サン=サーンス:ヴァイオリン協奏曲第3番
ショーソン:「詩曲」
ラヴェル:ツィガーヌ
ヴァイオリン:ジノ・フランチェスカッティ
指揮:ディミトリー・ミトロプーロス
指揮:レナード・バーンシュタイン
管弦楽:ニューヨーク・フィルハーモニック
LP:CBS・ソニーレコード SOCL 77
ヴァイオリンのジノ・フランチェスカッティ(1902年―1991年)は、フランス、マルセイユ出身の名ヴァイオリニスト。1924年にパガニーニのヴァイオリン協奏曲第一番を弾いて、パリ・デビューを飾る。1939年に渡米しニューヨーク・フィルと共演した後は、ニューヨークに定住することとなった。パガニーニやサン=サーンスなどラテン系の演奏を得意とし、今回のサン=サーンスのヴァイオリン協奏曲第3番のLPレコードは、当時名盤(今回聴き直してみたが、ほんとに凄い名演だ)として名高かったもの。演奏内容は、燦然とした輝かしさに溢れたものであり、ジノ・フランチェスカッティは、いわゆる巨匠風の演奏を行うヴィルティオーゾと呼ばれたヴァイオリニストの一人であった。日本のクラシック音楽界は、今日までドイツ・オーストリア楽派を中心に展開される傾向にあるが、馴染みの比較的薄いラテン系あるいはフランス音楽界の重鎮としてのジノ・フランチェスカッティの存在意義は、当時非常に重かったことを思い出す。このLPレコードのジノ・フランチェスカッティの演奏を聴くと、胸が高鳴るといおうか、一点の曇りもない青空を眺めているようでもあり、何の衒いもないその演奏スタイルを聴くと、かつて如何に多くのファンを引き付けたがよく理解できる。サン=サーンスのヴァイオリン協奏曲第3番は、サン=サーンス最後のヴァイオリン協奏曲でロマン派の重要なヴァイオリン協奏的作品の一つに数えられるほどの名曲。完成は1880年で、初演者のパブロ・デ・サラサーテに献呈された。曲想は、古典主義の協奏曲と言える作品であるが、難技巧の部分も含まれており、これが結果的に華やかな効果を生み出し、官能的と言ってもいいほどの美しい旋律が随所に盛り込まれている。ショーソンの「詩曲」は、ゆっくたりとした静かなメロディーが印象的な最もショーソンらしい曲。瞑想曲と名付けてもいいほどの細やかな表情の変化にリスナーの多くが引き付けられる。ラヴェルのツィガーヌは、自身「ハンガリー狂詩曲風に書かれたヴァイオリン独奏曲」と語っている通り、ジプシー音楽のチャルダッシュの形式をとっている。早い部分とゆったりとした部分は、ジプシー音楽そのものだが、ラヴェルはそれを芸術的に高めたところにこの曲の真価がある。これらの3曲を弾くジノ・フランチェスカッティのヴァイオリン演奏は、現代風の感覚に満ち溢れ、知的で、優雅の中にも力強さがその根底にあるため、単に感情に溺れることもなく、リスナーに訴える力は非常に強いものがある。(LPC)