共演者やスタッフの人が皆、帰ってしまい、一人石巻に取り残されたかっこうになって少々心細かったが、石巻ライブの翌日、頑張って門脇小学校に行こうと決意した。
前夜のライブの後、地元の共演者のシオ君が、ライブハウスのすぐそばだから日和山に連れて行ってくれると言うので、御言葉に甘えて車に乗せてもらった。
門脇小学校は日和山の真下にあるという。
小さな山だが、これを登るのは私には無理!という急勾配。
状況だけでも知る事が出来て、心から感謝である。ライブハウスに戻って着替えている時に彼は帰ってしまって、ろくにお礼も言えなかった事が悔やまれる。
色々良からぬ話を聞いてしまったものだから、全く寝付けず、さっさと起きてホテルを出発。荷物を預けに駅に寄った。
漫画の街らしい可愛い駅だ。
身軽になって、マンガロードを歩く。まだ午前9時台だから店も開いてないのかと思った。
有名な石の森漫画館の建物が目に入ってしばらく歩き、旧北上川にたどり着いた時、正直ギョッとした。
非常に広い川幅の静かな水面が、膨れ上がって見えたからである。
私は川や滝などの水辺が大好きで、普段なら旅先で川を見ると嬉しくなるのだが…
そういえば、すぐそこに海があるような河口の川面を見た事がない気もするし、満潮とかそういう事だったのかもしれない。
でも正にこの川面が膨れ上がって街を溺れさせたのだという事が、リアルに感じられての恐怖感だったように思う。
ライブハウスも川の側にあり、津波の高さが、周りのあちこちの建物の壁に印されていた。
前日それを見てもにわかに実感は沸かなかったが、津波がこの川をかけ昇った様を想像すると、一気に寒々しい気持ちになるのだった。
漫画館は再開していて、子供達が楽しそうに走りまわっていた。
そういえば今回も福島で子供を見なかったな。
私は漫画にはさほど執着心はないのだが、子供の頃、009は何か大人のクールなカッコ良さを感じていたのを思い出して、もう一度見てみたいなと思った。
漫画はハマると抜け出せないから、あまり読んだり見たりしたくないんだ。
漫画館の3階に、震災時の写真が10枚ほど展示してあり、よくここまで復活させたなと、しみじみ感じたのだった。
漫画館を出て、タクシーを拾った。
「日和山はすぐそこだよ」と言われたけど、「自信がないから行って下さい」と伝えると、「被災地観光で来たの?」と聞かれた。
何だかバツが悪くて、決して嘘ではないので「昨日用事があって来たので…」と言葉を濁した。
確かに軟弱ではあるが、タクシーに乗って正解だったのは、色んな情報を聞けた事だ。
前夜シオ君が乗せてくれた急勾配の坂が、津波から逃げる車で渋滞になったんだと運転手さんが話してくれた。
こんな急な登り坂でノロノロ走ったら、ズルズル落ちて行ったりしなかったんだろうか。
頂上に着いた時、門脇小学校は何処か聞いてみた。
「頂上からは見えないよ。そこの階段を降りて右に行くんだ。」
「もう取り壊したんですか?」と聞くと、
「取り壊してはいないけど、フェンスで囲って中に入れないようにしてあるんだよ。観光客が中に入っちゃって危ないから。」
被災地`観光´とは耳の痛い言葉だ。
人の不幸を覗き見するような、罪悪感は感じる。
運転手さんにお礼を言ってタクシーを降りると、大きな鳥居越しに、穏やかな海が見えた。
ここからの風景が、津波に街が飲み込まれていくシーンで有名な場所だと、前夜シオ君が言っていた。
その鳥居から、これまた急勾配の下り階段が、薮の中に続いている。
降りるのはいいが、帰りにこれを登るのか…
その日は、空気はわりと冷たく風が強かったが、日差しも強くて、ちょっと運動するとかなり汗ばむ陽気。
もう少し楽な下り道はないかと周辺をうろついたが、そもそも頂上から見えない門脇小学校が、右といっても何処にあるか分からず、あらぬ道を行って迷子になるのも困るし、山を降りた海側には、それこそ何もないのだから、助けを求めるにもタクシーなんか通るはずもない。
頂上には観光客が何人もいたが、その階段を降りようとしている人などいないのである。明らかに地元の人らしきおじさんが、草を刈っているだけなのだ。
ふっと諦めて引き返そうかと思った時、大きな案内図が目に入った。
思いっ切り「門脇小学校」と書いてある。それが私を奮起させた。
もう、行くしかないわ!
何をしにここまで来たのよッ!
と意を決して、急勾配の下り階段を降りていった。
1年半前に来た時には、妙な宅地みたいだったが、今は1メートルくらいの草がぼうぼう生えていて、遠くまでは見晴らせない。
階段を降り切って、とにかく右へ右へと歩いて行くと、運転手さんが話していたフェンスらしきが見えてきた。
そしてほどなく、屋上のパネルが目に入った
あったッ!
「すこやかに 育て心と体」
の文字。
うっすらと目に涙がにじんで来た。
11月2日(土) 学芸大学アピア40
Macky's House vol.10
「大震災世代の子供たちへ IN TOKYO 」
開場 17:30
開演 18:00
料金 前売2,000円 / 当日2,300円 +1drink
出演 佐藤賢治(いわき)
藤野恵美(郡山)
四畳半プリン(日立)
松浦健太(東京)
三ケ田圭三(いわき)
田中眞紀子(東京)
前夜のライブの後、地元の共演者のシオ君が、ライブハウスのすぐそばだから日和山に連れて行ってくれると言うので、御言葉に甘えて車に乗せてもらった。
門脇小学校は日和山の真下にあるという。
小さな山だが、これを登るのは私には無理!という急勾配。
状況だけでも知る事が出来て、心から感謝である。ライブハウスに戻って着替えている時に彼は帰ってしまって、ろくにお礼も言えなかった事が悔やまれる。
色々良からぬ話を聞いてしまったものだから、全く寝付けず、さっさと起きてホテルを出発。荷物を預けに駅に寄った。
漫画の街らしい可愛い駅だ。
身軽になって、マンガロードを歩く。まだ午前9時台だから店も開いてないのかと思った。
有名な石の森漫画館の建物が目に入ってしばらく歩き、旧北上川にたどり着いた時、正直ギョッとした。
非常に広い川幅の静かな水面が、膨れ上がって見えたからである。
私は川や滝などの水辺が大好きで、普段なら旅先で川を見ると嬉しくなるのだが…
そういえば、すぐそこに海があるような河口の川面を見た事がない気もするし、満潮とかそういう事だったのかもしれない。
でも正にこの川面が膨れ上がって街を溺れさせたのだという事が、リアルに感じられての恐怖感だったように思う。
ライブハウスも川の側にあり、津波の高さが、周りのあちこちの建物の壁に印されていた。
前日それを見てもにわかに実感は沸かなかったが、津波がこの川をかけ昇った様を想像すると、一気に寒々しい気持ちになるのだった。
漫画館は再開していて、子供達が楽しそうに走りまわっていた。
そういえば今回も福島で子供を見なかったな。
私は漫画にはさほど執着心はないのだが、子供の頃、009は何か大人のクールなカッコ良さを感じていたのを思い出して、もう一度見てみたいなと思った。
漫画はハマると抜け出せないから、あまり読んだり見たりしたくないんだ。
漫画館の3階に、震災時の写真が10枚ほど展示してあり、よくここまで復活させたなと、しみじみ感じたのだった。
漫画館を出て、タクシーを拾った。
「日和山はすぐそこだよ」と言われたけど、「自信がないから行って下さい」と伝えると、「被災地観光で来たの?」と聞かれた。
何だかバツが悪くて、決して嘘ではないので「昨日用事があって来たので…」と言葉を濁した。
確かに軟弱ではあるが、タクシーに乗って正解だったのは、色んな情報を聞けた事だ。
前夜シオ君が乗せてくれた急勾配の坂が、津波から逃げる車で渋滞になったんだと運転手さんが話してくれた。
こんな急な登り坂でノロノロ走ったら、ズルズル落ちて行ったりしなかったんだろうか。
頂上に着いた時、門脇小学校は何処か聞いてみた。
「頂上からは見えないよ。そこの階段を降りて右に行くんだ。」
「もう取り壊したんですか?」と聞くと、
「取り壊してはいないけど、フェンスで囲って中に入れないようにしてあるんだよ。観光客が中に入っちゃって危ないから。」
被災地`観光´とは耳の痛い言葉だ。
人の不幸を覗き見するような、罪悪感は感じる。
運転手さんにお礼を言ってタクシーを降りると、大きな鳥居越しに、穏やかな海が見えた。
ここからの風景が、津波に街が飲み込まれていくシーンで有名な場所だと、前夜シオ君が言っていた。
その鳥居から、これまた急勾配の下り階段が、薮の中に続いている。
降りるのはいいが、帰りにこれを登るのか…
その日は、空気はわりと冷たく風が強かったが、日差しも強くて、ちょっと運動するとかなり汗ばむ陽気。
もう少し楽な下り道はないかと周辺をうろついたが、そもそも頂上から見えない門脇小学校が、右といっても何処にあるか分からず、あらぬ道を行って迷子になるのも困るし、山を降りた海側には、それこそ何もないのだから、助けを求めるにもタクシーなんか通るはずもない。
頂上には観光客が何人もいたが、その階段を降りようとしている人などいないのである。明らかに地元の人らしきおじさんが、草を刈っているだけなのだ。
ふっと諦めて引き返そうかと思った時、大きな案内図が目に入った。
思いっ切り「門脇小学校」と書いてある。それが私を奮起させた。
もう、行くしかないわ!
何をしにここまで来たのよッ!
と意を決して、急勾配の下り階段を降りていった。
1年半前に来た時には、妙な宅地みたいだったが、今は1メートルくらいの草がぼうぼう生えていて、遠くまでは見晴らせない。
階段を降り切って、とにかく右へ右へと歩いて行くと、運転手さんが話していたフェンスらしきが見えてきた。
そしてほどなく、屋上のパネルが目に入った
あったッ!
「すこやかに 育て心と体」
の文字。
うっすらと目に涙がにじんで来た。
11月2日(土) 学芸大学アピア40
Macky's House vol.10
「大震災世代の子供たちへ IN TOKYO 」
開場 17:30
開演 18:00
料金 前売2,000円 / 当日2,300円 +1drink
出演 佐藤賢治(いわき)
藤野恵美(郡山)
四畳半プリン(日立)
松浦健太(東京)
三ケ田圭三(いわき)
田中眞紀子(東京)