シューベルト:歌曲集「白鳥の歌」
愛の便り
兵士の予感
春のあこがれ
セレナード
わが宿
遠い国で
別れ
アトラス
彼女の姿
漁師の娘
まち
浜辺にて
影法師
鳩の使い
バリトン:ハンス・ホッター
ピアノ:ジェラルド・ムーア
発売:1967年
LP:東芝音楽工業 AB‐8009
シューベルトの歌曲集「白鳥の歌」は、1828年、つまりシューベルトの死の年に作曲された個々のリート作品を集め、死の翌年に発刊されたもので、「美しき水車屋の娘」や「冬の旅」のように最初からまとまりを持った物語の連作詩に作曲されたものとは異なる。白鳥は死の前に美しい鳴き声で一声鳴くと言われていることから「白鳥の歌」と名付けられたもの。「白鳥の歌」は、「美しき水車屋の娘」と「冬の旅」と並び、シューベルトの三大歌曲集として昔から多くのリスナーから愛されているが、この有名な「白鳥の歌」を、このLPレコードでは、ドイツの名バリトンであったハンス・ホッター(1909年―2003年)が歌っている。ハンス・ホッターの歌声は、あくまで重厚で奥行きが深く、聴けば聴くほど味わいが出てくる。このため、その音質に合ったオペラ(例えばワーグナーの楽劇など)や内容の深いリートの曲に出会った場合は、どんな歌手もその足元にも及ばない優れた歌唱を聴かせてくれる。このためシューベルトの三部作「美しき水車屋の娘」「冬の旅」それに「白鳥の歌」の3つの歌曲集を考えた場合、ハンス・ホッターによる録音としては、どうしても「冬の旅」と「白鳥の歌」の2つに限られてしまうようだ。ここでのハンス・ホッターは、お得意の深く、重い感じの曲は言うに及ばず、抒情味を含んだ曲でも、その曲の情感を巧みに表現することに成功しており、「白鳥の歌」を論ずる時には欠かせない優れた録音となっている。これにはジェラルド・ムーア(1899年―1987年)の絶妙なピアノ伴奏があってこそ実現できたことを、付け加えておかねばならないであろう。ハンス・ホッターは、ドイツのオッフェンバッハ・アム・マインの生まれ。ミュンヘン音楽大学で学び、1930年オペラ・デビューを果たす。1937年バイエルン国立歌劇場の専属歌手となる。1952年にはバイロイト音楽祭に出演。以後15年にわたり主要なヴァーグナー作品に出演。とりわけ「ニーベルングの指環」のヴォータン、「ニュルンベルクのマイスタージンガー」のハンス・ザックス、「パルジファル」のグルネマンツ、オランダ人などホッターは、偉大なヴァーグナー歌いとして広く認められた。同時にホッターは、ドイツ・リートの歌い手としても定評があった。シューベルト、R.シューマンやヴォルフなど、その洞察力に富んだ解釈で聴衆に深い感動を与えた。1962年以来、たびたび来日し、日本でもリサイタルを行い、多くの聴衆から愛いされた。(LPC)
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