新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

杉山晋輔元駐米国大使は言われた

2022-06-12 08:50:28 | コラム
跳ね返りが来るような制裁ならばしない方が・・・:

近頃は「報道1930」や「Prime News」のようなニュース解説というか、著名乃至は隠れた有識者が出てこられて色々とご高見を述べられる番組は、滅多に見ないようになった。理由は簡単で「偉い方が大所高所から幾らあの大統領を批判されても、ウクライナ侵攻を直ちに辞める訳がない」と思っているからだ。でも、野球のチェンジの間とか、サッカーの15分にもなっていたハーフタイムの間には「何が出るかな」と聞いていることもある。

昨11日に「腐らない問題」と称して発表を見送った話題が、見出しに掲げた「跳ね返りというか副作用がある制裁」の件だった。実は、他にももう一つ隠し球があるのだが、それは本日中に時間に余裕を生じれば取り上げて論じてみたい。

その「聞き捨てならぬ事か」と受け止めたのが、杉山晋輔元大使の発言だった。文言は違っているかも知れないが「返り血を浴びるような制裁ならば、しない方が良かったのではないか」という趣旨だったと記憶している。「言い難いことをズバリと言われたな」という印象だった。

丁度その頃には、ロシアによるウクライナ侵攻の諸々の悪影響で「国内で約1,000社が値上げの挙に出て、その幅が12~13%に達した」と刺激的に報道されていた。阻止しようもない現象だと受け止めていた。我が国の岸田総理は「ロシアに制裁を科すことはG7の一員としては当然のこと」と、言わば胸を張って語っておられた。

昨日、Yahooニュースにあったのが、共同通信が報じていた「ウオールストリートジャーナルが、対ロシアの制裁で全世界の企業に発生した損失の総額が590億ドル(7.9兆円)に達していた。また、イエール大学(Yale University)の調査によれば、ロシアの侵攻後に約1,000社がロシア市場から撤退したか事業の規模を縮小したこと」を採り上げていたのだった。マクドナルドやスターバックスの件は普通のニュースでも報じられていた。

これらが、杉山元大使が指摘された「跳ね返り」であるのは明らかだが、私は返り血がそれだけには止まっていないと思う。現に(我が国は依存していないと聞いた)ウクライナとロシアからの小麦の出荷が滞っていることの影響は甚大であるし、EU圏内の諸国には天然ガスや石油の入荷の深刻な問題も生じている。制裁を科すに際しては、それらの危険性(risk)が生じることは承知で始めたのであろうが、具体的な数字を見ると「跳ね返り」は容易ではなかったと解る。

まさか、あの大統領が「そら、見たことか。迂闊に制裁なおするからだ」と、ほくそ笑んでいる訳ではないだろうが「(経済的な)制裁を科すこと」にはこれだけの「跳ね返りの危険」が存在していたという事が見えてきたと思う。だからと言って、Putin大統領とロシアを野放しにしておくことも出来ないのだろう。

我が国においては、必ずしも制裁だけの副作用ではないとしても、エネルギーコスト上昇による電気代の値上げや、節電の要望が出されている。京都大学大学院の某教授は岸田総理のNATOの会合への参加を「ロシアに対する真っ向からの対立の意志の表明で暴挙」と厳しく批判していた。私はロシアが領土拡張を目指したウクライナ侵攻の途方もない悪影響がかくも広く且つ深いものだと、改めて痛感している次第だ。誰が彼を改心させるのだろうか。



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