イギリス・ベルギーの映画『アーニャは、きっと来る』を見ました。舞台となっているのは南仏で、時代は第二次世界大戦。戦争シーンのない戦争映画です。あの時代の人々の苦悩が敵、味方とも描かれていて、やるせなさが襲ってきます。いい映画です。
監督 ベン・クックソン
キャスト
ノア・シュナップ、トーマス・クレッチマン、フレデリック・シュミット
ジャン・レノ、アンジェリカ・ヒューストン
(あらすじ)
第二次世界大戦中、ユダヤ人のベンジャミンはナチスの迫害からユダヤ人の子どもたちを守るため、南仏の村からピレネー山脈を越えてスペインへ逃がそうとする。村の羊飼いの少年ジョーはベンジャミンの計画に賛同し、彼に協力する。やがて、ベンジャミンの計画を知ったジョーの父親を始めとする村人たちの協力も得て、ナチスの厳重な監視をかいくぐって秘密裏に計画は進められて行く。一方ジョーはドイツ兵とも交流を持つようになる。
ユダヤ人、そしてユダヤ人を支援する南仏の人々、登場する人々はいつも不安の中にいながら、その不安を少しでも忘れるように生きていきます。心が晴れることはありません。心が晴れない理由は、他人の心が見えないからです。誰がどこまで知っていて、どこまで知らないふりをしているのか。疑心暗鬼になりながらも事態は進んでいきます。
心の真実は見えないところで働いています。国家の上での対立が、人間の対立になることもありますが、人とのつながりがそれをまさることもあります。どいつ兵も同じ人間であり、お互いを知ればお互いに気遣うようになります。人を想う心は人の心を救います。人を想う心が多くの人の命を救ってくれます。それは敵も味方もありません。
しかし「国家」という幻想は人々を狂わせます。人を想う心を奪い去る場合もあります。心は引き裂かれます。現代の人間が直面している危機は、国家対個人の危機でもあります。本当の心が取り戻さなければ、まだまだ犠牲者はなくなりません。
この映画は現代の私たちに「こころ」の交流の必要性を訴えかけます。いい映画でした。