リズムチェンジというのは一定の構造、主にコード進行のことを指すわけで、キーは別になんでもいい。この「Oleo」はオリジナルはB♭だ。ソニーロリンズ自身もこのキーでやっている。この曲を他のキーでというのはほとんどないけどトミーフラナガンがCのキーでやっていたことがあった。理由は分からない。楽曲のキーを決めるのにはいろんな理由がある。歌曲だったら歌手の音域に合わせる。器楽曲だったら楽器の音域やテクニック上の問題を考慮する。シンフォニーになると楽器の種類も多いからそれをうまく調節するのも作曲家の腕のひとつだ。ピアノ曲は音域の広い楽器の特性を生かしていろんな選択肢がある。音域的に一番よい響きのキー、あれやこれや試して決定する。ジャズスタンダードの場合、楽器それぞれの音域的な問題はまずない。でもジャズという音楽が管楽器奏者に引っ張られてきたという経緯から管楽器が吹きやすいキーのものが多い。だからフラット系だ。ロックはギターがリードしてきたからシャープ系だ。コントラバスを弾くジャズベーシストは弦楽器を操るわけで本来は開放弦を使うためにはシャープのほうがいいけど、長年フラットに慣らされてそれが普通になっている。たいしたもんだ。でもフラットがいっぱいついたキーで速いテンポをずっとやると開放弦が使えなくて途中でばててくる。それでもまじめにラインを考えるベーシストは頑張り続ける。反対に今までに何人か遭遇した要領のいいベーシストはどの音を弾くかを無視して開放弦で休んでしまう。無意識にビートのほうを優先するのだ。共演者にとってどちらがいいかというと実は後者なんだ。ジャズという音楽は安定したビートが命で音の間違いは実際の演奏では実はそんなに問題ではない。まあ程度問題だけど・・・。共演者というのはそのひとが感じているコードの流れやもっと大きくいえばその人の「音楽」を聞いているのだ。それがインプロヴィゼーションだ。