「Mercy,Mercy,Mercy」という曲はタイトルからも分かるように、ゴスペルサウンドを基本にしている。ザヴィヌルのもっとも好きなサウンドだ。でもちょっと形式が変わっている。形式(form)というのは、音楽を創る上で必然的にできてきたもので、音楽の歴史の中でいろんな形、名前がある。個別に詳しく説明するのはちょっと大変だ。でもどれも必要だから存在してきたわけで、その理由は音楽の内容を分かりやすく聴衆に伝えるためだ。でも20世紀になってその不文律が大きくくずれてきた。いろんな理由がある。やはり背景にあるのは経済最優先主義がもたらした、人間の「せっかちさ」だ。とにかくなんでも省略してしまう。人間の記憶力や感受性が前時代の人より勝っているとは思えないけど、とにかくそうやって省略された音楽で満足してしまう。またその反動で、しつこいくらい同じことを繰り返したりもする、両極端ではあるけど、ふたつとも奥にある理由は同じだ。何かに縛られていると振りほどきたくなる気持ちは分かる。でも音楽を創る上で形式を無視するのは勇気がいる。かなりの必然性が要求される。形式をも含めた規則を学ぶのが音楽の勉強のほとんどだからだ。ザヴィヌルの曲は法則破りの曲が多い。でも演奏してみると、不自然なところは全くないし、その流れの必然性に納得してしまう。これは彼だけが持っている新しい形式なんだ。現代人の要求している新しい音楽の形式をジョーは察知しているんだろうか?ひらめきとしか言いようがない。とてもマネは出来ません。