ジャズピアニストのジャズ批評

プロの耳で聞いたジャズをミュージシャン流に批評。

Ornithology Ⅲ

2009-12-17 00:45:43 | Weblog
ビバップという音楽についての見解はさまざまだ。長いキャリアを持つミュージシャンの中には、よく考えてみると本当に不思議な音楽だという印象を持っている人が多くいる。何故だろう?もちろん簡単な答えはない。強烈なインパクトとパワーを持った音楽が誰か特定の人物の思惑だけで生まれてくるはずもない。それまでの何十年かのジャズの歴史に大きな理由があるのかもしれない。いろんなパワーがたまっていたのだろう。ビバップの誕生に貢献したのは当時のトッププレイヤーたちで新しいジャズの方向性を模索するうちにある一定のものがかたまってきたということだろう。だからビバップというのは曲がどうとかリズムがどうとか、ましてやアドリブフレーズ云々のことではない。彼らが目指した「ヒップな音楽」それの全体像だ。ところがそのムーヴメントの中心にはチャーリーパーカーというとんでもない人物がいた。稀代の天才だ。パーカーの音楽語法は独特だ。そしてまわりのミュージシャンも否応なしにそれにひっぱられていってしまった。モンクやマイルスのようにその渦中にいながら冷静に自分の音楽を作っていくのは大変だったと思う。パーカーの音楽はパーカー自身のものでだれもマネはできない。パーカーの語法だけをマネると音楽が歌わなくなってジャズの意義も消えうせてしまう。でもモダンジャズという音楽にはチャーリーパーカーが君臨している。避けては通れない。ジャズインプロヴィゼーションはいつも紙一重の危険性をはらんでいる。