田中眞紀子(シンガー・ソング・ライター)

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小川屋で歌う最後の歌

2015-04-20 00:26:48 | Weblog
3月28日(土)

なにしろ出演時間が23時35分からなので、早起きして午前11時の開演から見るのはちょっと無理。
何組かのお知り合いのステージは申し訳ないが断念した。
店に到着したのは午後2時30分。ここから怒涛の27時間ライブ鑑賞が始まった。

すでに巻いていて、3時スタートのMatata Bitsのステージが始まっており、光蛍色の細い棒がステージから飛んできた。拾って、腕に巻いてもらった。
ギター弾き語りのともイル君の歌にあったみたいに、みんな10年後も小川屋はきっとあると思っていたのにっていう残念な気持ちと、小川屋への感謝とに溢れるステージが続く。地元のともイル君の時の客席の盛り上がりに、次の出演者、東京からきた東行氏、「こんなバリバリホーム感に勝てるわけがない」とコメントしながらも、すごいエネルギッシュなステージで、徐々に観客をひきつけていった。

地元組のステージはお客がステージ寸前まで寄り付き、外からきた出演者の時は1メートルくらいステージから離れて聞く感じ。でも、どの演者に対しても、客が真剣に対峙する空気はとっても気持ちよい。演者も客も‘締まって”いるのだ。
以前共演したスーパーアイラブユーは、ギターの弾き語りからバンドになっていた。ドラムの女の子がいい感じだった。私を見てしきりに「精進します!」と言うのだ(笑)。

この後あたりから、私はお客モードから出演者モードに切り替えるため、店の隅っこに座って、演奏を耳だけで聞いていた。しかし飽きないんだな、これが! バンドがとっかえひっかえ10組くらい続いたのに、全然飽きない。
時々カバーバンドが入るのがまた、効いている。
バンドもみな力があるし、なによりプリンちゃんの構成力のたまものだろう。

さて一方で。
みんな昼間っから酔っぱらってノリノリなのであった。
中村兄なんて、私が店に着いた時からべーロベロ!
ビーチじゃあるまいし、店の外にパラソルが広げてあって、みんなでもポカポカお日様の下で飲み会になっており、谷井大介も真っ赤な顔。
地元バンドの演奏を聴きながら、中村兄は私のそばにやって来て「みんな仲間なんです。」と言い、しゃがみ込んで泣き出す始末。よしよし、いい子いい子するしかないわけである。

酒飲みの大の男たちの、高校生みたいな青春物語。
私が20代後半にある劇団を見て、私もステージに立ちたい!って思った時の気持ちを思い出す。
そのミュージカル劇団は、下手くそな歌をボロボロ泣きながら、がなり歌い、私はそれを見て悔しいと思ったのだ。
そういうバカみたいに全力でやれるものが、私には無い。それが悔しかった。
だから、バカみたいに30歳過ぎて、こんな世界に足を踏み入れたのだ。
そんな私の原点に近いものが、ここにある。

ノリノリバンドが10組も続けば、酔っ払い達の興奮もヒートアップ。
私の出番2つ前くらい前の男臭いバンドの時、あわや乱闘かっていう状態になり、これにはお嬢さん育ちの成れの果てのまきこさんは、私の時こんなになったらどーしよー!とビビりまくりましたが、当事者が店の外に出てくれたのと、和気優氏の貫録で、お店の空気が一変した。
助かった~!
和気氏はご自分の出番直前に入ってきて、出番が終わったらすぐ帰ったので、ご挨拶も出来なかったが、ホント、心から感謝である。少年院などで慰問ライブをしているそうだが、あの貫録と、大きな包容力のある空気感に、なるほどなと納得。

さぁ、待つこと8時間、リハ無しで私の出番が始まった。
3月12日に同じステージで歌っていること、クイーンでオープンライブに出たことなどが功を奏し、リハ無しでも落ち着いて歌うことができたと思う。
外部者の私のライブは ステージから皆さん1メートル離れていたが、ほぼオールスタンディング(笑)。
午前中にこのイベントに出て、いわきに戻って仕事をし、またお母さんと一緒に小川屋に帰ってきた、いわきバロウズの花澤君が、最前列で谷井君と隣合わせに立っていて、私にはちょっと不思議な光景だった、

最後に「ふるさと」を歌った。
今回は「桜並木」と「蜃気楼」は外して、「ふるさと」の歌だけで歌った。
この曲が原発に意識を向けたものである事は尊重するが、歌だけで色々な状況や思いを含めて伝えることもできる曲なので、それをやってみたかった。「ふるさと」だけを歌うのは、実は初めてなのである。
そして、それでよかったようだ。
無くなりはすれど、小川屋を心のふるさと、拠り所として、そこで育ったミュージシャン達が‘小川屋魂’を胸に全国に拡散していってくれれば、小川屋は永久に不滅なのだ。そのことが伝えられたようであった。
小川屋の最後に、良い歌を歌えて良かった。

自分が終わればもうお客さんに徹底できる。
ここからの記憶の方が鮮明だ。
出演者モードになる為、店の隅に座っていた時に周りに座っていたお兄さん達が、私の次に出たfab tonesで、ボーカル無しのインストバンド。すごくタイトでカッコよい。
ライブが終わった後、色々声をかけてくれて、嬉しかった。
小川屋に入ると誰でも一番最初に目に止まるであろう「うさファックはすぐに来る!」のポスターの主、うさぎファクトリー、小川屋が無くなる悲しみを不貞腐れながらも滲ませていた。
「魁!男道」といういわきのバンドが面白かったな。
カリメロみたいなギターの男の子が、「ボーカルの男の子がモテるのが気に入らない」という話で終始。小川屋最終イベント関係なし!それが何か、未来志向で爽やかでいいんじゃないのって感じ。昨年いわきで共演した童貞ズに感じが似てるなと思ったら、童貞ズは魁!男道の直系の弟分らしい。

そして初日のトリは、小川屋で32回のオープニングアクトを務めたサンイチゴ。彼もまた飄々とステージを進めていた。若い子はもちろんそれなりに小川屋終焉に思いはあるだろうが、クールなんだろうな。ウエットなのは、行き場を失ったお兄さん連中の方なんだろうね。しかし、小川屋魂を未来に運ぶのはサンイチゴを筆頭にした若者たちだ。
期待してるよ!!

午前3時30分終演。午前4時30分に店を出てホテルに送り届けてもらったのは午前5時。ベットに入ったのは午前6時。既に完全に夜は明けていた。


さて、ライブのお知らせです。

4月23日(木)
Mackys House vol,12

  開場 18:30
  開演 19:00
  料金 前売2000円/当日2500円+ドリンク代

  出演順 モロコシ・ボーイズ
      登山正文(京都)
      ヌルマユ永井(北海道)
      今村大祐(京都)
      西山正規&ジャッカル(マイナス1)
      田中眞紀子