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★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇セラフィン指揮ローマ国立歌劇場管弦楽団とロス・アンヘルスらのヴェルディ:歌劇「椿姫」ハイライト

2025-01-06 09:56:36 | オペラ


ヴェルディ:歌劇「椿姫」ハイライト
        
        前奏曲
        乾杯の歌
        想い出の日から
        ああ、そはかの人か~花から花へ
        燃える心を
        天使のように清らかな娘が
        お命じのとおり~死ぬほかに
        プロヴァンスの海と陸
        闘牛士の合唱「マドリードから来た闘牛士」
        過ぎし日よさらば
        パリを離れて
        もし、清らかな娘さんが

指揮:トゥリオ・セラフィン

管弦楽:ローマ国立歌劇場管弦楽団

独唱:ヴィオレッタ=ヴィクトリア・デ・ロス・アンヘルス(ソプラノ)
   アルフレード=カルロ・デル・モンテ(テノール)
   ジェルモン=マリオ・セレーニ(バリトン)
   ガストーネ子爵=セルジオ・テデスコ(テノール)

合唱:ローマ国立歌劇場合唱団

LP:東芝EMI EAC‐30069
 
 ヴェルディの初期のオペラの傑作「椿姫」(オペラ本来の題名は「ラ・トラヴィアータ(道を踏みはずした女)」であるという)の物語の原作は、フランスの小説家のアレクサンドル・デュマ。アレクサンドル・デュマと言っても、「モンテ・クリスト伯」などの名作で知られる、あの文豪アレクサンドル・デュマのことではなく、同名の息子のことだそうだ。1848年に発表されたこの小説「椿の花をつけた女」を読んだヴェルディは、オペラ化することを思い立ち、3ヶ月という短時間で完成させ、1853年3月に初演された。初演当時の評判は芳しくなかったようであるが、その後、徐々に評価が高まり、現在では最も人気のあるオペラの一つとして世界中で愛好されている。このLPレコードのライナーノートに大木正純氏は「厳しい目で見れば、ドラマとしての迫力や構成の密度の点で、また音楽的充実度の点でも、このオペラがヴェルディの他の名作を凌駕しているとは言いがたい。にもかかわらず、こうした抜群の人気を保っているは、この感傷的なドラマと、それにふさわしい甘美な音楽、華やかな舞台のたまものと言っていいだろう」と書いている。正にこの文章に尽きている。一旦、「椿姫」のオペラの世界に入り込めば、多くのリスナーは「もう理屈などはどうでもいい」という思いに浸るほど魅力に富んだオペラなのだ。このLPレコードでヴィオレッタを歌っているヴィクトリア・デ・ロス・アンヘルス(1923年―2005年)は、スペイン出身の名ソプラノ歌手。1945年、リセオ歌劇場でオペラ歌手としてデビューし、1947年の「ジュネーヴ国際音楽コンクール」で優勝し、以後世界的な脚光を浴びる。指揮のトゥリオ・セラフィン(1878年―1968年)は、イタリア出身の指揮者。1909年、トスカニーニの後任として、スカラ座の音楽監督に就任。1924年~1934年、米国メトロポリタン歌劇場の指揮者を務めた。1934年に帰国し、ローマ歌劇場の音楽監督に就任、同歌劇場の黄金時代を築く。この経歴から分かる通り、セラフィンは当時、イタリア・オペラの最高の指揮者として高く評価されていた。LPこのレコードでのヴィクトリア・デ・ロス・アンヘルスは、実に気品のある歌声を聴かせており、ヴィオレッタの一生をものの見事に表現し尽くしている。また、トゥリオ・セラフィンの指揮は、このオペラの物語を劇的に盛り上げており、その見事な棒捌きにリスナーは、ただただイタリア・オペラの魅力の虜になるばかりだ。(LPC)

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◇クラシック音楽LP◇ベスト・オブ・ジーリ イタリア歌劇名アリア集

2023-01-26 09:44:24 | オペラ

 

~ベスト・オブ・ジーリ イタリア歌劇名アリア集~

チレア:歌劇「アルルの女」第2幕より「ありふれた話(フェデリーコの嘆き)」
マスネー:歌劇「マノン」第3幕より「消えされ、やさしいおもかげよ」
マスカーニ:歌劇「ロドレッタ」第3幕より「ああ、あの人を再び小屋の中に」
ヴェルディ:歌劇「トロヴァトーレ」第3幕より「見よ、恐ろしい火を」
ドニゼッティ:歌劇「愛の妙薬」第1幕より「なんと可愛い人だ」
プッチーニ:歌劇「マノン・レスコー」第2幕より「ああ、マノン、またしてもそむくのか」
ジョルダーノ:歌劇「アンドレア・シェニエ」第3幕より「わたしは兵士だった」
レオンカヴァレロ:歌劇「道化師」第2幕より「もう道化師じゃない」
プッチーニ:歌劇「トスカ」第3幕より「星も光りぬ」
マスカーニ:歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」より 
          母との別れ「おかあさん、あの酒は強いね」
       歌劇「イザボオ」第1幕より ファルコのカンツォーネ「鳩ではなく」
       歌劇「イザボオ」第2幕より「活発な姫は現れよう」

テノール:ベニアミーノ・ジーリ

メゾ・ソプラノ:ジュリエッタ・シミオナート(「カヴァレリア・ルスティカーナ」)

発売:1970年

LP:東芝音楽工業 AB・8124

 ベニアミーノ・ジーリ(1890年―1957年)は、イタリアのレカナティ出身で、当時一世を風靡した名テノール歌手。ジーリはイタリアのアンコーナ近郊のレカナーティで、オペラファンで靴屋の父のもとに生まれた。ローマのサンタ・チェチーリア音楽院に学ぶ。1914年パルマで行われた国際声楽コンクールで1等賞に輝く。24歳の時、ポンキエルリの歌劇「ジョコンダ」のエンツィオの役で初舞台を踏み、以後次第にその名を世界に知られるようになって行く。1920年にはアメリカに渡り、メトロポリタン歌劇場で米国デビューを果たし、その後は世界的な名テナーとして活躍。ジーリは、1921年オペラ史上最も有名なテノール歌手の一人であるエンリコ・カルーソー(1873年-1921年)の突然の死のあとの空白を生める歌手となり、すぐに世界的に最も有名なイタリア人テノール歌手となった。このLPレコードは、そんなジーリのオペラアリア集であり、その柔らかく、よく通る歌声を堪能することができ、古きオペラファンには何とも懐かしい、またとない贈り物となっている。「ありふれた話(フェデリーコの嘆き)」は、婚礼の夜、花嫁の不実を知ったフェデリーコが裏切られた悲しみを歌う悲痛なアリア。「消えされ、やさしいおもかげよ」は、アベ・プレヴォーの名作「マノン・レスコー」を素材にオペラ化した作品で、デ・グリューのアリア。「ああ、あの人を再び小屋の中に」は、ヴィダの童話「二つの小さな木靴」に基づいた3幕物のオペラの第3幕で美しい恋の回想と烈しい胸のたぎりを歌う。「見よ、恐ろしい火を」は、吟遊詩人マンリコの激情的なカバレッタ。「なんと可愛い人だ」は、若い農夫ネモリーノが歌う美しいカヴァティーナ。「ああ、マノン、またしてもそむくのか」は、心をこめたアリアで、聴くものの心を打たずにおかない。「わたしは兵士だった」は、激しい怒りを美しい旋律のせて歌われる。「もう道化師じゃない」は、芝居と現実のへだてを忘れて叫ぶ激しいアリア。「星も光りぬ」は、死刑を前にして歌う歌う詩人カヴァラドッシの劇的なアリア。「おかあさん、あの酒は強いね」は、酒に酔った真似をして、それとなく別れを告げる悲痛な歌。「鳩ではなく」は、鷹を呼び、腕にとまらせながら姫の問いに答える場面で歌われる。「活発な姫は現れよう」は、イザボオが馬に乗って人気のない街路を通り過ぎるのをみつめ、その通路に花をなげつつ歌う。これらのアリアを歌うジーリの歌声は、かくも麗しくも、輝かしく響くのであろうか。典型的な甘美なベル・カントのジーリが歌うこのLPレコードのアリアを聴いていると、誰もが熱烈なオペラファンになってしまいそうだし、何よりも心の底から、“クラシック音楽っていいなあ”と感じさせてくれるのである。(LPC)

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◇クラシック音楽LP◇イタリアオペラの名指揮者トゥリオ・セラフィン指揮ローマ歌劇場管弦楽団のロッシーニ序曲集

2022-07-14 09:39:57 | オペラ


~ロッシーニ序曲集~

歌劇「どろぼうかささぎ」序曲
歌劇「絹のはしご」序曲
歌劇「ウィリアム・テル」序曲
歌劇「セビリャの理髪師」序曲
歌劇「セビリャの理髪師」から「嵐の音楽」
歌劇「セミラーミデ」序曲

指揮:トゥリオ・セラフィン

管弦楽:ローマ歌劇場管弦楽団

録音:1963年10月4日~7日、ローマ、RCAスタジオ

LP:ポリドール SE 7810

 ロッシーニ(1792年―1868年)は、イタリアの作曲家であるが、ウィーンに滞在したときなどは、かのベートーヴェンを上回る人気を得ていたという。私はロッシーニの名を聞くと、もっと年代が後の作曲家というイメージがあり、ベートーヴェンの時代に活躍したと聞いてもどうもぴんとこない。その理由の一つは、今回のLPレコードでも聴ける、いかにもイタリア人らしく明るく陽気な人気歌劇を数多く作曲したことと無縁ではない。つまり、今日の日常生活の状況とあまり変わらない存在としてのロッシーニ像がそこにはあり、距離感がぐっと近く感じられるからである。生涯に40数曲のオペラを書いたというが、1830年以降、神経性の疾患を患い作曲活動から遠ざかることになり、晩年に「スターバト・マーテル」を書いたのみに留まった。ということは、今遺されているロッシーニの作品は、若い時代に作曲したものがほとんどで、ベートーヴェンみたいに中期から後期にかけての傑作の森みたいな作品群が存在しないのである。もし、ロッシーニが中期から後期にかけて作曲活動を活発に行っていたならば、作品から受ける印象は今とは大分違っていたであろう。このLPレコードで指揮をしているトゥリオ・セラフィン(1878年―1968年)は、スカラ座、ローマ国立歌劇場の音楽監督を務め、メトロポリタン歌劇場でも活躍したイタリア・オペラの名指揮者。このLPレコードでの何とも粋な指揮ぶりを聴くと、私などは、今でも“心踊り、血騒ぐ”といった塩梅で、自然と興奮状態になってしまう。かつての日本は、こんな陽気な曲がしょっちゅうラジオから流れていた、今考えると何ともいい時代だった。歌劇「どろぼうかささぎ」序曲は、長い序奏を持つソナタ形式で書かれた曲。歌劇「絹のはしご」序曲は、「ウィリアムテル」や「セビリャの理髪師」序曲ほど有名ではないが、各楽想の魅力と上品な味わいが一際際立つ。歌劇「ウィリアム・テル」は、スイスの独立運動を扱った物語で当時の人々の血を沸き立たせた。序曲は、「夜明け」「嵐」「牧歌」「スイス独立軍の行進」の4部構成の描写風音楽。歌劇「セビリャの理髪師」は、今日でもしばしば上演される。序曲は、「イギリス女王、エリザベッタ」という歌劇からの転用。歌劇「セビリャの理髪師」から「嵐の音楽」は、第2幕、第2場で奏される嵐の場面の音楽。歌劇「セミラーミデ」序曲は、ロッシーニの序曲中、最も長大で力強さが感じられる曲である。(LPC)

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◇クラシック音楽LP◇世界的名ソプラノ 林 康子のオペラアリア集

2022-01-27 09:59:33 | オペラ


モーツァルト:歌劇「ドン・ジョバンニ」第1幕より さあ、あなたもお分かりでしょう
       歌劇「ドン・ジョバンニ」第2幕より いいえ違います、私はあなたのもの
ロッシーニ:歌劇「ウィリアム・テル」第2幕より 暗い森
      歌劇「セミラーミデ」第1幕より 麗しい光が
ドニゼッティ:歌劇「愛の妙薬」第2幕より 受けとって、私はあなたのために
プッチーニ:歌劇「トゥーランドット」第3幕より 氷のような姫君の心も
      歌劇「蝶々夫人」第2幕より ある晴れた日に
      歌劇「蝶々夫人」第2幕より かわいい坊や
ヴェルディ:歌劇「椿姫」第1幕より ああ、そはかの人か~花から花へ~

ソプラノ:林 康子

テノール:田口興輔(「ドン・ジョバンニ」「椿姫」)

指揮:ニコラ・ルッチ

管弦楽:東京交響楽団

チェンバロ:前橋裕子(「ドン・ジョバンニ」)

録音:1978年7月6日~7日、入間市民会館

LP:ビクター音楽産業 SJX‐9536

 林 康子は、1943年生まれの香川県出身のソプラノ歌手。高松高校2年のときから声楽の勉強を始める。東京芸大音楽学部に入学して、柴田睦陸に師事。東京芸術大学院を修了後、ミラノ音楽院、スカラ座オペラ研究所に留学。1970年「モンティキァーリ国際コンクール」および「ロニーゴ国際コンクール」第1位。1973年にミラノのスカラ座でプッチーニのオペラ「蝶々夫人」の蝶々夫人役で日本人としては初めて出演して好評を博した。1968年「日伊声楽コンコルソ」第1位、1970年「モンティキァーリ国際コンクール」「パルマ国際オペラ歌手コンクール」第1位、1971年「ロニーゴ国際コンクール」第1位、1972年「イタリア国営放送ロッシーニ生誕180周年記念コンクール」第1位、1982年「イタリア金の射手座賞」を受賞するなど、当時は日本での知名度より、欧米での評価の方がはるかに高かったのである。その後、1983年「毎日芸術賞」、1988年「サントリー音楽賞」などを受賞し、2006年には紫綬褒章を受章した。さらに母校の東京芸術大学の教授も務めた。これらの経歴を見れば分るように林 康子は、第二次世界大戦後のわが国の声楽界を代表する国際的なソプラノ歌手なのである。このLPレコードのライナーノートによると「外国のオペラ雑誌には、ここ数年、彼女の名はしばしばみられ、上演評でよく褒められている」(宮沢縦一)と、録音当時、海外での評価が高かったことが紹介されている。このLPレコードは、そんな彼女が日本で録音した歌劇のアリア集である。どのアリアも艶やかさのある伸びやかな歌声であり、しかも豊かな声量で歌われており、多くのコンクールでの受賞が、実力そのものであることが裏づけられる録音といえるのである。このLPレコードの指揮者のニコラ・ルッチ(1909年―1992年)は随分懐かしい名前だ。ルッチは、イタリア出身の指揮者で、1955年から日本で活躍した。1934年にローマの名門、国立サンタ・チェチーリア音楽院を卒業後、ローマ王立歌劇場指揮者に就任。その後正指揮者となり20年間同劇場で活躍。1954年文部省より招聘外人教師として来日、宮崎大学で音楽理論を教えると同時に、1955年より東京フィルハーモニー交響楽団の常任指揮者に就任。一旦帰国し、1959年再び来日して東京藝術大学などで教える。1986年「勲三等瑞宝章」受章。林 康子を中心にしたこのLPレコードは、日本で録音されたとは思えないほどの出来栄えで、当時の日本のクラシック音楽界の充実ぶりが偲ばれる。(LPC)

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◇クラシック音楽LP◇イタリアの名テノール歌手 マリオ・デル・モナコのオペラ・アリア集

2021-12-06 09:36:30 | オペラ


~マリオ・デル・モナコ/オペラ・アリア集~

ヴェルディ:「オテロ」より“オテロの登場”/“清らかな思い出は遠いかなたへ”
プチーニ:「トゥーランドット」より“誰も寝てはならぬ”
ジョルダーノ:「アンドレア・シェニエ」より“ある日青空を眺めて”
ワーグナー:「ローエングリン」より“はるかな国に”
マスカーニ:「カヴァレリア・ルスティカーナ」より“母上よ、さらば”
マスネ:「ウェルテル」より“オシアンの歌「春風よ、なぜわたしを目ざますのか」”
ヴェルディ:「アイーダ」より“清きアイーダ”
プチーニ:「マノン・レスコー」より“なんとすばらしい美人”
マイヤベーア:「アフリカの女」より“おお、パラダイス”
ヴェルディ:「オテロ」より“オテロのモノローグ”
ビゼー:「カルメン」より“花の歌”
レオンカヴァルロ:「ラ・ボエーム」より“愛する面影”
ジョルダーノ:「アンドレア・シェニエ」より“五月の晴れた日のように”

テノール:マリオ・デル・モナコ

指揮:アルジェオ・クワドリ

管弦楽:ミラノ交響楽団

LP:東芝EMI EAC‐40158

 その昔、“黄金のトランペット”と呼ばれたイタリアの名テノール歌手がいた。それが今回のLPレコードでオペラのアリア集を歌っているマリオ・デル・モナコ(1915年―1982年)である。モナコの代名詞みたいなっているのがヴェルディの「オテロ」である。1950年に「オテロ」を初めて歌い、1972年のブリュッセル(ベルギー王立歌劇場)の公演までに200回以上も同役を歌ったという。モナコの声は、誰よりも輝かしく高らかに響きわたることであり、このLPレコードでもそのことが聴き取れる。当時の人は、モナコの声を聴くだけで、たちまちその美声に痺れてしまったという。このLPレコードでもその高らかな美声をたっぷりと楽しめる。日本公演の模様は、このLPレコードの解説で、武石英夫氏が「デル・モナコの第一声から受けた衝撃に、改めて声の魅力、オペラの魅力を強烈に思い知らされた」と書いている通り、まだあまり本場のオペラに接することの少なかった当時(1959年)の日本人に強烈な印象を与えたことが読み取れる。また、同氏がこの解説で「FM放送が未だなかった当時、ラジオの第1放送と第2放送を使っての立体放送を通じて、日本のオペラ・ファンを驚嘆させた」と書いているところを読んで、「そうだ、当時はFM放送はまだ放送開始されておらず、ステレオ放送は2台のAMラジオ受信機で聴いていたんだ」と、暫し古き昔を思い出してしまった。マリオ・デル・モナコは、イタリアのフィレンツェ(一説にはガエタ)で生まれる。音楽好きな父と、声楽をたしなんだ母の下で育ち、父の勤務の関係から13歳でロッシーニの生地ペザロの音楽院に入学。初めはヴァイオリンを学んでいたが、併せて声楽を志した。14歳で近くの町の新しい劇場のこけら落としに、マスネ―の1幕の歌劇「ナルシス」で初舞台を踏むことになる。 本格的にオペラのデビューを飾ったのは、1940年、25歳の時、ミラノのプッチーニ劇場での「蝶々夫人」であった。第二次世界大戦では従軍したが、1945年、終戦とともに本格的な活動を開始し、1947年、ヴェロナの野外劇場で「アイーダ」に出演。その後世界各地で公演し、その名声を不動なものにしていった。マリオ・デル・モナコの歌声には、小細工がなく、よく開いた喉から”黄金のトランペット”と言われた、強靭なトランペットのような輝かしい響きを持った歌声が飛び出してくる。このLPレコードには、これらのマリオ・デル・モナコの歌声の特徴が明確に捉えられ、貴重な録音である。(LPC)

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