ジャズピアニストのジャズ批評

プロの耳で聞いたジャズをミュージシャン流に批評。

Oleo Ⅲ

2010-06-19 01:50:51 | Weblog
楽曲のキーの問題は聴く側にたつとたいした問題ではないけど、演奏者にとってはかなりのハードルになるケースもある。やはり楽器によって個人によって得意不得意がある。ジャズの世界に長くいるといろんなことをやらされるから移調にも自然とだんだん強くなってくる。かけだしの頃のピアニストは大変だ。ピアノという楽器の性質上キーをずらずというのは場合によっては大変な苦痛になる。だけどキャリアと練習でだんだん克服できる。12個のキーが完璧に自由という人はいないと思うけど移調にあまりに弱いのも考えものだ。頑張って練習したらその分鍵盤と「お友達」になれる。逆に言うとピアノの鍵盤を自由にあやつるのはそれほど難しいということだ。ジャズはそれだけではない。インプロヴィゼーションが待ち構えている。いろんなキーのメロディーやコードを押さえるだけならちょっとした訓練でできる。でもインプロヴィゼーションはまた別のそのキー独特の慣れが必要だ。アドリブというのはどうしても自分の「歌」を弾こうとする。そこにはトナリティーをしっかり感じるという感覚が必要になってくる。そこでそのキーのスケールをマスターする。そこまではすぐできる。でもスケールというのは音が7つだ。問題は残りの5つの音の感じ方扱い方なんだ。こなれたキーだと残りの5つの音いわゆる派生音も自分の歌のなかに入っている。でも慣れてないキーだとそういかない。7つの音から自由に離れられないのだ。12音の中のキーというのは基音に対してスケールの残りの6つの音とスケールにない5つの音の関係が耳ではっきり感じられ、また楽器のテクニックで使いこなせないとマスターしたとはいえないのだ。即興演奏だと残りの5つの音の扱いによって熟練度があからさまになってしまう。ややこしいキーや難解な調性の曲でも譜面をなんとかものにすれば音楽に聞こえるクラシック音楽とは根本的に違う。こうやったらこの問題を克服できますよ、とは簡単には言えないけど結局はいらいらしながら自分の耳と闘うしかない、のかな?