製作地 カンボジア北部
製作年代(推定) 12~13世紀 アンコール期
素材 青銅(ブロンズ)
”せん仏”は、寺院や仏塔等建造物の装飾、或いは単独で奉納仏・礼拝仏及び法具等として用いるため、雌型に粘土等を詰めて型押しし、乾燥若しくは焼成させて作られた比較的小型の仏像及びそれに類する品モノとなります。
インド・中国を製作・伝播の起源地として、東アジア・東南アジアを含む仏教圏の広い範囲で手掛けられてきました。我が国日本では唐の影響下で7~8世紀を中心に製作がなされたことが、残存する寺院装飾や遺跡発掘により確認されております。
クメール王朝期(アンコール期)に手掛けられた本せん仏は、大きさが5cm弱の小型である点、そして型ではない実仏(本仏)が青銅製である点に特徴を見出すことができます。
クメール王朝はとくに青銅製品を宗教儀礼用の法具として重用してきたため、このような青銅製のせん仏が、信仰の対象として作られるに至ったと考えられております。
手の平に納まる大きさのうちに篤き信仰の精神性が凝縮された、遠い時代の護符・念持仏です。
●本記事内容に関する参考(推奨)文献