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★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇ヨゼフ・カイルベルト指揮ベルリン・フィルのブラームス:交響曲第2番/大学祝典序曲

2025-05-19 09:46:24 | 交響曲(ブラームス)

ブラームス:交響曲第2番
      大学祝典序曲

指揮:ヨゼフ・カイルベルト

管弦楽:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(交響曲第2番)
    バンベルク交響楽団(大学祝典序曲)

発売:1978年

LP:キングレコード GT 9174
 
 このLPレコードは、名指揮者ヨゼフ・カイルベルト(1908年―1968年)がベルリン・フィルを指揮したブラームス:交響曲第2番とバンベルク交響楽団を指揮したブラームス:大学祝典序曲の2曲が収められている。このLPレコードのライナーノートに音楽学者の渡辺 護氏は次のように書いている。「1968年の夏、筆者はイタリアからミュンヘンに旅行をした。7月22日ミュンヘンの宿に着いて、新聞を開いて見ると、そこにカイルベルトの突然の死が大きく報ぜられていたのである。『トリスタンとイゾルデ』や『サロメ』を見ることを楽しみに来たのだが、それも不可能になった。カイルベルトは7月20日、国立歌劇場で『トリスタン』を指揮している最中、突然大きな音を立てて倒れ、そのまま他界したのである。ベーム、カラヤンと共にドイツ指揮界の最巨峰であったカイルベルトはその時まだ60歳。今後の活躍がまだまだ大きく期待できる時であった。彼は極めてドイツ的な指揮者で、表面的な美しさや情緒におぼれることなく、確固たる構築性やしっかりしたリズム感に優れていた。レパートリーは広くないが、ドイツ音楽にかけては、他の追随を許さない」。ブラームスの交響曲は、クラシック音楽に中でも最も多くの指揮者が録音している曲であろう。そんな数多くあるブラームス:交響曲第2番の録音の中でも、この録音は、特筆ものの録音であり、私としては、これまでのあらゆる録音の中で、ベスト1かベスト2の録音に挙げたいほど。ブラームス:交響曲第2番は、他の3曲とは異なり、かなりロマンの香りが漂う作品だ。つまり、やたらに力ずくで指揮してもダメだし、逆に平穏に指揮しても、ただつまらなく聴こえてしまう。ある意味で、指揮者の力量がはっきりと表れる交響曲である。ここでのカイルベルトの指揮は、流れるような自在な表現力のある指揮ぶりを存分に発揮する。自然と湧き起ってくるようなオーケストラの響きは、最後までリスナーを引きつけて離さない。また、ベルリン・フィルの奏でる音は、何という味わいの深さだろう。そんなベルリン・フィルの音をカイルベルトは自在に操り、リズム感たっぷりに表現する。この演奏を聴いていると、思わずこんこんと湧き出す泉を思い出す。何もかもが、流れるように、自然なたたずまいの中にある。それに加え、遠近法を駆使したような構成美が加わる。ブラームスの“田園交響曲”と言われる所以がよく分かる演奏だ。この録音はCDでも入手できるようなので、機会があれば是非一度聴いてみてほしい。(LPC)

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◇クラシック音楽LP◇ピエール・モントゥー指揮ウィーン・フィルのブラームス:交響曲第2番

2025-02-24 09:46:35 | 交響曲(ブラームス)


ブラームス:交響曲第2番

指揮:ピエール・モントゥー

管弦楽:ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

発売:1976年

LP:キングレコード GT 9068
  
 このLPレコードは、巨匠ピエール・モントゥー(1875年―1964年)が、ブラームスを指揮した録音であるところに価値がある。というのは、モントゥーはフランス人でありながら、ブラームスを敬愛し、ブラームスが晩年の頃に本人の前で演奏をしたことを終生誇りにしていたというほど。つまり生粋のフランス人でありながら、ベートーヴェンやブラームスなどのドイツ・オーストリア系作曲家の作品も得意としていたのだ。そんな指揮者のピエール・モントゥーの経歴を見てみよう。フランス、パリ出身。パリ音楽院でヴァイオリンを学び、同時に指揮活動も行う。1906年にコロンヌ管弦楽団を指揮してデビューを飾る。1911年からはディアギレフのロシア・バレエ団で指揮を担当。この時、ストラヴィンスキーの「春の祭典」「ペトルーシュカ」、ラヴェルの「ダフニスとクロエ」、ドビュッシーの「遊戯」など、20世紀の名作バレエ音楽の初演を行っている。ピエール・モントゥーは、ロシア・バレエ団指揮者(1911年~1914年)を皮切りに、メトロポリタン歌劇場指揮者(1917年~1919年)、パリ交響楽団(1929年~1935年)の創立時の常任指揮者を務める。そしてボストン交響楽団音楽監督(1919年~1924年)を歴任後、1935年からはサンフランシスコ交響楽団の常任指揮者となり、同楽団の黄金時代を築く。1961年にはロンドン交響楽団の首席指揮者となり、死去するまでその地位にあった。来日時は、88歳と高齢であったが、そのときの演奏内容について、石田一志氏はこのLPレコードのライナーノートで「流麗で生気にとんだ音楽つくりは、年齢を感じさせるものではないということが、当時のもっぱらの評判であった」と紹介し、さらに「それはレコードで聴いても同様である。モントゥーの演奏は、スコアに徹底した忠実さをもってのぞむことによって、常にフレッシュであり啓示的ですらある。晩年にはとくにベートーヴェンやブラームスに名演を聴かせることが多くなった」と書いている。ブラームス:交響曲第2番がブラームスの「田園交響曲」と呼ばれるに相応しく、このLPレコードでのモントゥー指揮ウィーン・フィルによる演奏は、ロマンの香りが馥郁と漂う田園の広がりを連想させる。少しも奇を衒うことがない。しかし、その底流には、常に躍動感が漲っているので、聴いたあとの充実感は限りなく大きいのだ。このLPレコードを今聴くと、やはりピエール・モントゥーは、不世出の大指揮者であったのだなと実感させられる。(LPC)

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◇クラシック音楽LP◇ベイヌム指揮アムステルダム・コンセルトヘボウのブラームス:交響曲第2番/第3番

2024-12-05 09:50:23 | 交響曲(ブラームス)


ブラームス:交響曲第2番/第3番

指揮:エドゥアルト・ファン・ベイヌム

管弦楽:アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団

録音:1954年5月17日~19日(第2番)/1956年9月24日~25日(第3番)、アムステルダム・コンセルトヘボウ

発売:1975年

LP:日本フォノグラム(フィリップスレコード) PC‐1583
 
 このLPレコードは、巨匠エドゥアルト・ファン・ベイヌム(1901年―1959年)が、アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団を指揮し、ブラームス:交響曲第2番/第3番を録音したもの。ブラームスは、交響曲第1番の作曲に20年もの歳月を使ったのに対し、交響曲第2番の作曲は、僅か4ヶ月という短期間で書き上げてしまった。これは、第1番の評判が良く、大いに自身を深めたことによると思われる。作曲した場所は、オーストリアのアルプス山麓のウェルター湖畔にある寒村ペルチャッハであった。ブラームスは、この地を甚く気に入ったようで、そこでの楽しい生活で得た霊感と美しい自然から受けた感動を基に、いわば即興的に書き上げたのが交響曲第2番である。この交響曲は、よく“ブラームスの田園交響曲”と呼ばれる。これは、ベートーヴェンの“田園交響曲”から名付けられたもの。一方、交響曲第3番も、避暑地(ウィスバーデン)で6ヶ月という短期間で書き上げられた。やはり、これもブラームスの当時の生活状態が甚だ順調であったからだろうと推測できる。この交響曲第3番は、よく“ブラームスの英雄交響曲”と呼ばれる。これはベートーヴェンの“英雄交響曲”になぞらえたもの。このLPレコードで指揮をしているエドゥアルト・ファン・ベイヌムは、オランダ出身の名指揮者。1938年からはメンゲルベルクとともにアムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団の首席指揮者に就任したが、メンゲルベルクがナチスへの協力でスイスに追放されると、ベイヌムは音楽監督兼終身指揮者に就任した。このほかにロンドン・フィルの首席指揮者、ロサンゼルス・フィルの終身指揮者としても活躍した。しかし、ブラームスの交響曲第1番のリハーサル中に心臓発作で倒れ、急逝した。57歳という若さであった。その指揮ぶりはあくまで正統派であり、力強さと構成力の雄大さでは、一際抜きん出た存在であった。特にベートーヴェンやブラームスなどの指揮では、他の追随を許さないものがあった。このLPレコードでも、その本領を遺憾なく発揮しており、真正面から曲に向かい、曖昧さは些かもなく、実に力強く、奥行きの限りなく深い名演を聴かせる。今は、ベイヌムのような正統派の指揮者は少なくなってしまった。残念なことではある。それだけにこの録音は一層貴重なものに思えてくる。(LPC)

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◇クラシック音楽LP◇ヨゼフ・カイルベルト指揮ハンブルグ国立フィルハーモニー管弦楽団のブラームス:交響曲第4番

2023-12-11 09:45:31 | 交響曲(ブラームス)

ブラームス:交響曲第4番

指揮:ヨゼフ・カイルベルト

管弦楽:ハンブルグ国立フィルハーモニー管弦楽団

発売:1978年

LP:キングレコード GT 9176

 ヨゼフ・カイルベルト(1908年―1968年)は、西ドイツの名指揮者。最晩年の1965年と1966年、1968年に来日して、NHK交響楽団を客演したが、この時の録音が遺されており、CDで今でもその優れた指揮ぶりを聴くことができる。カイルベルトは、1940年、プラハのドイツ・フィルハーモニー管弦楽団(バンベルク交響楽団の前身)の指揮者に就任した後、第二次世界大戦の終戦まで、ドレスデン・シュターツカペレの首席指揮者を務めた。さらに1949年にバンベルク交響楽団の首席指揮者に就任し、亡くなるまでその任にあった。また、1959年よりバイエルン国立歌劇場の音楽総監督に任命されたが、そのバイエルン国立歌劇場において「トリスタンとイゾルデ」を指揮している最中、心臓発作を起こして急死したのだ。その死の時の様子を菅野浩和氏は、このLPレコードのライナーノートに「それは、1968年6月2日、ワーグナーの『トリスタンとイゾルデ』を振りながら、崩れるように倒れ、間もなく息をひきとったのである。・・・主役のビルギット・ニルソン等の悲泣の中に、とうてい代理指揮者で先を続けるなどという雰囲気のものではなく・・・」と記している。このLPレコードは、そのヨゼフ・カイルベルトがハンブルグ国立フィルハーモニー管弦楽団を指揮したブラームス:交響曲第4番である。第1楽章の出だしからして、その柔らかい演奏に心が奪われてしまう。ヨゼフ・カイルベルトの指揮ぶりは少しも奇を衒ったところはない。あくまで自然の流れに沿った演奏内容であり、その真摯な演奏態度は敬服するものがある。これだけだと、ただ単に、こじんまりと演奏しているのに過ぎないのではないか、と思われるかもしれないが、このLPレコードでもそうだが、実にコクのある、深い味わいに満ちた音楽を聴かせてくれるのだ。私はこのLPレコードを聴き終わった後、「こんなにも美しくも深い慈愛に満ちたブラームス:交響曲第4番をこれまで聴いたことがない」と思ったほどだ。菅野浩和氏も「カイルベルトは、私が全面的に心酔していた指揮者だった」とこのLPレコードのライナーノートを書き記している。来日時にN響を指揮したブラームス:交響曲第4番のライヴ盤が遺されているので、実際にヨゼフ・カイルベルトの指揮する音楽を聴いて自分の耳で確かめてもらいたい。こんなにも素晴らしい指揮者が過去にいたのだということが実感できると思う。(LPC)

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◇クラシック音楽LP◇ブルーノー・ワルター指揮コロンビア交響楽団のブラームス:交響曲第4番/悲劇的序曲

2022-05-16 09:45:01 | 交響曲(ブラームス)


ブラームス:交響曲第4番
      悲劇的序曲

指揮:ブルーノー・ワルター

管弦楽:コロンビア交響楽団

録音:1959年2月2、4、6、9、12日(ブラームス:交響曲第4番)
   1960年1月23日(ブラームス:悲劇的序曲)

発売:1979年

LP:CBSソニー 23AC 553

 コロンビア交響楽団とは、名指揮者ブルーノー・ワルターが引退したことに対して、是非ともステレオ録音を残してほしいという要望に応えて、臨時に結成されたオーケストラの名前である。このような例は、過去に例がなく、如何にワルターが当時愛された指揮者であったかを裏付けるものである。その一連のワルター指揮コロンビア交響楽団の録音の中でも、特筆されのが今回のLPレコードである。ブラームス:交響曲第4番の録音は、実にゆっくりとしたテンポで演奏される。何かワルターが自らの心の奥にある思いを吐露したような深遠さがある。この歴史的名録音を聴いていると、ワルターがこれまで自分が辿ってきた指揮者人生を振り返えり、そして最後に辿りついた結論がそこにあるような、誠に含蓄に富んだ演奏内容になっている。こう書くと何か単に後ろ向きの演奏内容に思われるが、ワルターの指揮は曲の持つ無限の可能性をオーケストラから引き出そうとし、その結果、一段と高い精神性を持った演奏内容となっている。このLPレコードのライナーノートで門馬直美氏は「ワルターの音楽の世界 つねに微笑を忘れず」というタイトルの文章を寄せているが、同氏はその中でワルターの演奏には「柔和な微笑の感じがいつも秘められている」と書いている。文字通り、このLPレコードでワルターは、“柔和な微笑”の指揮ぶりを、我々リスナーに存分に聴かせてくれる。ブルーノ・ワルター(1876年―1962年)は、ドイツ出身の20世紀を代表する指揮者の一人。ベルリンのシュテルン音楽院を卒業後、最初はピアニストとしてデビューしたが、その後、指揮者に転向。1896年ハンブルク歌劇場で、当時音楽監督の地位にあったグスタフ・マーラーに認められる。その後マーラーとともにウィーンへ転任。ウィーン宮廷歌劇場(ウィーン国立歌劇場)楽長、ミュンヘン宮廷歌劇場(バイエルン国立歌劇場)音楽監督、ベルリン市立歌劇場(ベルリン・ドイツ・オペラ)音楽監督、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団楽長などを歴任。第二次世界大戦後はヨーロッパの楽壇に復帰すると同時に、ニューヨーク・フィルハーモニックの音楽顧問を務めるなど、欧米で活躍した。1960年に引退したが、CBSレコードが、ワルターの演奏をステレオで収録するために、ロスアンジェルス付近の音楽家によるコロンビア交響楽団を特別に結成し、一連の録音が行われた。ワルターは、一度も日本を訪れることなく世を去ったが、日本人が最も敬愛する指揮者であったことは間違いない。(LPC)

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