理想論だの空論と言われようとも言っておこう:
「英語という学科を生徒(児童も含まれるのか)の学業成績を5段階で評価して、優劣の差を付ける為に教えている」状態を変える意図がない限り、我が国の英語教育は変わらないと思っている。即ち、入学乃至は入社試験も含めて試験のために教えているのだから、実用性などはハナから眼中にないのだと認識している。
しかも、誰が言い出したのか、英語は国際語として重要だから教えるのだそうだ。これは間違っているとまでは言わないが、宜しくない。我が国における日常生活でどれ程英語の能力が必要かを考えてみて貰いたい。我が国は世界でも希な英語介さずしてあらゆる分野の学問や最先端の科学的知識を習得できるということを忘れてはならないのだ。
では、私が考えている「英語教育は如何にあるべきか」を改めて述べていこう。
国語教育の充実:
近年の国語の乱れは嘆かわしいものがある。テレビに出てくるタレントとやらいう連中が「未だ未熟」だとか「後ろから追突」というのは仕方がないとしても、国会議員などと言う連中でも平気でこのような表現をしているのは腹立たしいのだ。国語力の低下であり乱調なのだ。
それだけではない、何年前だったか「頂門の一針」の主宰者・渡部亮次郎氏が「イヤな物の言い方だ」と批判された「~させて頂きます」という二重敬語は今や猫も杓子も当たり前のように使っている。私は東海大学教授の国文学者KS氏に指摘して頂いた「お会いする」も「自分に敬語を使っている」と指摘した。
上記は国語の勉強不足のほんの一例だが、本来は漢字の熟語を使って表現すべき所を、不正確な英語の知識に基づいた「カタカナ語」に置き換えていることも非常に嘆かわしいのだ。「ガバナンス」だの「ガバナビリティー」なんて言いたくはないが、20年以上もアメリカの会社で過ごしてきて、彼らが使っているのを聞いたり見たりした記憶がない。英単語に置き換える必然性などないと思う。これも「貧困な国語力」に起因しているか、無意味な「衒い」だと見る・
小学校の児童に英語などを教える前に「キチンとした国語力が備わるよう注力するのが先決問題」である。アメリカの労働力の質が低いのは「識字率の低さと初等教育が至らないから」と、カーラ・ヒルズ大使が認めたのと同じような現象を起こしてはならないのではないか。
英語の教え方:
私は断固として「教科書の音読・暗記・暗唱」を推し続ける。英語は科学でも学問でもないのだから、将来英語学を専攻して博士号でも取得して大学教授になろうと志していない限り、教える方が数学や科学のように難しくしてはならないのだ。中学1年の出発時点で正しい英文の形を、音読を通じて暗記できていれば、間違った文章や文法などは直感的にも見破れるようになるのだ。
私はこのような勉強法で英語力を養えたし、大学1年の時に「彼の物凄い英語の実力はどうやって養ったのか」と驚嘆させられたK君に勉強法を尋ねてみれば「音読・暗記・暗唱」だったのだ。その凄さには同期の全員が圧倒され、彼は3年になる時に大学推薦で同じイエズス会のジョージタウン大学の留学に出ていった。これで「音読・暗記・暗唱」での成功例が2件目。
残す2件を取り上げよう。先ずは大学1年の時に家庭教師として英語だけ教えた当時の中学1年生から。親御さんに了解して頂いて「音読・暗記・暗唱」のみで、1年の教科書は最初から最後まで暗唱できるようにさせた。これが出来るようになれば、英文解釈などしなくても、自然に意味が解るようになるし、抑揚の付け方、単語のアクセントの場所も習得できる。尤も、私が先に英文を読んで聞かせるのだが。
勿論、単語帳などは作らせなかったし、文法の講義などしなかったし、教科書への書き込みなども禁止した。この方法で2年生の終わりまで教えた。この生徒は高校卒業まで英語だけはオール5だったそうだ。
次は某商社で個人指導を依頼された若手。彼にも英語らしい表現の例文を沢山作って音読・暗記・暗唱を言わば強制した。彼は「それで身につくのか」と懐疑的だった。これ以外に、何れは海外出張か転勤があるのだからと、彼が理解できるか出来ないかを考慮せずに敢えて人がいる中で英語での会話をやらせた。
そして、街中で目に入る景色をその場で、英語で語ることもやらせた。それを「おかしな英語では」と恥ずかしがっているようでは見込みがないと強制して立派にこなせるようになった。1年半ほどで彼の課の中で随一の英語力となり、インドとUKに海外駐在に出るようになった。ここまでで合計4件。これでは成功例のNが少ないという方がおられた。では不成功のNはどれ程あるかと反論すると沈黙された。
文法:
これは、ある程度以上「音読・暗記・暗唱」で力が付いてきたら、英文法の参考書でも読んでみれば、割合簡単に身につくのだった。私は「言葉が先にあって文法は後から付けたもの」と解釈しているので、理屈は後から付けて間に合うと思っている。重要なことは「私が言う支配階層の中に入っていくのであれば、文法を間違えると無教養と看做されて、本心では相手にされなくなる危険性がある」と承知していなければならない。
だから、“Me, too.”や“It’s me.”などと言うようでは、支配階層の世界には通用しないのだ。私がアメリカ人の同僚に「英語で何が最も厄介か」と尋ねられて「時制の一致と冠詞と不定冠詞の使い方」と答えた。
彼らは大笑いして「我々だって冠詞と不定冠詞の使い方は良く分かっていない。外国人の君が苦労するのは当たり前だ」と言ったのだ。
英文解釈:
音読して解らないか、知らない単語に出会えば、その都度辞書を引けば良い。でなければ「文章の流れの中で推理するか考えてみれば、その単語の意味は見当が付くようになる。見当を付けてから辞書を引いて間に合う。繰り返して言うが、これは音読を重ねれば、自然に意味は解ってくるはずという意味。
英作文:
音読・暗記・暗唱した文例から、その意味である表現を思い出して、文法を間違えずに構成していけば良い。但し、口語体と文語体を混在させないようにしたい。中学1~2年程度の教科書には文語調の例文はないと思うから、そこまでの音読・暗記・暗唱が肝心なのだ。実は、英作文に最も実力が出てくるものなのだ。高度の英作文の力を目指すのならば、佐々木高政教授の「英文構成法」を推薦。かなり次元が高いが、これをこなせれば一流の書き手になれる。
英会話:
最もお里が知られやすいので要注意。文法厳守は当然である。ここではnative speakerたちは口語体や慣用句を当たり前のように多用されるのが怖い。最も避けるべきは“you know”を挟むこと。低階層に属していると自白しているようなことになる。絶対に駄目なのが“swearword”を使うこと。私が副社長の面前で使って「苟も我が社の社員たる者が使う言葉ではない。俺の面前で二度と使うな」と叱責されたと言っておこう。
慣用句(idiom)・口語体(colloquialism)・隠語/符丁(slang):
恐らく学校ではこういう分け方で教えていないと思う。だが、日常的な会話ではこの類いの言葉が乱舞する。これらを仕分けして発表したのは私だけだと密かに自負している。ご要望があれば、改めて公開しようと思う。
単語帳・単語カード:
最後に敢えて言う。学校での成績を上げよう思えば作っても良いだろう。だが、単語は部品である。部品だけをバラバラに覚えていても最終製品は仕上がらないと思え。単語はそれが使われている文章の流れの中で意味を覚えておくと良いのだ。しかも、同じ単語でも文章の流れ次第で意味が変わってくるのは日常茶飯事。だから、バラでは覚えるなと指摘するのだ。