ジャズピアニストのジャズ批評

プロの耳で聞いたジャズをミュージシャン流に批評。

Embraceable You Ⅳ

2009-12-04 01:51:49 | Weblog
この曲には当然素晴らしい歌詞がある。歌詞と曲どちらが先か?まあいろんなパターンがある。ガーシュインは兄弟で役割分担をやっていたから当然相談しながら作っていたのだろう。手順は本人たちにしか分からない。言葉で作られた詩と音楽を組み合わせるのは想像以上に大変で、両方が高いレベルを維持するのは至難の業だ。もちろん上手く組み合わさったから発表され、ましてスタンダードとして認められている曲だから歌詞と曲がしっくりいっていて当然なんだけど、曲の一部分にどうしてもかみ合わない部分があったりすることもある。人間の言葉と音楽、やはり価値観がだいぶ違う。だからこそ、それをうまく組み合わせたものが受けいれられ、曲を作る人の能力が高く評価される。歌の伴奏はうまくやろうとするとどうしてもコードやメロディーのほかに歌詞も覚えこんでいかないとだめだ。一曲一曲膨大な数だからすごく大変だけどそれがピアニストの仕事だ。しょうがない。歌詞をある程度覚えると確かに曲の流れやポイントが分かって曲を理解できたような気になるけど、結論から言うとそれは錯覚だ。やはり曲を理解するためには音楽的構造の理解が不可欠で歌詞を知るとイメージが膨らんで演奏がしやすくなるということだと思う。そして伴奏が楽になる。歌詞のついた楽曲というのは今では普通になっているけど広い意味での音楽全体から見たら、音楽の種類のほんの一部で、むしろちょっと特殊なジャンルといえると思う。