気ままに

大船での気ままな生活日誌

鳥獣戯画を観る

2007-12-15 09:57:03 | Weblog
1週間ほど前、フェルメール展を観たその足で、近くのサントリー美術館で開催されていた”鳥獣戯画がやってきた”展を観に行ってきました。少し間が空いてしまったのは、後述のあることを調べてからと思っていたからです。”鳥獣戯画”は教科書に必ず出てくる、超有名な美術品であって、人間に擬せられた兎や蛙や猿が遊んでいる姿は、すぐ思い浮かべることができます。でも、実物を観る機会は、今回が初めてのような気がします。ですから、ミーハーのボクは、まるで有名女優さんの撮影現場を見学に行くようなワクワクした気持ちで会場に入っていったのでした。

会場に入ると、いきなり”鳥獣人物戯画絵巻、甲巻”。馴染みのカエルちゃん、お猿さん、うさちゃんが、本当に笑ったり、驚いたり、怒ったり、表情豊かな顔をして、また、おどけたり、ひっくり返ったり、振り向きながら逃げたりしている姿が、どどどどーんとボクの目に入ってきます。絵巻全体がとゆうより、ボクはその中で”演技”している、カエルちゃん達の名優さんたちに目が釘付けになってしまいました。たとえて言うならば、若き日の原節子さんやイングリッド・バーグマンさんの撮影現場を目の前でみているような、そんな感じです。

母によると、ボクは学校に上がる前から、漫画ばっかり描いていて、この子は将来、漫画家になるのではないかと思ったそうです。これは、ボクも良く覚えているのですが、小学生になってからも、月刊の漫画誌、”おもしろブック”と”少年画報”は毎月とっていたし(妹はりぼん、なかよし)、当時人気の武内つなよし作、赤胴鈴の助などの主人公の漫画を上手に描くことができ、よく友達から誉められたものでした。だから、少しは漫画はわかると言うつもりはないですが(笑)が、興味はあるのです。

甲巻の、動物たちの輪郭を描く、筆のタッチは軽快で、よどみがなく、素人のボクでも、これはタダモノではない人が描いたものだとゆうことがわかります。それに絵巻物のストリーもうふふと笑えます。たしか「日曜美術館30年展」で、鉄腕アトム”の手塚治虫さんが、これは現代にも十分通用する漫画で、まさに世界の漫画のルーツだと激賞していたのを思い出しました。

そのあと、続けて、乙、丙、丁巻が展示されていましたが、絵巻の中の鳥獣たちは全く馴染みがなく、甲巻の出演者が名優ばかりだとすれば、あとのはまだ売り出し中の俳優さんばかりのようで(笑)、感動がうすかったです。でも、いずれも国宝ですから、専門家がみれば、大変な価値があるものなのだろうなと思いながら鑑賞しました。

また、甲巻は前半と後半は違う巻物であったとか、抜けている部分があるとか、いろいろ分析された研究成果も展示されていましたが、ボクにとってはそんなことはどうでも良いように思えました。ひとつだけ、ボクが気になったことは、この”鳥獣戯画”に京都・栂尾、高山寺の印が押してあることでした。高山寺といえば、あの明恵上人が開いたお寺です。明恵上人がこの”鳥獣人物戯画絵巻”を保管して実際、観ていたはず、このことに興味をもったのです。

明恵上人といえば、月の歌人と呼ばれ、ボクも好きな『雲いでて 我にともなう 冬の月 風やみにしむ 雪やつめたき』 などの名歌をつくっていることは知っていましたが、それ以外のことについてはあまり知りませんでしたので、少し調べてみました。図書館で、白州正子さんの”明恵上人”が貸し出し中でしたので、河合隼雄さんの”明恵 夢を生きる” のページをくくっていきました。

明恵上人は毎夜、夢をみて、それを克明に憶えていて夢日記のようなもの、「夢記」を著わしています。河合さんは臨床心理学者の立場からこの「夢記」を解析しているのですが、興味深い文章をみつけました。

”白州正子ら所蔵の「夢之記切」で、夢の記録に明恵自筆の絵が付されている。・・これらのスケッチから推しても、明恵自身、相当に絵心があったものと思われる”

寝ているときにみる夢を、現実の世界と同列に扱うほど”夢”を重視していた明恵上人、そして自身でも絵筆をもって夢の描写をしていた、こうゆう方だからこそ、この”鳥獣人物戯画絵巻”を最もよく理解し、自分でも鑑賞し、永く、大事に保存されたのだろう、と思いました。もしかしたら、明恵上人作のも、甲~丙の中に一部あるかもしれない(笑)、と思ったのでした。

これを機会に、ボクも”昔とった杵柄”で、カエルちゃんや鳥ちゃんの人物戯画でも描いてみようかな。




コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする