★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇ハンス・ホッターのシューマン:歌曲集「詩人の恋」/シューベルト:歌曲選集

2021-12-02 09:39:20 | 歌曲(男声)


シューマン:歌曲集「詩人の恋」

シューベルト:歌曲選集

        泉によせて
        漁夫の恋の喜び
        さすらい人
        ドナウ河にて
        さすらい人が月によせて
        老人の歌
        タルタスルの群れ

バリトン:ハンス・ホッター

ピアノ:ハンス・アルトマン

録音:バイエルン放送局制作の録音テープより

LP:日本コロムビア DXM-7-OP

 ハンス・ホッター(1909年―2003年)は、ドイツの著名なバス・バリトン歌手であった。バリトンには、ハイ・バリトンとバス・バリトンがあり、バス・バリトンは、バリトンとバスの中間に位置する。ハンス・ホッターは、ミュンヘン音楽大学で哲学と音楽学を専攻する一方、音楽アカデミーで、指揮者を目指して、ピアノ、オルガン、対位法など音楽学全般を学んだ。最終的には歌手の道をを目指すこととなり、1930年トロッパウで「魔笛」でオペラデビューを果たすことになった。その後、プラハ国立歌劇場、ハンブルク国立歌劇場、バイエルン国立歌劇場などで活躍する。1947年ロンドンのコヴェントガーデン王立歌劇場、1950年メトロポリタン歌劇場においてもデビュー。1952年バイロイト音楽祭に出演し、以後15年にわたって主要なワーグナー作品に出演し、当時、偉大なワーグナー歌手として認められていた。その低音を生かした力強い男性的な歌声は、ワーグナーの楽劇には打って付けの歌手として高い評価を受けていたのである。一方では、シューベルトやシューマン、ヴォルフなどのリート歌手として、日本においもリサイタルを開いていた。今回のLPレコードは、そんなホッターがシューマンの「詩人の恋」を録音した珍しい盤。自身のバス・バリトンという声域から、シューベルトの「冬の旅」や「白鳥の歌」ならともかく、シューベルトの「美しき水車小屋の娘」やシューマンの「詩人の恋」は、リサイタルでは絶対歌わなかったようで、このLPレコードで「詩人の恋」を聴けることは、ある意味では奇跡的な出来事といってもオーバーでないかもしれない。聴いてみると「詩人の恋」は、テノールが歌う“青春歌”とは大分趣が異なり、年老いた男性が、若い頃を回想して歌っているような感じがするのは致し方ないといったところか。しかし、その歌唱力はさすが大歌手という以外になく、その重厚さには圧倒される。一方、シューベルトの方は、「シューベルトの歌曲はこう歌うのが正統」とでも言っているようで、静寂さと奥深さがひしひしとリスナーに伝わり、シューベルトの歌の世界の素晴らしさを堪能することができる。この録音が行われたのは1950年代であり、ハンス・ホッターが40歳台と、肉体的にも精神的にも最も充実した時代であった。一方、ピアノのハンス・アルトマンは、当時リート歌手の名伴奏者として絶大な信頼を得ており、第二次世界大戦後は主としてミュンヘンで活躍した。ここでも、名伴奏者ぶりを如何なく発揮している。(LPC)


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