とにかく書いておかないと

すぐに忘れてしまうことを、書き残しておきます。

映画『アーニャは、きっと来る』を見ました。

2021-01-19 18:56:29 | 映画
 イギリス・ベルギーの映画『アーニャは、きっと来る』を見ました。舞台となっているのは南仏で、時代は第二次世界大戦。戦争シーンのない戦争映画です。あの時代の人々の苦悩が敵、味方とも描かれていて、やるせなさが襲ってきます。いい映画です。

監督 ベン・クックソン
キャスト 
 ノア・シュナップ、トーマス・クレッチマン、フレデリック・シュミット
 ジャン・レノ、アンジェリカ・ヒューストン

(あらすじ)
 第二次世界大戦中、ユダヤ人のベンジャミンはナチスの迫害からユダヤ人の子どもたちを守るため、南仏の村からピレネー山脈を越えてスペインへ逃がそうとする。村の羊飼いの少年ジョーはベンジャミンの計画に賛同し、彼に協力する。やがて、ベンジャミンの計画を知ったジョーの父親を始めとする村人たちの協力も得て、ナチスの厳重な監視をかいくぐって秘密裏に計画は進められて行く。一方ジョーはドイツ兵とも交流を持つようになる。

 ユダヤ人、そしてユダヤ人を支援する南仏の人々、登場する人々はいつも不安の中にいながら、その不安を少しでも忘れるように生きていきます。心が晴れることはありません。心が晴れない理由は、他人の心が見えないからです。誰がどこまで知っていて、どこまで知らないふりをしているのか。疑心暗鬼になりながらも事態は進んでいきます。

 心の真実は見えないところで働いています。国家の上での対立が、人間の対立になることもありますが、人とのつながりがそれをまさることもあります。どいつ兵も同じ人間であり、お互いを知ればお互いに気遣うようになります。人を想う心は人の心を救います。人を想う心が多くの人の命を救ってくれます。それは敵も味方もありません。

 しかし「国家」という幻想は人々を狂わせます。人を想う心を奪い去る場合もあります。心は引き裂かれます。現代の人間が直面している危機は、国家対個人の危機でもあります。本当の心が取り戻さなければ、まだまだ犠牲者はなくなりません。

 この映画は現代の私たちに「こころ」の交流の必要性を訴えかけます。いい映画でした。
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映画『燃ゆる女の肖像』を見ました

2021-01-17 05:51:09 | どう思いますか
 映画『燃ゆる女の肖像』を見ました。セリフは抑えられているのですが、表情によって心が描かれ、人間の心に近づいていく映画です。最後のシーンの表情は見事です。

監督 セリーヌ・シアマ
キャスト ノエミ・メルラン 
アデル・エネル。

 18世紀のフランス・ブルターニュ地方での話です。画家のマリアンヌは貴族の娘エロイーズの見合いのため、彼女の肖像画を依頼されます。しかしこの二人に「愛」が生まれます。その「愛」の形を静かに丁寧に描いていきます。

 2人の女性はお互いの表情を読み解いていくようになります。マリアンヌは画家としてエロイーズの表情をよく観察します。心がどのような表情に現れていくかが分かるようになります。エロイーズは自分を見つめる視線に気づき、逆にマリアンヌの表情に敏感になっていきます。このふたりの視線の交差が愛を生みます。

 観客もいつのまにか、二人の表情に敏感になります。そしてセリフ以上にふたりの表情が物語ることに気づくようになります。

 ラストシーンはエロイースの表情がかなり長い時間映し出されます。様々な感情を物語る表情は大きな余韻を残します。

 淡々とした流れの映画ですが、心のドラマが感じられ決して退屈しません。すばらしい映画でした。
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miletさんがすごい

2021-01-16 04:11:17 | 音楽
 昨年末にNHK-FMで『ROCK to the CLASSIC PART3』という番組を放送していました。その番組を「らじるらじる」というアプリで今年になってから聞きました。クラシック音楽について現在活躍しているロックミュージシャンが語るという番組でした。

 その番組にmiletさんが出演していました。私はその時点でmiletさんがどんな人かまるで理解していませんでした。番組の中でmiletさんは、自分が昔フルートを演奏していて、フルートは高音のほうが注目されがちだが、低音の震えるような音に魅力を感じるという内容の話をしていました。

 そして番組の中でmiletさんの曲が流れました。すごい。こんなにすごい人がいたんだとびっくりしました。

 そしてその後やっと気が付きました。ドラマの『七人の秘書』の中で使われていた曲はこの人だったんだということを。確かにカッコいい歌でした。しかも紅白歌合戦にも出ていたということです。

 彼女の声は低音に震えるような声に魅力があります。ラジオの中で言っていたフルートの低音のような声を意識して使っているんですね。

 シガーロスも好きだと言っていました。そのあたりも理解できます。

 これからの活躍に注目です。
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内容のないロジック(『ねじまき鳥クロニクル 第1部泥棒かささぎ編』を読みました。その2)

2021-01-11 11:31:39 | 村上春樹
 村上春樹の『ねじまき鳥クロニクル 第1部泥棒かささぎ編』を読みました。心に引っかかったところを書いておきます。

 「私」の妻の兄は「綿谷ノボル」と言います。その綿谷ノボルについて「僕」は次のように言います。
 
 綿谷ノボルはそういう意味では知的なカメレオンだった。相手の色によって、自分の色を変え、その場その場で有効なロジックを作り出し、そのためにありとあらゆるレトリックを動員した。レトリックの多くは基本的にはどこかからの借り物であり、ある場合にはあきらかに無内容だった。(中略)大多数の人間がどのようなロジックで動くものかを実によく心得ていた。それは正確にはロジックである必要はなかった。それはロジックに見えればそれでいいのだ。大事なことは、それが大衆の感情を喚起するかどうかなのだ。

 「綿谷ノボル」のような意味のない人間が、今の世の中どれだけ多いか。そしてそういう人物が権力を持つような世の中です。かれらは自分が「知性」を持っていると考えています。不思議な自信を持っているのです。

 無意味なロジックに気づき、本当のロジックを持たなければなりません。勇気をもって戦わなければならないときもあるのです。
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好奇心と勇気(『ねじまき鳥クロニクル 第1部泥棒かささぎ編』を読みました。その1)

2021-01-10 10:18:38 | 村上春樹
 村上春樹の『ねじまき鳥クロニクル 第1部泥棒かささぎ編』を読みました。心に引っかかったところを書いておきます。

・好奇心と勇気
 主人公の「僕」がいなくなった猫を探しに行きます。近所に空家があり、そこには何か秘密がありそうです。そしてその近くに住む笠原メイという少女と出会います。

 笠原メイは「僕」に勇気があるかを聞き、さらに好奇心はあるかを聞きます。「僕」は勇気はたいしてないと答え、好奇心なら少しはあると答えます。笠原メイは「僕」に尋ねます。

「勇気と好奇心は似ているものじゃないの?」

 それに対して「僕」が答えます。

「好奇心と勇気は一緒に行動しているように見える。ときによっては、好奇心は勇気を掘り起こしてかきたててもくれる。でも好奇心というものはほとんどの場合すぐにきえてしまうんだ。勇気の方がずっと長い道のりを進まなくちゃならない。好奇心というのは信用のできない調子のいい友達と同じだよ。君のことを焚きつけるだけ焚きつけて、適当なところですっと消えてしまうことだってある。そうなると、そのあと君はひとりで自分の勇気をかき集めてなんとかやっていかなくちゃならない。」
 
 勇気の意味をわかりやすく教えてくれるいいセリフだと思います。「勇気」の大切さを教えてくれて、そして「勇気」を手に入れることの難しさも伝わってきます。決して強い表現ではないのですが、心に響く表現です。良い言葉だと思います。

 この言葉の後に「井戸」が出てきます。この「井戸」に何かがありそうです。
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