新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

マイナ保険証について言いたい事

2023-10-31 07:17:05 | コラム
岸田総理は突っぱねておられたが:

一昨日の衆議院予算委員会での立憲民主党の井坂信彦の「マイナ保険証について」の質問と、それを同じ答えの繰り返しで突っぱねていた岸田総理の姿勢は、失礼を顧みずに言えば「おかしかった」と思う。いや、落語の「蒟蒻問答」のようで空疎だったと、遺憾に思って聞いていた。総理大臣が全知全能ではないくらいは承知しているが、あの心ない質疑応答は評価できない。

要するに、井坂議員が幾ら具体的な数字等の表を掲げて「これほど利用率の低さを承知でも、来年の10月には紙の保険証の使用を停止するのか」と突っ込んでも、何を訊かれても「11月末の総合的な調査の結果を見て判断する」の繰り返しで、何らの具体的なことを答えず、言質を与えない事に専念しておられた。

井坂議員の質問には尤もだと思わせる点があったとは思う。だが、そうではあっても「低い利用率の数字だけ」に基づいた質問に過ぎなかったと思えるのだ。それは、国立国際医療研究センター病院、東京山手メディカルセンターのような大病院に加えて、長年お世話になっている外科クリニック、眼科、歯科の何れでもマイナンバーカードを為の機器は設置してあるが、一度も「使用するように」と求められたことはないのだ。

「国立」では毎月の最初の受診の際は、窓口に保険証を提示して会計表票に「確認済み」と記載して貰うのだ。だが、今日までにマイナンバーカードの提示を求められたことがなかったし、そもそもあの「機器」はカウンターには見当たらない。「山手」では受診後に会計の窓口に一件の書類を提出するときに保険証も添えて出す方式だが、マイナンバーカード用の機器はない。しかし、別の場所に「月に一度マイナンバーカードを掛けて確認すること」という掲示はでているだけ。

井坂議員が繰り返して「利用者が5%」と指摘していたことは「利用しようにも、病院のクリニックも開業の医院でも、マイナ保険証でなければ受け付けない」とは言われてはいないのだ。だから、私は何も考えずに月の初めの受診の時に、儀礼的に保険証を提出して確認して貰っている、譬えその場にあの機器があっても。

また、一度だけ長年のかかりつけのクリニックで、マイナンバーカードを「ものは試しに」とばかりに掛けてみたことがあった。そこで解ったのは「IDとパスワードが必要」だった事。だが、それを忘れた場合は「顔認証がある」と係の女性に指示されてか顔を映し出すと「合格」だった。実は、当方はそのIDとPWを記載したメモ用紙を失っているので、眼科では受付の係員には「区役所に行ってどうすべきか問い合わせされると良い」と教えられている。

私は現代の何かと言えばIDとPWが求められる風潮に少しは慣れてきたが、家内のように時代に追いつきかねている世代の人は多いのではないかと思っている。高齢者で具合が悪くなって、何とかしてクリニックまでたどり着くと「マイナンバーカードを出して、IDは、PWは」と追い立てられて、大過なく対応できるのだろうか。多くの今日の制度は「ディジタルディバイド」の世代には辛く当たっているのではないのか。

また、ある先生は「マイナンバーカードに対応できるようにする為にはコンピュータ用の配線工事が必要になるし、全てのカルテを入力せねばならないと聞けば、決して有り難い方向への転換ではないのでは」との疑問を呈しておられた。ということは、利用者の率が低いのは、カードの普及云々ではなくて、医療というか病院やクリニックの態勢も整ってはいないという事があるのではないのだろうか。

一寸考えてみただけでも、国立のあの保険証を提示して確認する事務などは、遠からぬ将来に全て中央のコンピュータが整備されて、カルテから投薬の詳細まで記録され、患者は入り口でマイナ保険証をカウンターの機械にかければ、後は何科で診察されようとカードの提示だけで済むようになっているべきではないのだろうか。

その為には病院全体を総括するシステムを構築する必要があるのではないだろうか。そんな経費を何処の官庁が負担するのだろうか。岸田総理も河野大臣もこのような現場の実情を事細かに視察された上で、「来年の10月まで(だったか?)」と突っぱねておられるのだろうか。井坂議員は都立の戸山高校出身のようだが、母校の直ぐ近所の国立の実態を視察されたのだろうか。