新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

8月1日 その2 学力テストで英語の成績が・・・

2023-08-01 11:45:22 | コラム
英語を「話す」の正答率が12.4%だったとか:

この芳しくない小6と中3のテストの結果の件をテレビと新聞が報じていたが、私が見れば余りにも当然のことであるのだ。それは、もう20年以上も指摘し続けてきたことで「これまでの英語の教え方をしていれば、児童や生徒たちの理解度が低くなるのは当たり前であり、教育法を変えるしか改善の手段はない」という批判の通りだからである。何処をどのように改善すべきかを繰り返して述べてきたので、ここでは細目には触れないでおく。

20年以上もアメリカの会社で対日輸出を担当し、多くの大手需要家と商社の方々に接してきたので、我が国の英語教育で育てられてくれば、どのような英語力というか“I know how to express myself in English.”の力を備えておられるか、いないかは十分に承知していた。そんな難しいことを言わなくても「会話の能力を付けるために英語を教えていない」のが教育方針である以上、12.4%は止むを得ない結果だっただろうということ。

もう10年以上も前のことだが、中教審だったかが「小学校の3年の未だ頭が柔軟な頃から英語を教えよう」と唱えだした頃のことで、ある会合で同席された元小学校の教諭だった女性が「良いことでドキドキするが、どうやって児童たちに英語を教えたら良いのかが解らないだろう」と言われたので愕然となった。英語を専攻されたのでもない小学校の先生に英語まで担当させるのならば暴挙だと思った。

かく申す私だって家庭教師で中学生を教えた成功経験はあったが、小学生にまで教えるなどとは考えたこともなかった。それだけではない。そういう宜しいとは評価できない課程を経た児童が中学に上がっても通用するような英語の理解力が備わっているとは考え難いのだ。

中学(旧制)、高校、大学時代の経験からも言えることで、取引先の方々からは正調乃至は正確なアメリカ式か英連邦式の発音をキチンと出来る日本人の先生かnative speakerから仕込まれていないので、外国人離れしたローマ字式の発音しか聞いてこなかったので、アクセントも不正確で抑揚も付かない英語しか発音できなくなっていたと解った。換言すれば「正確なnative speakerのような発音に耳が慣れていない」のである。

それに「単語重視」で英文法、英文解釈、英作文、英会話と一体でしかない英語をバラバラに分解して教えているので、言うなれば「それぞれの学科のようにされた項目の間に有機的な繋がりがなくなってしまうのだ。それだけではなく、実際にnative speakerたちの中に入れば日常的に使われる「口語体」と「慣用句」(そこにswearwordも含めても良いか)を教えていないので、読解力も聞き取りの能力も育っていないのだ。

中には学校の勉強で優秀な成績だっただろうと思わせる、堂々たる文章で流暢に話された方にも何人もお目にかかっていた。だが、その表現力は我々が“school English”と密かに揶揄していた堅苦しい文語調の英語なのだった。どういう意味かと言えば「実際にnative speakerたちが日常的に使っている言葉が殆ど出てこない難しい文章のこと」なのである。即ち、「英語学の表現としては優れていても、実用的ではないこと」を指しているのだ。

私個人の経験を振り返れば、昭和20年(終戦の年になった1945年)に中学1年生で最初に敵性語の英語を教えて頂けた先生は、信じられないことに、今で言うアメリカ人と日本人のハーフで、正しいアメリカ語の発音を教えられたのだった。換言すれば出発の時点でアメリカ語に耳が慣れるようになったのだ。そういう幸運が後々にまで非常に有り難いことに役に立ったのだった。

それでは最初にnative speakerに教えて貰えば良いかと言って、そうとはならないのが英語の厄介なところだ。それは大別してKing’s English系とアメリカン・イングリッシュ系になるからだ。その我が国で尊敬されていると思いたくなる英連邦系でもLondon Cockneyのような正調ではない格が低い発音もあるし、オーストラリアとニュージーランドにもアメリカとは大いに異なる独特の発音があるのだ。

アメリカでも東西の海岸地区では発音や言葉遣いが変わるし、南部には独特の発音があって、アメリカ人同士でも正確に聞き取れないことすらあるのだ。私は西海岸の英語こそが正調だと思っている。ここで強調したいことは「教師として採用したいnative speakerがこれらのどの発音をしているのかを、採用する側が解っているのか」という問題。どの発音であれば採用は控えた方が良いと聞き分けるだけの英語慣れが出来ているのかという問題だ。

ほんの入り口であるはずの発音でもこれだけの条件があるのだ。そこを無事通過できても、単語と文法重視のような従来通りの教え方を続けていれば、何ら改善にはならないだろうと断言する。長々と述べてきたので焦点が絞れていないかもしれない。要点は小学校から教え始めることを可及的速やかに廃止して、中学では私が主張するような能力を備えた教師に総入れ替えしたら良いということ。

だが、これを達成するのは「百年河清を俟つ」に等しいだろう。何れにしても、英語教育には改革が必要だろう。以前から指摘していることで「野には遺賢が幾らでもおられる」のである、教職課程の単位など取っていない。

「なでしこジャパン」を見損なっていたのではないが

2023-08-01 07:56:57 | コラム
格上のはずのスペインを鎧袖一触:

言うまでもないかも知れないが、ここに取り上げるのは「女子サッカー代表がW杯の予選で、格上のはずのスペインに4対0で圧勝したこと」である。昭和20年(1945年)から蹴球を始めたが、昨夜の勝利のような国際試合での見事な勝ち方を見た記憶がない。告白すれば「この女子代表の力を過小評価していたつもりはないが、迂闊にもあれほどのサッカーが出来るとはあまり期待していなかった」ので、余計に感心させて貰えた。

試合が始まって先ず気が付いたことは、中心選手で試合を組み立てるはずの長谷川唯と、ポイントゲッターゲッターだと思っている田中美南が出ていなかった点だ。相手のスペインが主力選手を温存したかどうかなどは解らないので、まさか我が方が1位通過を目前にして手抜きをしたのではないのかと疑いたくなった。

スペインの出だしは素晴らしかった。兎に角、綺麗で正確なパス回しで我が方にボールを触らせる暇(いとま)を与えずに攻め上がってきた。そのような圧倒的な状態が暫く続いたので「これはいかん。流石は世界6位(我が方は10位?)と感心していた。だが「待てよ。この光景には既視感(déjà vu)がある」と気が付いた。それは前回の男子のW杯でスペインに勝った時のこと。この試合でもスペインのパス回しの見事さに圧倒されたが、勝ったのは我が方だったではないか。

果たせるかな、スペインの試合を通してのボールの占有率が72%だったかだが、結果としては無得点に終わっていた。それは我が方の5人並んだ最終のバックスのラインを突破できず、前線ではFWも中盤の担当も全員が素早く動き回ってスペインがパスを回す先々での動きを封じていた。要するに好き勝手に回されているように見えても、最終のディフェンスライン突破の芽を摘んでいたのだった。私にはスペインのオフェンスには工夫がないと見えた。

心配性の当方には「あれほど相手のパス回しに対抗して敏捷に動き回り続けていては、体力が90分間も維持できるのだろうか」が気懸かりだった。だが、これは単なる杞憂に終わり、W杯4回出場の熊谷紗希を中心とした守りは本当に堅固で、スペインにフリーでシュートが出来る形を最後まで作らせなかった。見事なものだった。

だが、守っているだけでは勝てないのだが、攻める方も上がり気味のスペインのディフェンス陣の裏を巧みについて、少ない機会を活かして得点したのも、これまた誠に見事だった。長い間サッカーの国の内外の試合を見てきたが、あれほど綺麗に見事に逆襲(今日では「カウンター」という)の機会を活かしてシュートを決めたのを見た記憶がなかった。1点目を宮沢が決めた時には「こんなことが出来るのか」と声を上げてしまったほど鮮やかに決めていた。

あの時に感心した点は「左サイドから出た右斜め前への、スペインの上がり気味の守りの裏を突いたパスを、ディフェンスの戻りを一瞬で追い抜いて右から上がってきた宮沢が(私が唱える正攻法である)左足でゴールの左側に綺麗に蹴り込んで決めたこと」なのである。あれだけのスピードで上がって来て、なお且つ正確にトラッピングしてサイドキックで蹴り込んだ技術は並のものではないと高く評価した。

2点目の矢張りカウンターからの攻め上がりで、植木のディフェンスの逆を取ってシュートに持っていった技量も賞賛したい。スペインに70%以上もボールを保持されながら、数少ない機会を間違いなく活かして得点した落ち着きと、それを支えたシュートの技術にも「凄い」と感心させられた。3点目も逆襲から宮沢の落ち着いた右サイドからの鮮やかなミドルシュート。ここまでで確かティームとしてシュート4本で3本決めるという信じられない確率だった。

後半になって途中から長谷川も田中も投入されたが、かえってそうなってからは点が取れていなかった。それでも37分だったかに田中がハーフライン近くの右サイドからドリブルを開始して、ペナルティエリアまで入ってディフェンスを巧みなフェイントで振り切って(私が言う基本通りに)左足でゴール左隅に鮮やかな4点目のシュートを決めてくれた。ハーフラインからキープしてシュートまで行き、しかも決めたというのは余り見た記憶がない。素晴らしい。

スペインはあれだけ高度なキープ力とパス回しの技術がありながら、如何に前掛かりであったにせよ、あのディフェンスの判断の悪さと動きの遅さは不思議だった。今朝になって報道を見れば、スペインは先発メンバーを落としていなかったそうだから、我が方の実力もかなり上がっていたものだったと、遅まきながら確認できた次第だ。宮沢などは昨日までで4点を取ったのだそうだが、澤穂希さんの時代にも見かけなかったスピードを備えたFWだと評価したい。

次は男子も未だ達成できていない8強を目指しての、ノルウェーとの一戦だ。ノルウェーを見たことがないので想像するだけだ。思うに、スペインのような個人技に依存したパス回しのサッカーはしてこないだろうから、堅固なディフェンからカウンターだけではなく形を整えた攻め方からシュートを決めるサッカーも見せて欲しいものだ。そのためには長谷川唯は最初から使うのだろうと思う。12年前のように最後はアメリカを抑えて優勝して貰いたいのだ。