あとだしなしよ

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エロス+虐殺

2007年02月02日 | 日本映画
エロス+虐殺 (ロングバージョン)
1970年、ATG
監督:吉田喜重
出演:岡田茉莉子、細川俊之
春三月 縊り残され 花に舞ふ ~ 大杉栄

岡田茉莉子の伊藤野枝、細川利之の大杉栄。1968年のフランス5月革命を引き金に世界中で市民運動が激しさを増した1970年に公開されている。明治政府(軍部)による左翼、アナキズムへの言論・思想弾圧の果てに、関東大震災時の戒厳令下、軍部による拷問の後、殺されたとされる。無関係の6歳の幼児も殺された。体はスマキにされ井戸に捨てられたらしい。殺害犯とされた甘粕正彦は社会的非難を浴びたが、3年で釈放された後、満州にて暗躍。満映の理事長をしたため映画関係者とも親しかったらく、内田吐夢は敗戦後の彼の自決を看取ったそう。明治政府は自由主義、共産思想も農民一揆も弾圧していた。
映画は大正時代と1969年を行き来する。現代(といっても37年前ですが…)編はエロで、20歳のデザイン学校に通う女性売春婦と青い理屈をコネクリ回す青年が主役。ハダカがいっぱい…大正編では主に大杉の女性関係が描かれる。自由恋愛を主張し、それぞれが経済的自立をしてとかなんだとか…やってることは旦那の妾道楽と変わらんように思えるが、そうとも言えない。。。昔の結婚は恋愛ではなく家と家とのものだったり、顔も知らないで嫁いだり、あのバカ大臣の言うように女は出産機械だったり、労働力だったのは間違いない…そうではなく、二人の関係は後のジョンとヨーコのようで、二人で思想家として文学者として活動し、現代から見ても理想の関係を築いたと言えるのかもしれない。しかし大杉は仲間からは無責任な女道楽とも取られてしまい、それゆえに仲間からは非難されていた。映画はほとんどがロケで撮影したと思われ、伊藤野枝が近代的な電車や新宿のターミナルに出現したりして、変な演出だった。印象的な構図や演出多し。低予算?の中、キャメラにはこだわりがあったように感じる。音楽はバイオリンの演奏に弦を引っ掻くような音で、大正デモクラシーの中に咲いた大正ロマンの中で不合理で一方的で利己的な暴力を表現。ロングバージョンだと3時間以上あるので、コアなファンの方でないなら、ノーマルバージョンでもOKだと思います…
明治時代も含めて戦前のこんな時代に生まれなくて本当によかったと、心の底から思います。
吹けよ、あれよ、風よ、あらしよ
どんな難儀な重荷を負わされようとも、
そのために自己を粗末に扱うような事はしない ~ 伊藤野枝


大杉栄
青空文庫:自叙伝の一節に大杉自身が書いた日陰茶屋事件がある(後半)