ユニーク古典現代訳(大阪弁万葉集改題)

日本の古典を訳します。そのままストンと腑に落ちる訳。なんだ、こうだったのかと分かる訳。これなら分かる納得訳。どうぞどうぞ

日めくり万葉集<5月>(その2)

2009年10月07日 | 日めくり万葉集
■平成21年10月7日■
NHKテレビ「日めくり万葉集」で取り上げられた 万葉歌を 「大阪弁」で訳します
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★吉野盟約 絶頂天武 草壁・大津の あいだきし
き人の        《よろし人〔わしが〕 
 よしとよく見て      よう〔状況〕見てからに 
  よしと言いし       よし〔出陣〕言うた 
   吉野よく見よ       吉野 よう見い〔覚えとくんや〕 
    良き人よく見       よろし人〔わしを〕よう見〔見習うんや〕》 
                         ―天武天皇―〔巻一・二七〕 

★子を呼ぶは 恋の象徴しるしか 声聞けば 愛しい人の 面影浮かぶ
神奈備かむなびの 磐瀬いはせもりの 呼子鳥よぶこどり いたくな鳴きそ が恋増さる
郭公鳥かっこうよ そんなに鳴きな 鳴くたんび 心恋しさ 募ってくるやん》
                         ―鏡王女かがみのおおきみ―〔巻八・一四一九〕

★三山の 妻争いを 見に来たが 収束おさまり聞いて 気抜け阿菩大神あぼかみ
香久山かぐやまと 耳梨山みみなしやまと ひしとき 立ちて見にし 印南国原いなみくにはら
《香久山と 耳成山が 揉めたとき ここまで来たんや 印南いなみの地まで》
                         ―天智天皇―〔巻一・一四〕 

★監督の 家持はんが 防守さきもりの 気持ちを汲んで 代わりに詠んだ
ますらをの ゆき取り負ひて でて行けば 別れを惜しみ 嘆きけむ妻
矢筒やづつ背に 出かける時に その妻は 嘆いたやろな 別れ惜しんで》 
                         ―大伴家持―〔巻二十・四三三二〕 

歴史編(18)天下分け目の決戦や

2009年10月06日 | 歴史編
■平成21年10月6日■
万葉集に詠われた歌を 歴史の流れに沿って 採り上げ 「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★陣頭指揮する 高市皇子たけちのおおじ 勇猛果敢さ 目に浮かぶ

かけまくも ゆゆしきかも はまくも あやにかしこき 明日香の 真神まがみが原に
ひさかたの あま御門みかどを かしこくも 定めたまひて かむさぶと 磐隠いはがくります 
やすみしし わご大君の 

《言葉にするのは はばかられもし おそれも多いが 真神まがみの原に
 都造られ やがてのことに お隠れなされた 天武のみかど
きこしめす 背面そともの国の 真木まき立つ 不破ふは山越えて
高麗剣こまつるぎ 和射見わざみが原の 行宮かりみやに 天降あもいまして
 
《都の北の 不破山ふわやま越えて 和射見わざみが原に 陣敷きまして》
あめの下 をさめ給ひ す国を 定めたまふと とりが鳴く 吾妻あづまの国の
御軍士みいくさし給ひて ちはやぶる 人をやはせと 服従まつろはぬ 国を治めと 
皇子みこながら よさし給へば

《天下しずめて 泰平たいへい得んと あずまの国から 軍隊集め
 そむきの心 改めさせろ 逆賊討てとの 命令下す》 
大御身おほみみ大刀たち取りかし 大御手おほみてに 弓取り持たし 
御軍士みいくさを あどもひたまひ

大刀かたないて 弓取り持って 全軍指揮する 高市皇子たけちのおおじ
ととのふる つづみの音は いかづちおとと聞くまで 吹きせる 小角くだおとも 
あた見たる とらゆると 諸人もろひとの おぴゆるまでに

《並ぶ太鼓は 雷みたい 響く笛の 敵見てうなる 虎の吼声こえかと 怖気おじけを誘う》
ささげたる はたなびきは 冬ごもり 春さり来れば 野ごとに きてある火の 
風のむた なびくがごとく

ささげる旗は 真紅になびき 風にはためく 野を焼くほのお
取り持てる 弓弭ゆはずさわき み雪降る 冬の林 に 飃風つむじかも い巻き渡ると 
思ふまで きのかしこ

《弓のつる鳴り 冬吹く旋風つむじ 耳に恐れの 渦巻きわたる》  
引きはなつ 矢のしげけく 大雪の 乱れてきたれ 服従まつろはず 立ち向かひしも 
露霜つゆしもなばぬべく 行く鳥の あらそふはし

《放つ矢しげく 吹雪のごとく あだなす敵は 意気消え果てて
 慌てふためき 争い逃げる》 
渡会わたらひいつきの宮ゆ 神風かむかぜに い吹きまどはし 天雲あまくもを 日の目も見せず
常闇とこやみおほひ給ひて 定めてし 瑞穂みづほの国を

《伊勢の神風 呼び寄せ吹かせ 天雲あまぐも起こして 太陽隠し
 敵を闇へと ほうむり去って 平和に戻した 瑞穂みずほの国くにを》
神ながら 太敷ふとしきまして やすみしし わご大君おほきみの 天の下 まをし給へば 
万代よろづよに しかもあらむと 木綿花ゆふはなの 栄ゆる時に ・・・

《治めなさって 引き継ぎ行けば 今のさかえは 万代よろずよまでに 続かんものと 思えはしたが》
                         ―柿本人麻呂―(巻二・一九九前半) 






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日めくり万葉集<5月>(その1)

2009年10月05日 | 日めくり万葉集
■平成21年10月5日■
NHKテレビ「日めくり万葉集」で取り上げられた 万葉歌を 「大阪弁」で訳します
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持統天皇てんのうの 伊勢の行幸みゆきに 参加する 妹を留守居の 人麻呂詠う
潮騒しほさゐに 伊良虞いらご島辺しまへ 漕ぐ船に 妹乗るらむか 荒き島廻しまみ
《波荒い 伊良湖の島の 島めぐり 喜んでるか あの児も乗って》 
                         ―柿本人麻呂―〔巻一・四二〕 

藤原宇合うまかいの 帰京を惜しみ 現地妻 思いの丈を 歌に託して
庭に立つ 麻手あさで刈り干し 布さらす 東女あずまをんなを 忘れたまふな
《麻刈って 干したり布を さらな 東女おんなやけども 覚えといてや》
                         ―常陸娘子ひたちのおとめ―〔巻四・五二一〕

★聖武帝 吉野行幸みゆきに 従駕する 赤人景歌 ここに生まれる
み吉野の 象山きさやまの 木末こぬれには ここだも さわく 鳥の声かも
《吉野山 象山きさやま木立ち こずえさき 鳥がいっぱい さえずる朝や》
                         ―山部赤人―〔巻六・九二四〕 

★春が来て うらら膨らむ この胸は おまえ思うて 張り裂けそうや
春されば しだり柳の とををにも 妹は心に 乗りにけるかも 
《春来たら 柳の枝が たわわなる ワシの心に お前がたわわ》 
                         ―柿本人麻呂歌集―〔巻十・一八九六〕 

★咲く桜 惜しむ心か それちごて 膨らむ蕾 高まる期待?
春雨はるさめの しくしく降るに 高円たかまとの 山の桜は いかにかあるらむ
《春雨が ずっとしきりと 降っとおる 山の桜は どうなったやろ》 
                         ―河辺かわべの東人あずまひと―〔巻八・一四四〇〕

歴史編(17)雪山越えて嶺こえて

2009年10月02日 | 歴史編
■平成21年10月2日■
万葉集に詠われた歌を 歴史の流れに沿って 採り上げ 「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
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★吉野へ逃れ 再起期し 壬申乱を 制し今 神となりしは 天武帝
み吉野の 耳我みみがみね
 時くぞ 雪は降りける
  間くぞ 雨は降りける
   その雪の 時無きがごと
    その雨の なきがごと
     くまもおちず 思ひつつぞ
       その山道を 

耳我みみがの嶺を 越える時
 つぎつぎに降る 雪や雨 
   行っても行っても けわし道
    先の見えへん のがれ旅
     あの嶺越えて 今がある》 
                         ―天武天皇―〔巻一・二五〕 



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日めくり万葉集<4月>(その4)

2009年10月01日 | 日めくり万葉集
■平成21年10月1日■
NHKテレビ「日めくり万葉集」で取り上げられた 万葉歌を 「大阪弁」で訳します
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★旧友を 桜の花にかこつけて 会いに来んかと 誘てみる
我が背子せこが 古き垣内かきつの 桜花 いまだ ふふめり 一目ひとめ見に
《おいお前 前に住んでた 家の桜花はな まだ蕾やで 見にえへんか》
                         ―大伴家持―〔巻十八・四〇七七〕 

★口したら 消えるんちゃうかと 思う恋 ほんまは口に 出したいんやで
真金まかねく 丹生にふのまそほの 色に出て はなくのみそ 我が恋ふらくは
きん造る 赤土みたい 目立つに 言わへんだけや ワシの思いは》
                         ―東  歌―〔巻十四・三五六〇〕 

★春の野原は 心が浮くよ 天皇さんも まだ若い 通りすがりの 娘に惚れた
もよ み        《ええかごさげて
 くしも みくし       ぐし持って             
  この岡に ます      みしてはる 娘はん
   いえかな らさね        あんたるとこ 教えて欲しい

そらみつ 大和やまとくに        ここの国 
 おしなべて われこそ      治めてるんは このわしや 
  しきなべて われこそませ        仕切ってるんは このわしや
   われこそはらめ 家をも名をも   わしも教える 名前と家と     
                            (あんた教えて 名前と家と)》 
                            ―雄略天皇―〔巻一・一〕 

★都離れて 天離あまざかる ひなに居りゃこそ 恋しさ募る
あをによし 奈良の都は 咲く花の にほふがごとく 今さかりなり
《賑やかな 平城ならみやこは 色えて 花咲くみたい 今真っ盛り》
                         ―小野老おののおゆ―〔巻三・三二八〕

★こんな苦労くろして 獲ったんや 鮒をもろてや わしの気持も
沖辺おきへ行き を行き今や 妹がため 我がすなどれる 藻臥もふし束鮒つかふな
《沖や岸 あちこち行って 今やっと お前のために 獲った鮒やで》 
                         ―高安王たかやすのおおきみ―〔巻四・六二五〕

★暗い夜道を 通う足 月に照らされ はようなる
あまはら 振りけ見れば 白真弓しらまゆみ 張りて掛けたり 夜道はけむ
《空見たら 弓張ったな 月出てる お前にかよう 道ええ具合》
                         ―間人大浦はしひとのおおうら―〔巻三・二八九〕