まさおさまの 何でも倫理学

日々のささいなことから世界平和まで、何でも倫理学的に語ってしまいます。

本能の壊れた動物

2020-05-25 15:13:23 | キャリア形成論
「本能が壊れている」 というのは 「本能がない」 という意味ではありません。
本能はあるのですが、それが他の動物のように、
きちんと本来の自然目的と結びついていないのです。
例えば、生存にとって好ましくないものから離れよう、
排除しようとする生存本能を人間は持っています。
ものすごく熱いヤカンに触れてしまったりしたら反射的に 「アチッ」 と手を引っ込めます。
身体にとって有毒なものを摂取してしまったら嘔吐したり下痢したりすることによって、
体外に排出しようとします。
これは本能でやっていることです。
しかし人間は、人生のなかのイヤなことから逃れようとして自殺してしまうことがあります。
生きる上でイヤなことから逃れようとするのは生存本能がある証拠ですが、
それで自殺なんかしてしまったら生存という本来の目的が達成できません。
生存本能が壊れているというのは、本能があることはあるのだけれど、
それが生きるという本来の目的にしっかりと結びつけられていない、ということなのです。
そもそも生存本能が人類にきちんと本能としてそなわっていたら、
誰も自殺なんてしなかったでしょう。

もっとわかりやすいのは性本能です。
他の動物の場合、性本能は生殖 (つまり子どもをつくる) という自然目的と
ちゃんと結びついています。
人間にも性欲という形で性本能がそなわっていますが、
しかし、人間の性本能は壊れてしまっているので、
性欲が生殖のための行動へとまっすぐ向かっていきません。

他の動物はほとんどの場合、繁殖期と呼ばれる妊娠可能な時期にしか性行為を行いません。
メスの排卵日以外に性交しても妊娠する可能性は低いので、
子どもをつくることが目的であるならば、そんな時期に性交するのは無意味です。
ところが人間は、排卵日とかとはまったく関係なく、いつでも性交可能だし、
実際に妊娠の可能性がまったくないときにも性交してしまうのです。
動物から見ると、なんとムダなことをしているのだと見えることでしょう。
しかし人間の性本能は壊れていますから、
そもそも子どもをつくるためだけに性行為を行っているのではないのです。

それどころか人間は避妊をします。
皆さんが、自分で働いて一人前に稼いで生きていけるようになる前にセックスするときは、
必ず避妊をしなければなりませんが、
しかし、これも動物の目から見てみると、避妊をして性行為を行うというのは、
まったくわけがわからないということになるでしょう。
子どもができないように気をつけながら子どもをつくる行為をしているのですから。
それぐらいなら最初からやらなければいいのに、
でも人間は避妊をしてでも性行為をしたいというくらい、
性本能 (つまり性欲) がおかしくなってしまっているのです。

人間のなかには同性愛の人たちもいます。
同性どうしで性行為をしても当然のことながら子どもはできません。
人間の性本能が動物のように生殖目的に限定されているならば、
同性どうしで愛し合うということは生じてこなかったでしょう。
しかし、人間の場合は性本能が生殖目的に限定されていませんので、
同性愛という、他の動物にはない、人間独特の性文化を生み出しました。

同性愛で驚いていてはいけません。
人間は自分ひとりで性行為をすることができます。
オナニーというのは性交ではないかもしれませんが、れっきとした性行為です。
人間はそれをひとりでしてしまうのです。
どんなにがんばっても絶対に子どもはできません。
でもしてしまいます。
それくらい人間の性本能は生殖から切り離されてしまっているのです。

いかがでしょうか。
「本能が壊れている」 ということの意味がわかっていただけたでしょうか。
本能がないのではなく、あるのだけれど本来の自然目的ときちんと結びついていない、
というのが 「本能が壊れている」 ということの意味なのです。
しかし、本能が壊れてしまっていたら人類は生き残っていけません。
動物なのに動くことができず自分でエサを捕ることができない赤ちゃんは、
放っておかれたら全滅してしまいます。
よく母性本能という言い方をしますが、
母親は出産したらたいてい母乳が出るようになって、
それはたしかに本能的にそなわっている能力ではありますが、
しかし産んだ赤ちゃんに母乳をあげるという本能がそなわっているわけではありません。
赤ちゃんの泣き声を聞くと自然と母乳をあげたくなってしまう、
というわけではないのです。
だからたいていのお母さんは自分の赤ちゃんに母乳 (または粉ミルク) を与えますが、
中にはそういうことをまったくしないお母さんもいますし、
逆に乳母といって、自分の赤ちゃんじゃない子どもに母乳を与える女性もいるわけです。
親が子どもを育てるという本能も壊れているのだとしたら、
人間はどうやって生き延びていくのでしょうか。
それが次の話です。
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