中村翫雀改め四代目中村鴈治郎襲名の披露公演だが、昼の部では、鴈治郎自身はようやく、三つめの演目”廓文章(くるわぶんしょう)”に初めて登場し、この劇中に襲名口上がある。
新・鴈治郎の父が四代目坂田藤十郎で、母は扇千景、弟に三代目中村扇雀がいて、長男が中村壱太郎である。三代目鴈治郎が父親で二代目が祖父となる。襲名は歌舞伎役者にとっては、昇任人事みたいなものだろうけど(笑)、ぼくのような歌舞伎初心者には、覚えるのが大変。二代目は、”浮草”で旅回りの駒十郎を演じた、あのお顔だ、相手役は京マチ子だったなんて、ようやく思い出すことができる(笑)。
そして、舞台の幕が上がる。
玩辞楼十二曲の内 廓文章(くるわぶんしょう) 吉田屋
藤屋伊左衛門 翫雀改め鴈治郎
吉田屋喜左衛門 幸四郎
若い者松吉 又五郎
藤屋番頭藤助 歌六
おきさ 秀太郎
扇屋夕霧 藤十郎
正月を間近に控えた大阪新町の吉田屋。その玄関先に現れた、編笠を被り、粗末な紙布を来た男。主人の喜左衛門の名を呼んでいる。その声を聞きつけて松吉が出てくる。身なりをみて、追い払おうとする。そこへ、喜左衛門が現れる。松吉の無礼を詫びつつ、笠の中の顔をみる。おお、伊左衛門さんではないか、どうぞ、中にお入りなされ、と肩を抱く。編笠をとると、新鴈治郎の顔がはじめてお披露目される。、成駒屋!四代目!の声がかかる。
大阪でも指折りの大店の若旦那であったが、扇屋お抱えの傾城、夕霧に入れ揚げ、七百貫の借金をして、勘当されている身の上であった。夕霧が病で臥せっているという噂を聞き、訪ねてきたのだった。そんな伊左衛門をやさしく包み込むように迎える喜左衛門。吉田屋大座敷の場面。突如、幸四郎のせりふが、鴈治郎の襲名のお祝いの弁に移り、四代目鴈治郎の襲名口上の場となる(笑)。夜の部に本格的な口上があるのだが、昼の部のお客のために劇中口上が組まれている。鴈治郎の名跡を継ぎましたが、その名に恥じぬよう芸道に精進しまする、と決意を述べる。成駒屋!四代目!
また、突如、幸四郎が、芝居のセリフにもどり、観衆から笑い声。幸四郎が立ち去ると、秀太郎(おきさ)が現れ、酒の支度をする。夕霧は快方に向かっているという。座敷に出ていることも聞き、様子を探りにいったりする。お客にお愛想する夕霧に腹をたて、こたつでふて寝をしていると、しばらくして夕霧がやってくる。藤十郎と鴈治朗の親子対面である!はじめはなじっていただが、夕霧が病気になったのは伊左衛門に会えなくなったからだと知り、機嫌を直す。
そこへ、喜左衛門とおさきがうれしい知らせをもってくる。勘当が許され、夕霧の見受けの金が届けられたという。そして、藤屋番頭藤助を先頭に担がれてきた千両箱が部屋に積まれるのであった。
そして、幕がおりる。それは鴈治郎襲名披露の祝い幕。
何と、これは森田りえ子の作であったことを筋書で知る!3月、京都でお会いしたばかり(ツアーだけどね)。りえ子さんの顔が目に浮かぶ(汗)。解説があった。秋の夜空に浮かぶ満月。四羽の鴈が飛ぶ。初代から四代目までの鴈治郎を示している。先頭の月に重なる鴈が四代目。右は華麗に咲き誇る糸菊。左に芒がたなびく。成駒家のシンボルである、鴈、芒、月を入れ、りえ子さんの出世作となった糸菊を入れ、作者からのお祝いとした。(安田晴美解説)
祝い幕原画
歌舞伎座での筋書の表紙も素晴らしく、りえ子作かと思ったが、これは三輪晃久の作品で、画題は”紅しだれ”。
なお、先月の大阪松竹座での筋書の表紙絵は森田りえ子の作品だそうだ。写真でみたが、画題は”初春”で紅梅と白梅の絵であった。
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