ジャズピアニストのジャズ批評

プロの耳で聞いたジャズをミュージシャン流に批評。

My Man’s Gone Now Ⅱ

2014-04-20 04:40:38 | Weblog
楽曲の組み立てに使われている音が何種類の音で構成されているか?それは音楽の構造に大きく関わってくる。もちろんその数はマックスで「12個」というか12種類だ。決して多くはない。メロディーとコード構成音両方が明らかに12種類でできている場合ははっきりしている。それは「半音階的」であるということだ。構成音全部が7音的にできている場合も全音階的であると分かりやすい。しかし旋律と和声が違う構成音つまり違った種類の構造でできている場合にどう解釈するか?ということだ。元来、多声部音楽の構造を旋律と和声で分けて考えるというのも疑問が残る問題でもあるが、旋律は全音階的で和声は半音階的という曲がとても多いのも現実だ。曲の構成音などは単なる結果論だ、という言い方もできる。しかし、12音を使って実際に作曲をする場合、音楽構造を逆算する形で曲を組み立てていくというのが常道でそれが、いわば12音を使った作曲なのだ。そこにあえて歌いやすい全音階的なメロディーを組み合わせる。これは言い換えれば人間の脳みその全部、感性と理性、数学的要素と文学的要素を使うということなのだ。多声部音楽は構造全体で主張する場合と、メロディーとコードに分けて表現する場合と2種類ある。これが人間の音楽に対する認識であり、長い間かかってたどりついた作曲法なのだ。旋律と和声は一体となっている場合、和声が旋律に従属している場合、それぞれがほぼ独立している場合、場面に応じていろいろだ。この「my mann's gone now」の最初の部分のように、ペンタトニックのメロディーと機能和声が合体した部分というのは、使い古された手法ではあるが、そこには人間の音楽を組み立てるために工夫してきた長い年月の知恵がつまっている。そしてこのメロディーを生み出したのはガーシュウィンの独特の才能なのだ。

ポーギー&ベス(紙ジャケット仕様)
マイルス・デイビス,アーニー・ロイヤル,バーニー・グロウ,ジョニー・コールズ,ルイ・ムッチ,ディック・ヒクソン
ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル