工作台の休日

模型のこと、乗り物のこと、ときどきほかのことも。

男たちの熱き戦い

2020年02月12日 | ときどき映画
 こんにちは。
 ブログを少々ご無沙汰しておりました。公私ともに忙しいのと、工作台の方も忙しくなっており、いずれこのブログでご紹介する作例も含めて作っている模型がありまして、今月初の記事となりました。
 先日、映画「フォードvsフェラーリ」を観に行ってきました。「パラサイト」の作品賞等受賞で話題になった今年のアカデミー賞ですが、本作も2部門で受賞しました。私が観に行ったのは1月下旬でしたが、平日の夜の回でかなり混みあっておりました。モータースポーツの映画ですと、何年か前に「RUSH プライドと友情」があり、あちらは観客の年齢層が比較的高めという印象でしたが、こちらは若い方も随分見かけました。
 この「フォードvsフェラーリ」ですが、1960年代にル・マン24時間レースでフォードとフェラーリが熾烈な争いを繰り広げた出来事をベースにしております。もちろん、実話に基づくフィクションですので史実と多少違うところはありますし、ネタバレになる話を書くのも野暮ですのでここでは触れませんが、フォードがフェラーリの買収交渉(これは実際にあった話です)を進めるものの、ご破算に終わった上にフェラーリのトップ、エンツォ・フェラーリから屈辱的な言葉まで浴びせられ「負けるもんか、絶対にル・マンで絶対王者となっているフェラーリを破って見せる」とばかりにマシンを開発し、レースに挑んで・・・というストーリーが展開していきます。史実とは違う、と書きましたが、それでも冒頭にボンデュラント、ランス=リベントロウ、ギンサーといった懐かしいドライバーの名前も出てきて、私などは一気に引き込まれました。
 本作ではフォード(マーケティング戦略を担当するリー・アイアコッカ)の命を受けてマシン開発とレース活動を行ったキャロル・シェルビー(マット・デイモン)と、シェルビーの下でマシンをテストし、作り上げていくイギリス人ドライバー、ケン・マイルズ(クリスチャン・ベイル)の二人を軸に物語が展開します。キャロル・シェルビーはモータースポーツやスポーツカーに興味のある方にとっては有名ですが、ケン・マイルズはよほどレースの歴史に興味のある人でないと分からないかと思います。そしてこのマイルズという人物、映画ではとても真っ直ぐで、純粋で、歯に衣着せぬところもあり、でも自分の仕事には人一倍誇りを持っている魅力ある男として描かれています。粗にして野だが卑ではない、というキャラクターですが、それゆえにフォード本社にとっては少々面倒くさい存在であるわけで、当然彼を嫌う人物もいるわけです。大きな組織にとってはこういう人は「面倒くさいベテラン」なわけで、私も本業の仕事に関しては多少そういう性格なものですから、こういう人は嫌われるよな、と思いながら観ておりました。「RUSH」はドライバー二人のライバル関係と友情を主に描いていましたが、こちらは人間対人間というより、人間対組織、組織対組織の側面が描かれています。
 こうして、フォードはル・マンに向けて「フォードGT40」というマシンを開発するもののフェラーリに跳ね返され、ついに1966年のル・マンにGT40、さらにはその発展型のGTⅡを持ち込み・・・ということでここから先は映画館でのお楽しみ、といたしましょう。GT40はいかにもアメリカ車らしい格好いいスタイルですし、フェラーリのP330は流麗なスタイルの実に美しいマシンです。この二つの車もまた、本作のもう一つの主役という感があります。なお、フォードGT40については、映画では「イギリスからマシンが届いた」のセリフで片付けられていましたが、実際にはイギリスのローラ社がシェルビーと協力して車体を作っています。
 私もフォードのル・マン挑戦に関してはものの本で「フォードは物量作戦を展開して・・・」ということしか知りませんでしたので、知っている話も、知らない話も含めて楽しめました。登場人物はケン・マイルズ夫人を除けばほとんど男という、実に男臭い映画ではありますが、もちろん女性が観てもドラマとして面白いと思います。サーキットでレースを観た後の満足感や心地よい疲労感と同じ気分を味わいながら映画館を後にすることができました。
 
 映画の中では、エンツォ・フェラーリがファクトリーの中でテーブルを出して食事をしているシーンが出てきます。「RUSH」でもテストコースでマシンが走り抜ける傍で新聞を読む場面がありました。神秘に満ちたエンツォの姿を描いているということなのでしょうが、エンツォ・フェラーリ本人が観たら「俺、あんなことしないよ。落ち着いてご飯食べたいし、新聞も静かなところで読みたい」と言うかもしれません。これがホンダなら白い作業服の本田宗一郎がスパナで殴ったり、工場の床にチョークで図面を描き始めたりするのでしょうか!?

 余談ですがこの映画のパンフレットにはキャストやスタッフが「初めて自分でハンドルを握った車」を聞かれて答えており、これがなかなか面白かったです。マット・デイモンは兄から買った1986年型のホンダ・アコードで大好きだったと言っています。80年代以降、日本車は(嫌われるくらい)世界を席巻していたわけですが、アメリカ勢も黙っていませんでした。例えばクライスラーは企業努力の甲斐もあって80年代に業績を回復させています。そのクライスラーを率いたのが、フォードを追われたリー・アイアコッカだったことは、ある一定の世代以上の方ならご存知でしょう。

 この映画を観た前後で、1966年のル・マンやら、登場人物たちのことを調べておりました。ここでは書ききれなかったので、稿をあらためて、1966年のル・マンとその周辺に関する話も(映画のネタバレにならない程度に)したいと思います。
 

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