサノヴァをよく演奏していたことは事実だ。自身のアルバムにもこの「O Grande Amor」は収録されている。1970年だったと思う。スタンゲッツが雑誌のインタビューで「今はカリブ海からの長い休暇から帰ってきたところで3か月間サックスには触れてない。」とか言っていたのを覚えている。ミュージシャンというのはそんな生活ができるのか・・・、と目の前がパアーと明るくなったこともあった。遠い昔の思い出だ。
ゲッツ/ジルベルト
アントニオ・カルロス・ジョビン,トミー・ウィリアムス,ミルトン・バナナ
ユニバーサル ミュージック クラシック