人の卵子でES細胞の作製に初めて成功！

女性から提供を受けた卵子に別の人の皮膚細胞の核を入れる「体細胞クローン技術」を使い、さまざまな組織に分化する胚性幹細胞（ＥＳ細胞）を作製するのに初めて成功したと、米オレゴン健康科学大の立花真仁研究員（３８）とシュフラート・ミタリポフ博士らのチームが１５日発表しました。

人のクローンＥＳ細胞と言えば、過去に韓国ソウル大の黄禹錫（ファン・ウソク）元教授が２００４年に作製成功を発表し、後に捏造だったことがバレタことがありました。当時は再生医療の切り札とみられていたのですが、０６～０７年に京都大の山中伸弥教授が体細胞だけを遺伝子操作する人工多能性幹細胞（ｉＰＳ細胞）を開発したことや、他の哺乳類より作製が格段に難しいことなどから研究が下火になっていました。

病気の人の体細胞を使えば、遺伝子が同じで移植時に拒絶反応が起きない治療用組織をつくることが可能となり、作製効率の向上や卵子提供が必要なことなどが課題としてあげられますが、立花氏は「ｉＰＳ細胞より遺伝子異常が少ない可能性もある。クローンＥＳ細胞とｉＰＳ細胞の両方の可能性を探ることで再生医療に役立つ」と話しています。

チームは学内の倫理委員会の審査を経て米国内で２３～３１歳の女性９人から有償で計１２６個の卵子提供を受けたものを、１２２個の卵子の核を除き別人の皮膚細胞の核を入れたところ、２１個が胚盤胞と呼ばれる段階に成長したそうです。さらに組織の一部を培養すると計６個がＥＳ細胞になったそうで、心臓の筋肉に分化させると脈動することも確認したそうです。成功した６個のうち４個は同一女性が提供した卵子で、ＥＳ細胞になりやすい遺伝的特徴がありそうだと話しています。

オレゴン健康科学大と言えば、０７年にサルのクローンＥＳ細胞作製に成功したところで知られており、立花氏は東北大の非常勤講師も兼務し、卵子の核を別の人の卵子に移し替えて遺伝病治療につなげる研究も手掛けていると言います。

人クローンES細胞とは皮膚や臓器に分化した体細胞の時間を巻き戻し、様々な組織に成長する細胞を作る再生医療の手法の一つです。核を除いた未授精の卵子に、別人の体細胞の核を入れて細胞を分裂させ、できた胚盤胞（クローン胚）の一部を培養して胚性幹細胞（ES細胞）作るのです。体細胞の持ち主と同じ遺伝子を持ち、組織を移植しても拒絶反応が起きないのですが、クローン胚を子宮に戻すとクローン人間に育つ可能性があります。しかしES細胞は人間に育たないのです。