ノルウェーを振り切って準々決勝に進出:
続っぽく言えば「天晴れ」を上げたい勝利だった。高倉前監督が育て損なってしまった佐々木則夫氏が築き上げた「なでしこ」を、池田太監督が見事に復活どころか、もしかするとあの頃より以上のサッカーに育て上げていた。
昨夜はあの忠実な動き、堅実なパス回し、堅固で忠実な守備、(男子代表にはない、失礼)決定力がある宮沢の突破力等々が間違いなく機能すれば、負けることはないと読んで見ていた。試合振り(私は「パフォーマンス」という単語は演劇や歌舞音曲に使うべきだと思うが)は期待を裏切らなかった。
前半はボールの支配率が50%強に止まり、ランク12位だったかの足長族の守りを切り抜けきれず攻めあぐねていた。だが、先取した1点目は明らかにノルウェーのディフェンス陣の一人が伸ばした足が宮沢の縦パスのようなシュートのようなキックに触れて方向を変えたオウンゴールにしてしまったもの。その5分後に1点返されたが、あれは身長の差だけの問題で、全く気にしないで見ていた。
ノルウェーは確かに体格と足の長さの優位性を活かしてはいたが、得点になる形を作れないのか、作り方を知らないのか、あるいは我が方の忠実な守りに遭って苦しんだのか、前半はろくにシュートに持ち込めなかった。ということで、我が方に残されたことは、「どのようにしてディフェンスの裏を取って追加点を取るか」だけが課題だと見ていた。しかも、あれだけ忠実に前線で動き回られては、ノルウェーは全く攻める切掛けを与えて貰えなかった。
2点目はペナルティエリア内でパス交換が出来ていたところに、ノルウェーのディフェンダー(我々の時代にはこんな言葉は使われていなかった)が何を思ったか、苦し紛れにか、誰をいない方角に戻してしまった。そこに遙か後ろから上がってきていた清水にピッタリと合って、蹴り込まれてしまった。このときもディフェンダーが懸命になって伸ばした足に当たってシュートの方角が変わったと見えた。あの清水の懸命で忠実な上がりを賞賛すべきだと思う。
3点目は、通算5点目を決めた宮沢に「天晴れ」を上げるのだが、私は(長谷川唯ではなかったと見た)あの相手ディフェンスの裏を鮮やかに取った縦パスを流し込んだ組み立て役を褒めるべきだと思う。私が宮沢だったら「こんなまたとない良いパスが来てしまった。決められなかったら大変だ」と緊張しただろう。それを宮沢落ち着いてGKの逆を取ったと見えたシュートで決めたのだからたいした力量だと賞賛したい。
次は11日にアメリカとスウエーデンの勝者と当たるのだそうだ。我が方があの忠実な前線の動きと、堅固な守りが出来れば勝てると期待している。恐らく、両国はあの宮沢の早い上がりと鮮やかに裏を取りに行くフィードを警戒してくるだろう。その隙にというか何というか、植木のスピードを活かす攻め方もあるだろう。私は「彼女らは既に慣れているとは思うが、国内の試合とは違って彼らの足の長さは抜きにくいし、折角狙い澄ましたパスを奪い取る辺りが要注意だ」と見ている。
スウエーデンの様子は知らないが、解説していた矢野喬子さんは「アメリカの調子が上がっておらず、まとまりがない」と見ていた。アメリカのサッカーには体格の良さと身体能力の高さという我が国にはない武器が備わっている。要するに「我が方の繊細な技術と忠実なパス交換を体格で押しつぶしにかかってくる危険性がある」のだ。12年前は澤穂希と宮間あやの高い技術で体格と身体能力の差を補った。
多少気が早いのだが、アメリカが勝ち上がってくると仮定して、今回は池田監督がどのような作戦を立てられるか最大の興味だ。長谷川唯の落ち着いた組み立て方、宮澤ひなたと植木理子の敏捷さで何回ディフェンスの裏を取れるかが鍵だし、この攻め方が何処まで通用するかが決め手だろう。日本女子代表に期待する。もう一回優勝して見せてほしい。でも、昨日のあのユニフォームは何だろう。矢張り青の方が似合う。