★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇夭折の天才ピアニスト ディヌ・リパッティのショパン:ピアノソナタ第3番、バルカロール、マズルカ第32番、 ノクターン第8番     

2024-07-22 09:47:10 | 器楽曲(ピアノ)

ショパン:ピアノソナタ第3番      
     バルカロール      
     マズルカ第32番      
     ノクターン第8番

ピアノ:ディヌ・リパッティ

発売:1962年9月

LP:日本コロムビア OL‐3103

 これは、ルーマニアのブカレストに生まれた、夭折の天才ピアニスト、ディヌ・リパッティ(1917年―1950年)を偲ぶLPレコードである。「偲ぶ」というと単なる懐古趣味と思われがちだが、リパッティに限っては、このことは当て嵌まらない。このLPレコードは、今もってショパン:ピアノソナタ第3番の録音の中でも、1,2を争う名盤と私は信じている。さらに同じLPレコードのB面に収められた3つの小品、バルカロール、マズルカ第32番、ノクターン第8番についても、今もってこれに真正面から対抗できる録音は数少ない。リパッティは、ショパンを弾かせたら他の追随を許さない天性の閃きを持っていた。このことは名ピアニストで当時ショパン演奏の第一人者であったアルフレッド・コルトーから教えを受けたことでさらに磨きが掛けられたのだ。名盤として名高い、リパッティが遺したショパン:ワルツ集は今でもその輝きを失っていない。このショパン:ピアノソナタ第3番を収めたLPレコードも、ショパン:ワルツ集に次いで、リパッティのショパン演奏の白眉とも言える録音となっている。リパッティの不幸は、33年という僅かな時間しか天から命を与えられなかったことと、録音の音質が決して芳しいものではなかったことぐらいであろう。このLPレコードも1940年代の録音であり、今の録音のレベルとは比較にはならないが、その気品があり、すっきりとした演奏ぶりを聴いていくうちに、録音の古さなんて全くと言っていいほど気にならなくなってくるから不思議だ。リパッティのピアノ演奏は洗練されているが、どことなく淋しげでもある。しかしそれは、決して冷たいものでなく、人間的な温もりが感じられ、そのことが、今聴いても少しの古さを感じさせない魅力の源泉となっている。何か時代を超越した音楽性を、その内に宿しているかのように感じられる。ショパンの音楽は、表面の美しく華やかな反面、その内部には激しい感情の高まりが感じられるが、リパッティの音楽性も同じように、表面的には整ったものだが、その内部には、溢れんばかりの人間味が感じられる。このLPレコードに収められた全てのショパンの作品から、このことが聴き取れる。このLPレコードは、永遠の名盤なのだ。将来を嘱望されていたリパッティではあったが、1947年にリンパ肉芽腫症と診断され、3年の後の1950年に、33歳の若さでこの世を去ることになる。(LPC)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

アルテュール・グリュミオーのショーソン:詩曲/サン=サーンス:序奏とロンド・カプリチオーソ、 ハバネラ/ ラヴェル:ツィガーヌ        

2024-07-18 09:37:46 | 協奏曲(ヴァイオリン)


ショーソン:詩曲
サン=サーンス:序奏とロンド・カプリチオーソ
        ハバネラ
ラヴェル:ツィガーヌ

ヴァイオリン:アルテュール・グリュミオー

指揮:マニュエル・ロザンタール

管弦楽:コンセール・ラムルー管弦楽団

録音:1966年3月(ショーソン/ラヴェル)、1963年4月(サン=サーンス)、フランス、パリ

発売:1980年

LP:日本フォノグラム(フィリップスレコード) 13PC‐242

 このLPレコードは、フランコ・ベルギー楽派の泰斗アルテュール・グリュミオー(1921年―1986年)が、ショーソン、サン=サーンス、ラヴェルのヴァイオリンとオーケストラのための名曲を収録した一枚。グリュミオーは、ベルギーに生まれ、ブリュッセル王立音楽院で学ぶ。その後、パリに留学してジョルジュ・エネスコに入門。デュボアとエネスコに学んだグリュミオーは、正統的フランコ・ベルギー派のスタイルを後世に遺したことで知られる。第二次世界大戦中は、ナチス・ドイツ占領下のベルギーにおいて独奏会や室内楽の演奏旅行を行った。第二次世界大戦後は、ピアニストのクララ・ハスキルをパートナーとした演奏活動などを展開し、”黄金のデュオ”と評され数々の名盤を遺した。そして、ソリストとして世界的な名声を得ることになる。グリュミオーは音楽界への貢献が認められ、1973年に国王ボードゥアン1世により男爵に叙爵された。1961年には来日も果たしている。グリュミオーは、録音を数多く遺しているが、それらが全て気品のある艶やかな美音で貫かれており、ヴァイオリンの持つ特性を最大限に表現しきった名人芸は、現在でも、多くのファンを魅了して止まない。特にモーツァルトの演奏には定評があったが、ドイツ・オーストリア系の作曲家の演奏においてもその力量は、遺憾なく発揮された。だが、やはりその特徴を最大限に表現したのは、このLPレコードに収容されたショーソン、サン=サーンス、ラヴェルなどのフランス系の作曲家の作品であろう。その意味からこのLPレコードは、グリュミオーの真価を知るには最適な一枚ということができる。歌うところは存分に歌い、しかも、その余韻を含んだ表現力は、ヴァイオリンの持つ特性を余すところなく発揮させている。ここでの音楽は、外部との戦いでもなく、心の葛藤でもない。あくまで何よりも詩的な情緒を大切にし、微妙で自由な振る舞いの音楽の中に身を預け、そして陶酔の一時を過ごす・・・。グリュミオーのヴァイオリン演奏は、そんな夢ごこちの心境に、リスナーを知らず知らずに導き入れてくれるかのようだ。マニュエル・ロザンタール指揮コンセール・ラムルー管弦楽団の伴奏は、グリュミオーのあくまでも詩的で優雅な演奏を、一層引き立て、その効果を倍増させることに見事に成功している。(LPC)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

◇クラシック音楽LP◇ブタペスト弦楽四重奏団+第2ヴィオラ:ワルター・トランプラーのブラームス:弦楽五重奏曲第1番/第2番

2024-07-15 09:45:31 | 室内楽曲


ブラームス:弦楽五重奏曲第1番/第2番

弦楽五重奏:ブタペスト弦楽四重奏団+第2ヴィオラ:ワルター・トランプラー

        ヨーゼフ・ロイスマン(第1ヴァイオリン)
        アレクサンダー・シュナイダー(第2ヴァイオリン)
        ボリス・クロイト(第1ヴィオラ)
        ワルター・トランプラー(第2ヴィオラ)
        ミッシャ・シュナイダー(チェロ)         

録音:1963年11月14日~15日(第1番)/1963年11月21日、26日(第2番)、アメリカ、ニューヨーク

LP:CBS/SONY SOCL 1138

 ブラームス:弦楽五重奏曲第1番は1882年に、 そして弦楽五重奏曲第2番は1890年に、それぞれ完成している。第1番は、如何にもブラームスの作品らしく、緻密で内向的な性格の曲。地味ではあるが完成度の高さでは、ブラームスの室内楽曲の中でも屈指の作品とも言える。どちらかというと一般向けの曲というよりは、プロ好みの室内楽曲。一方、第2番は、作品全体にワルツの主題が流れ、終末部にはロマの音楽が展開されるなど、ブラームスの室内楽としては、明るく陽気な作品となっており、耳に心地良く、楽しい作品。どことなく弦楽六重奏曲第1番と雰囲気が似かよっている。ブラームスは、この曲を書く直前にイタリアに旅しており、その影響を指摘する向きもある。さらにドイツ風のユーモア、スラブ風のメランコリー、それにハンガリー風の誇らしげな雰囲気などを加え合わせ、これら4つの性格が巧みに融合されているところが、この曲の魅力の源泉とも指摘されている。これら2曲を演奏しているのが、20世紀を代表する伝説のカルテットであるブダペスト弦楽四重奏団。1917年にブダペスト歌劇場管弦楽団のメンバーによって結成され、メンバーの変遷を経ながら1967年2月まで活動した。1938年からアメリカに定着して活動し、最終的なメンバーは全員がロシア人。伝統的なロマン主義的を避け、新即物主義的な解釈を行い、さらに、各声部のバランスを取ったことなどから、現代の弦楽四重奏演奏のスタイルに大きな影響を与えたカルテットと言われている。1940年から長年にわたりアメリカ合衆国の議会図書館つきの弦楽四重奏団としても活躍したが、ストラディヴァリウスを演奏に使用した。そして1962年以降の後任がジュリアード弦楽四重奏団である。このLPレコードで共演の第2ヴィオラ担当のワルター・トランプラー(1915年―1997年)は、ドイツ出身の名ヴィオラ奏者で、1939年以降、アメリカにわたり演奏活動を行った。このLPレコードでの演奏内容は、第1番については、ブラームス特有の内省的で緻密な曲想に合わせるかのように、実に求心的で濃密なロマンの香りを馥郁と漂わせた演奏に終始し、一分の隙のない名演を聴かせる。一方、第2番は、明るく、活動的な室内楽の楽しみを、リスナーと分け合うかのように、軽快に弾き進んで行き、ブラームスの別な側面を明らかにしてくれている。(LPC)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

◇クラシックLP◇シュナイダーハンのモーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第4番/第5番

2024-07-11 09:37:20 | 協奏曲(ヴァイオリン)


モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第4番/第5番「トルコ風」

ヴァイオリン:ヴォルフガング・シュナイダーハン

指揮:ハンス・シュミット=イッセルシュテット

管弦楽:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(第4番)
    北ドイツ放送交響楽団(第5番)

LP:ポリドール KI 7306

 このLPレコードは、モーツァルトのヴァイオリン協奏曲第4番と第5番を、ウィーンの名ヴァイオリニストであったヴォルフガング・シュナイダーハン(1915年―2002年)が演奏した録音である。モーツァルトは、ヴァイオリン協奏曲の作曲を若い時に集中し、以後、死に至るまでヴァイオリン協奏曲は作曲せず、ピアノ協奏曲を作曲することになる。ピアノ協奏曲の質の高さと量の多さを考えると、後年になってからもヴァイオリン協奏曲にも執着して欲しかったようにも思えてくる。ヴァイオリン協奏曲第1番~第5番は、ザルツブルクで作曲されたので一般に“ザルツブルク協奏曲”と言われている。第4番は、ハイドンの弟であるミハエル・ハイドンの影響を受けた曲と言われ、内容に深みがある曲というより、気楽に楽しく聴くのに相応しい曲となっている。そのためか専門家の評価は芳しいものではないが、そう肩肘張って聴かなくていいじゃないの、という考え方もあろう。何かむしゃくしゃした気持ちの時に、この第4番を聴くと気分がすかっとするから不思議だ。だから、一般に名曲と評価されている第5番に劣らず、私にとっては大好きな曲となのだ。シュナイダーハンは、そのことをよく理解しているかようにように、優雅にさらっと演奏する。普通だとそのような演奏は一度聴くと飽きるが、シュナイダーハンの場合は、一味違う。何か宮殿の中で舞踏が行われているかのような雰囲気を醸し出しており、さらに、いつもなら無骨な指揮ぶりが特徴のハンス・シュミット=イッセルシュテット(1900年―1973年)も、この時ばかりは、オシャレな指揮に終止しているのは、なんとなく微笑ましい。第5番は、モーツァルトのヴァイオリン協奏曲の中でも傑作とされる曲。シュナイダーハンもイッセルシュテットも、第4番の優雅さとは打って変わり、ピリッとした感覚で弾き進む。ただこの第5番も、フランス風の洒落た趣が濃厚な曲想は、第4番とあまり変わることはないが、より一層モーツァルトらしさが込められた曲ということが出来よう。第3楽章にトルコ行進曲風のリズムが出てくるため、「トルコ風」と呼ばれる。シュナイダーハンは、ウィーンで生まれ、ウィーンでヴァイオリンを学んだ生粋のウィーン子の名ヴァイオリニスト。1937年からウィーン・フィルのコンサートマスターを務め、1949年以降、ソリストとして活躍した。(LPC)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

◇クラシック音楽LP◇グレン・グールドのシェーンベルクのピアノ小品集

2024-07-08 09:37:25 | 器楽曲(ピアノ)


シェーンベルク:3つのピアノ曲Op.11           
        5つのピアノ曲Op.23           
        6つのピアノ小品Op.19           
        ピアノ組曲Op.25   
        ピアノ曲Op.33a/Op.33b

ピアノ:グレン・グールド

録音:ニューヨーク

LP:CBS/SONY 18AC 971

 カナダ出身のグレン・グールド(1932―1982年)は、1964年のシカゴ・リサイタルを最後にコンサート活動からは一切身を引いてしまう。この理由については、いろいろ詮索されているが、これ以降、没年まで、グールドはレコード録音及びラジオ、テレビなどの放送媒体のみの音楽活動に集中することになる。そして1981年、バッハの「ゴルトベルク変奏曲」を再録音した後の1982年10月4日、脳卒中により死去した。享年50歳。リヒテルは、グールドを「バッハの最も偉大な演奏者」と評したという。そんなグールドは、現代音楽も積極的に取り組んだが、特にシェーンベルクを高く評価したようである。グールドお気に入りのシェーンベルクのピアノ曲だけを収めたのがこのLPレコードである。ここに収められた曲は、シェーンベルクの音楽愛好家か、現代音楽のピアノ曲に興味がある人でもないと、普段滅多に耳にしない曲ばかりだ。私も、このLPレコードを買った当時は、あまり興味がなく、1、2回聴いただけでお蔵入りとなっていた。今回、改めて聴いてみると・・・、これまで敬遠していた現代音楽が、実に身近な感覚で聴くことが出来たことには自分でも驚いた。グレングールドは、対位法を重視し、カノンやフーガの曲を数多く作曲したバッハなどの曲の演奏に力を入れた反面、ショパンのような曲には関心が薄かったという。ところが、今回このグールドの弾くシェーンベルクのピアノ曲を聴いて、私の脳裏に最初に浮かんだのは、これは「現代のショパン演奏ではなかろうか」ということだ。何か物憂げで、その一方、鋭い視線で周囲を見回すようなような場面にも遭遇する。リズムも多様に変化し、人間の内面に潜む複雑な心理の変化を凝視しているような演奏なのだ。一方では、表面的には、あたかもロマン派のピアノ曲を聴いているような一種の優雅さもある。そう言えば、シェーンベルクは、ヨハン・シュトラウスのワルツを高く評価していたことを思い出し、成る程なと一人感じ入ったほどだ。ここでは、グールドという類稀な才能が、とっつきにくいシェーンベルクの曲を活き活きと再現して見せる。私にとっては、驚きと同時にシェーベルクの音楽を、今度はじっくりと聴いてみたいな、という気を起こさせた貴重なLPレコードにもなったのである。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

◇クラシック音楽LP◇閨秀ハーピスト アニー・シャフランによるドビュッシー/ラヴェル/ピエルネ/フォーレのフランス音楽ハープ名曲集

2024-07-04 09:38:33 | 協奏曲

 

ドビュッシー:神聖な舞曲と世俗的な舞曲
ラヴェル:序奏とアレグロ
ピエルネ:ハープ小協奏曲
フォーレ:即興曲Op86

ハープ:アニー・シャフラン

指揮:アンドレ・クリュイタンス

管弦楽:パリ音楽院管弦楽団

ヴァイオリン:ティッシュ&シモン
ヴィオラ:レキャン
チェロ:ベクス
フルート:カラシェ
クラリネット:ブータール

録音:1965年11月

LP:東芝EMI EAC‐40110

 このLPレコードは、フランス音楽の中でも極上のハープの音色思う存分味わえる一枚である。豊穣な香りのワインにも似て、ハープの響きは、この世ので聴く天上の音楽とでも言ったらいいのであろうか。ところでハープという楽器は我々にとって親しみのある楽器ではあるのだが、いつ頃から今の形のハープが定着したのであろうか。その辺を、このLPレコードのライナーノートで、三浦淳史氏が解説しているので紹介しよう。19世紀の終わりの頃から、フランスのハープ界は、急速な飛躍を遂げたようで、“ハープはフランス”という名声を高めたが、それは、新しいハープの開発が行われたからだという。エラール社が近代のペダル・ハープの形を確立し、一方、プレイエル社は、半音階ハープを試作した。プレイエル社は、1903年の初頭、ブリュッセル音楽院のコンクール曲として、ドビュッシーに半音階ハープのための作品を委嘱し、その結果生まれたのが「神聖な舞曲と世俗的な舞曲」。一方、エラール社も負けてはならじと、ラヴェルにペダル・ハープ用の曲を委嘱し、その結果生まれたのが「序奏とアレグロ」。その後、半音階ハープは、改良されたペダル・ハープに座を明け渡すことになった。このLPレコードの最初の2曲は、フランスのハープの歴史そのものであるドビュッシーの「神聖な舞曲と世俗的な舞曲」と、ラヴェルの「序奏とアレグロ」が収録されている。フランスのハープ奏者というと直ぐに思いつくのは、当時一世を風靡した閨秀ハーピストのリリー・ラスキーヌ(1893年―1988年)だ。そのリリー・ラスキーヌの高弟が、このLPレコードで演奏している女流ハーピストのアニー・シャフラン(1940年生まれ)なのである。アニー・シャフランは、16歳でパリ音楽院のハープ科を首席で卒業。翌年、コロンヌ管弦楽団の首席奏者となり、ヨーロッパ各地での演奏旅行によってその名がヨーロッパ中で知られるようになった。このLPレコードの演奏でも、アニー・シャフランのハープ演奏は、如何にもフランス音楽の精髄を極めたような、精緻で、しかも麗しい雰囲気が横溢したものになっており、ハープの持つ独特の優雅で、馥郁たる余韻を持った音楽を存分に味わうことができる。アンドレ・クリュイタンス(1905年―1967年)指揮パリ音楽院管弦楽団の伴奏が、これまた幻想的で素晴らしい演奏を聴かせてくれる。(LPC)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

◇クラシック音楽LP◇若き日のピリス、モーツァルト:ピアノソナタ第8番/幻想曲ニ短調/ピアノソナタ第11番「トルコ行進曲付き」(日本録音盤)

2024-07-01 09:49:16 | 器楽曲(ピアノ)

 

モーツァルト:ピアノソナタ第8番        
       幻想曲ニ短調        
       ピアノソナタ第11番「トルコ行進曲付き」

ピアノ:マリア・ジョアン・ピリス

録音:1974年1月~2月、イイノ・ホール(東京)

LP:DENON OX‐7054‐ND

 マリア・ジョアン・ピリス(マリア・ジョアン・ピレシュが正確な表記。1944年生まれ)は、ポルトガル出身の女性ピアニスト。1953年から1960年までリスボン大学で作曲・音楽理論・音楽史を学んだ後、西ドイツに留学。1970年に、ブリュッセルで開かれたベートーヴェン生誕200周年記念コンクールで第1位。この間に、個人的にケンプの薫陶を受ける。室内楽演奏にも力を入れ、1989年よりフランス人ヴァイオリニストのオーギュスタン・デュメイと組みツアーを行う。モーツァルトのピアノ・ソナタ集の録音により、1990年に「国際ディスク・グランプリ大賞」CD部門受賞。2008年には、NHK教育テレビの番組「スーパーピアノレッスン」の講師を務めるなど、教育活動にも多くの功績を残している。このLPレコードは、「1975/1976ADFディスク大賞」を受賞した「モーツァルト:ピアノソナタ全集」の中の1枚であり、記念すべき録音だ。ピリスのモーツァルト演奏は、清潔感に溢れたもので、私にとって、モーツァルトのピアノ演奏から、ピリスを外しては到底考えられない。ピリスのモーツァルト演奏がスピーカーから音が流れ出すと、辺りの空気が一瞬緊張したかのような錯覚を起こすほどだ。少しの過剰な演出もなしに、これほどの効果をリスナーに届けられるピアニストはそうざらにはいない。テンポは、比較的ゆっくりとしており、音質は、硬めではあるが、硬直したものでなく、その背後には常に歌心が寄り添っているので、長く聴いても疲れることは微塵もない。ピリスはこれまでしばしば来日しており、生の演奏を聴く機会も多くあった。この録音当時は、ピリスの若々しさが前面に溢れており、爽やかさが匂い立つようでもある。流石に近年の生の演奏は、人生経験を積んだピアニストしか表現できないような深みが込められているたが・・・。そして、改めて今、ピリスの若き日に日本で録音したLPレコードを聴いてみると、青春のほろ苦さが込められたような新鮮な演奏が、リスナーの胸を揺さぶらずにおかない。ピアノソナタ第11番だけとっても、これほど正統的でピュアな演奏するピアニストは、今、世界中探したってどこにも居ないだろう。そのピリスも2018年をもって引退を表明し、日本では2018年4月に各地で行われた日本ツアーが最後の演奏会となってしまった。ただ、教育活動は今まで通り今後も継続するという。(LPC)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

◇クラシック音楽LP◇新ウィーン楽派の3人(シェーンベルク/ベルク/ウェーベルン)の編曲によるヨハン・シュトラウスのワルツ集

2024-06-27 10:14:19 | 室内楽曲


ヨハン・シュトラウス:皇帝円舞曲(シェーンベルク編曲)                
           南国のばら(シェーンベルク編曲)
           酒、女、歌(ベルク編曲)            
           宝石のワルツ(ウェーベルン編曲)

室内楽:ボストン交響楽団室内アンサンブル

        ジョーゼフ・シルヴァースタイン(第1ヴァイオリン)         マックス・ホバート(第2ヴァイオリン)      
        バートン・ファイン(ヴィオラ)      
        ジェール・エスキン(チェロ)      
        ジェローム・ローズン(ハルモニウム)      
        ギルバート・カリッシュ(ピアノ)      
        ドリオ・アントニー・ドワイアー(フルート)      
        ハロルド・ライト(クラリネット)

録音:1977年4月3日、ボストン、シンフォニー・ホール

LP:ポリドール(ドイツ・グラモフォン) 2530 977(MG1194)

 これは、大変愉快なLPレコードだ。というのは、あのヨハン・シュトラウスのワルツの名曲を、何とシェーンベルク、ベルク、ウェーベルンの3人の新ウィーン楽派の作曲家達が編曲をした曲を、ボストン交響楽団のメンバーが演奏したものだからだ。新ウィーン楽派とは、主に1900年代初頭にかけて、ウィーンで活躍した作曲家の集団で、先生役のシェーンベルク (1874年―1951年)と、ウェーベルン(1883年―1945年)およびベルク(1885年―1935年)の2人の弟子の3人を中心とした作曲家集団のことをいう。彼らは、無調音楽や十二音技法などの現代音楽を確立したことで知られる。一見すると、ワルツ王ヨハン・シュトラウスと新ウィーン楽派とは、水と油の関係のように感じられるが、意外や意外、シェーンベルクは、ヨハン・シュトラウスをはじめ、オッフェンバッハ、ガーシュインなどの新しい傾向の曲を高く評価していたのだという。当時、新ウィーン楽派は、従来からクラシック音楽の主流を占めていた権威主義的な傾向を厳しく批判していた。一方、ヨハン・シュトラウスの曲はというと、大衆に根差した音楽であり、決して権威主義的な曲ではない、というところを、どうも評価したようである。シェーンベルクは、現代音楽の普及団体「ウィーン私的演奏協会」の会長を務めていたが、ここでの演奏会では、しばしば自分達が編曲した曲を演奏し、さらに、その編曲した楽譜を販売していたというから、なかなかのものである。このLPレコードの石田一志氏のライナーノートによると、ベルク編曲の「酒、女、歌」が5,000クローネ、ウェーベルン編曲の「宝石のワルツ」が7,000クローネ、シェーンベルク編曲の「南国のばら」が1万7,000クローネで売られたという(ちなみに現在はというと、1クローネ=23円)。私は、このLPレコードの最初のシェーンベルク編曲の「皇帝円舞曲」を最初に聴いたときは、大いに驚いたことを思い出す。ヨハン・シュトラウスの曲には違いないのであるが、そこは、それ、シェーンベルク流のワルツに巧みに仕上がっていることには唖然とする。これはシェーンベルクの歌曲「月に憑かれたピエロ」の手引書のような役割を持った編曲ではないかと石田一志氏は指摘する。一度、これらの編曲を聴かれることをお勧めする。現代音楽への見方が変わるかもしれないのである。(LPC)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

◇クラシック音楽LP◇名メゾ・ソプラノ クリスタ・ルードヴィッヒのブラームス/ワーグナー/マーラー歌曲集

2024-06-24 09:55:40 | 歌曲(女声)

ブラームス:「アルト・ラプソディー」

ワーグナー:「ヴェーゼンドンクの五つの詩」                       
         
            天使           
            とまれ!           
            温室で           
            苦悩           
            夢

マーラー:「五つの歌」                     

            わたしはこの世に忘れられて           
            真夜中に           
            うき世の暮らし           
            ほのかな香り           
            美しいトランペットの鳴り渡るところ

メゾ・ソプラノ:クリスタ・ルートヴィッヒ

指揮:オットー・クレンペラー

管弦楽:フィルハーモニア管弦楽団

合唱:フィルハーモニア合唱団(ブラームス)

録音:1962年3月21日、23日(ブラームス)     
   1962年3月22日、23日(ワーグナー)     
   1962年2月17日、18日(マーラー)

LP:東芝EMI EAC‐40118

 ブラームスの通常言われる「アルト・ラプソディー」の正式な名称は「アルトと男声合唱とオーケストラのためのラプソディー」であり、ブラームス36歳の作品。テキストは、ゲーテの詩「冬のハルツの旅」から取った。この詩は全部で11節からなるが、この中からブラームスは第5節~第7節目を用いた。この詩は、全体が厭世観に満ちたものであり、その中でも悲歌とも言える部分を採用したのは、当時、ブラームス自身が失恋から来る、厭世観に打ちのめされていたからとも言われる。そのような曲であり、全体は暗く、陰鬱な気分で覆われている。この曲を歌い、その真価をリスナーに伝えるには、歌手自体に力がないと到底不可能なことになってしまう。この点、クリスタ・ルートヴィッヒ(1928年―2021年)は、メゾ・ソプラノの声の特質を存分に発揮し、深みのある、荒涼とした神経描写を的確に表現しており、見事な仕上がりを見せる。さらに、これを支える指揮者のオットー・クレンペラー(1885年―1973年)の棒捌きが誠に見事であり、曲全体の効果を何倍にも高めている。全体は3つの部分に分けられるが、第3部ではそれまでの陰鬱な気分を払い取るかのような、リスタ・ルートヴィッヒの滑らかで、力強い明るい歌唱力に、暫し聴き惚れてしまう。次のワーグナー:「ヴェーゼンドンクの五つの詩」は、マチルデ・ヴェーゼンドンクの詩を基にした作品で、1857年~58年に作曲された。この曲の第3曲と第5曲に“トリスタンとイゾルデのための習作”と書かれている通り、楽劇「トリスタンとイゾルデ」が書かれた時期と重なる。また、ワーグナーがマチルデ・ヴェーゼンドンク夫人との恋愛に溺れた時期でもあり、精神の異常な高ぶりが、この作品を生んだとも考えられる。そんな甘美な感情をクリスタ・ルートヴィッヒは、静かに、しかも押し殺したような表現で歌い挙げており、ワーグナーの官能的な世界を見事に表現し切っている。ここでもオットー・クレンペラー指揮フィルハーモニア管弦楽団は、抜群の演出効果を挙げている。最後のマーラー:「五つの歌」は、「リュッケルトによる五つの歌」と「子供のふしぎな角笛」からの抜粋された曲。この時期(1902年)には、同じくリュッケルトの詩による歌曲集「亡き子をしのぶ歌」がつくられている。ここでもクリスタ・ルートヴィッヒの歌声は、マーラー独特の甘美で夢幻的な世界へとリスナーを誘ってくれる。(LPC)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

◇クラシック音楽LP◇ムラヴィンスキー指揮レニングラード・フィルのチャイコフスキー:交響曲第5番

2024-06-20 09:37:01 | 交響曲(チャイコフスキー)

 

 チャイコフスキー:交響曲第5番

指揮:エフゲニ・ムラヴィンスキー

管弦楽:レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団

録音:1960年11月9日~10日、ウィーン・ムジークフェライン・ザール

LP:ポリドール(ドイツ・グラモフォン) SE 7910 

 エフゲニー・ムラヴィンスキー(1903年―1988年)は、旧ソ連時代に活躍したロシアの大指揮者。1924年レニングラード音楽院に入学し、作曲と指揮を学ぶ。同音楽院を1931年に卒業後、レニングラード・バレエ・アカデミー・オペラ劇場(現マリインスキー劇場)で指揮者デビューを果たす。1938年ソ連指揮者コンクールに優勝後、直ちにレニングラード・フィルハーモニー交響楽団の常任指揮者に就任。当時、低迷していた同オーケストラの立て直しに着手し、最終的には同オーケストラを一流のオーケストラに生まれ変わらせた。以後、50年間にわたってその地位に君臨する。1946年「スターリン賞」受賞、1954年「人民芸術家」、1973年「社会主義労働英雄」の称号を授与される。1956年にモーツァルト生誕200年祭でウィーンを訪れたのを契機として、以後約25年に渡って3度の来日を含む外国公演を行っている。それにより名声は世界に轟いた。その指揮ぶりは、厳格を極め、ダイナミックレンジが大きく、一糸乱れぬ演奏は、当時、トスカニーニを髣髴とさせるとも言われていた。チャイコフスキーの交響曲第5番ホ短調 作品64は、1888年に作曲され、現在では交響曲第6番「悲愴」と並ぶ人気の曲となっている。 チャイコフスキーは1877年に交響曲第4番を作曲したあと、「マンフレッド交響曲」を作曲したほかは、交響曲から遠ざかっていた。しかし、1886年にヨーロッパに演奏旅行した後、交響曲への意欲を取り戻した。このLPレコードのチャイコフスキー:交響曲第5番の録音は、1960年11月9日~10日に行われたもので、丁度、ムラヴィンスキーとレニングラード・フィルのコンビが、円熟味を発揮し出した頃のものである。そのため、その後の晩年の録音で見せる、寸分の隙もない演奏に比べ、第3楽章までは、ところどころに牧歌的な雰囲気も漂わせているのが興味深い。とはいってもそこはムラヴィンスキー、最終楽章に入ると、剃刀のような鋭さが徐々に徐々に増して行き、最後はスケールの限りなく大きい、慟哭とも言えるような激しい感情の昂ぶり見せ、リスナーを圧倒する。なお、旧ソ連崩壊によって、1991年に街の名称がレニングラードからサンクトペテルブルクへと変えられたことに伴い、楽団名もレニングラード・フィルハーモニー交響楽団から、現在のサンクトペテルブルク・フィルハーモニー交響楽団に改称された。(LPC) 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする