森羅万象、政治・経済・思想を一寸観察 by これお・ぷてら
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事態解決の命脈握る -中国の北朝鮮「説得」

ライスの発言には、いまの局面でアメリカが事態をどのように考えているのか、がよく表れている。
いまやアメリカにとって、中国はかつての「敵」ではなく、無視できない「味方」として、その位置を占めている。極論すれば、北朝鮮問題は中国抜きにはなんら解決できず、アメリカも事実、中国に大いに働いてもらう戦術をとっているかのようにさえみえてしまう。
朝日新聞によれば、ライスは、中国の唐国務委員の平壌訪問に関連して「中国は、北朝鮮に対してアメもムチも持っている」と述べ、説得に期待を表明。「国連憲章第7章の制裁付きの決議を支持したことは、北朝鮮の振る舞いに対する懸念の強さを示している」と中国の姿勢を評価したという。
コメントをいただいたジャンクさんの引用する「中央日報」は、具体的に対北朝鮮制裁に乗り出したことを伝えるものだ。それによれば、中国は対北送金がすでに始まったのではないかという見方も出てきた。
北朝鮮との具体的な経済関係をもつ中国のこんな動きは当然、北朝鮮にとって痛手になる。
一方で制裁に乗り出しつつ、外交にのぞみ北朝鮮の説得をおこなおうとする中国の意図が十分みてとれる。
北朝鮮と関係をもつ中国の外交努力を後押しし、同盟国としての日韓との協調をとりつけることで、リーダーシップを打ち出そうとしているのがアメリカだ。ライスは会見で、日本防衛を「同盟上の責務(コミットメント)だけでなく、米国自身の国益にも完全にかなう」と強調。盟主として、日本への攻撃は「米国に対する直接の脅威と見なす」と警告。 以下、朝日新聞からの引用。
ライス氏は制裁強化について、「安保理決議にうたっている」と述べ、2度目の実験をすれば、安保理で具体策を検討する考えを示した。北朝鮮を出入りする貨物の検査については、米国主導の拡散防止構想(PSI)によって核関連物資や技術の流入、流出を阻止する措置に言及。「関係国による情報共有や、放射性物質の検知能力の増強などを進める」と語った。
さらに、米情報機関が1回目の実験を核実験だと確認したことを受けて「米国内法で自動的に制裁が強化されることになる」と語り、2回目の実験がなくても国内法に基づく制裁強化を進める考えを示した。 ライス氏は「北朝鮮を攻撃、侵略する意図はない」と改めて明言。一連の措置について「事態をエスカレートさせるためでなく、沈静化させるためだ」と語った。 |
伝えられるところから判断すれば、いまのところ事態解決の命脈は中国が握っているということになる。これにくらべれば、この東アジアでも日本の外交力はとても貧弱にみえてくる。だから、逆にいえば、この間の麻生や中川の発言は、こうした国際的な外交努力にも冷や水をあびせることになる。
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「不統一」で切り捨てられるか -麻生太郎が核保有「議論は大事」と発言

安倍晋三は記者団の質問にこたえてつぎのように語っている。以下、朝日新聞からの引用。
安倍首相は18日夜、麻生氏の発言について、首相官邸で記者団に「麻生大臣も非核三原則については政府の立場に立って発言している。閣内不統一ということはないし、この話はすでに終わった議論だ」と述べた。 |
しかし、この安倍の発言は矛盾に満ちている。
そもそも「非核三原則を守るという立場」から「核保有の議論は大事」という発言はでてきようがない。非核三原則とは、周知のとおり「核兵器を持たず、作らず、持ち込ませず」という、日本国の国是とされている原則である。
持たず、作らずというのだから、この前提に立てば、核の保有の議論は成り立ちえない。核保有の議論をするためには、この三原則を捨てるか、または日本ではないどこか他の国のことについて語るよりほかにはないだろう。麻生太郎の「心の中」には、非核三原則がもともとないか、すでに捨て去ったかのいずれかであろう。
だから、麻生は、ウソをついていることになる。麻生が「非核三原則を守る」と語るとき、それはウソだ。
そうすると、安倍が「麻生大臣も非核三原則については政府の立場に立って発言している。閣内不統一ということはないし、この話はすでに終わった議論だ」と語ったのは、つぎの点で誤っている。
①麻生は、非核三原則を守るという政府の立場にたってはいない。
②ゆえに閣内不統一
中川や麻生といえば、彼らが閣僚や党内の要職についたときに何かしでかすにちがいないと思われた方も多いだろう。結果的にそうなったわけだ。しかし、私は、彼らは「確信犯」だと考えている。はねあがりの発言だとすれば、矢継ぎ早にでてくることは考えにくい。党内にはこんな核武装論が根強くあることを、麻生と中川の発言は明らかにした。そして、明らかに閣内の「不統一」があるということも露呈した。安倍晋三のリーダーシップの無さもまた、明白になったといえる。
毎日新聞が書いていたが、「唯一の被爆国として核廃絶を訴えてきた日本」である。ならば、麻生や中川こそがまさに「反日」だといえるだろう。彼ら二人の発言は国際的な非難を受けるにちがいない。
安倍が、誇りのもてる「美しい国」日本というとき、この党内と内閣の現実は、いかにも滑稽ではないか。
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ライス国務長官来日 -訪問は北朝鮮核実験問題を解決できるか
ライス国防長官が来日した。
ライスの歴訪にあわせて、北朝鮮は17日、国連安全保障理事会が全会一致で採択した制裁決議に対して「我が国への宣戦布告と見るしかない。決議を断固糾弾し、全面的に排撃する」と反発する報道官声明を発表した。
しかし、この声明のうちに、北朝鮮は大上段に宣戦布告と反発する一方で、声明の最後で「今後、米国の動向を注視し、それに従って当該の措置を講じる」とのべていることにたいして対応上の変化をみてとる見方がある。北朝鮮は対話に傾いたのか。
ライスの各国訪問の目的は、対北朝鮮共同歩調の意思を固めることにあることは誰の眼にも明らかだろう。そして日韓にたいしては盟主として同盟の強化のねらいもあるにちがいない。そのアメリカの動向をしかとにらみながら、北朝鮮はたとえるならば片手に武器を、片手にペンをの構えで、対決の姿勢を強調しつつ、対話をちらつかせる、これが悲しいかな、外交の門外漢の頭で考えうることである。
北朝鮮の対応上の変化をみてとる識者は、このように語っている(日経新聞18日付)。
北朝鮮が今回の声明で強調したいのは「宣戦布告」という脅し文句よりも、最後の「米国の動向を注視する」という部分だろう。和戦両様という姿勢を明らかにし、「あとは米国の出方次第だ」と念押しした声明といえる。今後のシナリオは2つ。1つは二度目の核実験を強行すること。北朝鮮も国連で一段と強い制裁を求める論議がされるだろうとは考えているが、軍事制裁を定めた国連憲章第7章42条の決議は中ロが反対し、全会一致は無理だと読んでいる。 第二は6カ国協議への復帰。「即時無条件での復帰」という要請をけん制しつつ、決議された制裁を少しずつでも解除していくという条件闘争に持ち込む。これで現在の苦境から脱し核保有国として国際社会に認知させていく筋道を探る。どちらにしても北朝鮮には有利になる公算が大きく国際社会は対応に苦慮する。(小比木政夫・慶大教授) |
小比木の説明はいずれにせよ、北朝鮮は対話を選ぶとみているということだ。国際社会もいまのところ、すでに採択された国連安保理決議にみられるように非軍事的対応を選んでいる。
ライスの日中韓、そしてロシア訪問がどんな方向をむくのか、それが筋道を決める上で大きな意味をもつ。北朝鮮は最初からアメリカとの直接協議をのぞんでいるが、「アメリカの動向を注視する」という点を前面に押し出し、北朝鮮は結果的に対話に応じ実をとるのではないだろうか。まさに解決にむけた山場を迎えている。
安倍政権は、「周辺事態法」発動や核保有をちらつかせたり発言するのではなく、国際社会と一致して外交的努力を重ね打開をさぐるべきである。
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中川核保有発言を問う沖縄県知事選
自民党の中川昭一が北朝鮮の核実験問題にかこつけて、つぎのように語ったことはすでに知られている。
日本が攻められないように核という議論があっていい。非核三原則は守ります。しかし議論は大いにしないといけない。 |
政府・自民党はこの発言が広まると、火消しに大わらわであった。
朝日新聞によれば、加藤紘一元幹事長は16日、「国際的に波紋を呼ぶ。自衛隊にはかなりの力がある。そこに核を持つ構想があるとなると、北朝鮮の核保有よりショッキングだ」と語った。山崎拓安全保障調査会長も講演で、日本の安保戦略の観点から「日本の戦略目標である朝鮮半島の非核化に対し、我が国が核武装することで問題を解決しようというのは論理が成り立たない。日米同盟もこれで崩れる」と力を込めた。
中川自身は自らの発言について16日、「私ももとより核武装反対論者だ。非核三原則を守ることは昨日も申し上げている」と釈明したが、「北朝鮮のような国が核を持ったと発表しているのであれば、核を持たずに日本の安全をどう守るのかを議論すべきだという観点で言ったことだ」とあらためて語っている(朝日新聞)。
しかし、中川のこの発言は、この緊迫した時期に本音がつい出た、あるいは飛び跳ねた発言という程度のものではなく、安倍政権・与党自民党の重要ポストにつく人物が語ったものだけに私はこれを軽視することはできない。核武装を説く人物が政党中枢を担う自民党の安倍政治がいかに危険か、十分想起させるにふさわしい出来事ではないか。
そうすると、米軍基地を抱え、常に核の脅威のなかにある沖縄の県知事選挙では、中川の暴論に象徴される安倍政権の危険性、要するに日本に核武装が必要か否かを核実験に乗じて語る安倍政治、これが問われなければならない。
すでに中川発言については、長崎市長・伊藤一長がつぎのように語っている。
北朝鮮の核実験強行という緊張した国際関係の中で、与党政策責任者のこうした発言は、被爆地の市長として看過できない。被爆者をはじめ、市民も怒りと不安を感じている。 |
被爆都市の主張として当然で適切なコメントだと考える。その上で、伊藤は「非核三原則を堅持しながら、外交交渉の場で、北朝鮮の問題を解決していくこと」を求めた。
同じように、米軍再編・新基地建設という問題をかかえる沖縄で、県知事選に立候補する予定の糸数と仲井真は今こそ自らの見解を示すべきだ。
仲井真は、琉球新報によれば、基地問題にふれてつぎのように政策発表でのべたが、きわめて曖昧な表現にとどまっている。
米軍普天間飛行場移設問題では「現行のV字形(沿岸)案のままでは賛成できない」と強調。ただ具体的な対応は「地元の意向や環境などに十分配慮しつつ、政府と協議し確実な解決を図る」とするにとどめた。 |
一方の糸数は明確。つぎのように語っている。
米軍再編による「新基地ノー」という声を沖縄から全国に発信したい。私が立候補を決意した最大の思いです。
今回の知事選は、沖縄だけの、一地方自治体の選挙ではありません。各地で基地を抱えている地域の方々に与える影響も大きい。そのみなさんの思いを受け止めて、何としても勝ち抜きたい。 |
糸数がのべているように、(沖縄知事選は)タカ派といわれている安倍新内閣が初めて迎える知事選だ。知事選では中川核保有発言も問われなければならない。その政治的意味は大きい。
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北朝鮮再実験準備の報道を前に -姜尚中インタビュー

米ABCテレビなどは16日、米当局者の話として、北朝鮮が9日に核実験を実施した場所の近くで、不審な車両の動きを偵察衛星がとらえ、2回目の核実験準備の可能性があると相次いで報じた。 |
この北朝鮮の行動が事実とすれば、ライス国防長官が18日から予定している日本、韓国、中国およびロシアの訪問をにらんだ行動だというのは明らかだ。
核実験報道後、いっそう緊迫した事態にある現在、あらためて冷静な対応が求められるのはいうまでもない。中川昭一が核保有について語り、諸外国から警戒の声が相次いでいる。こんな東アジアの緊張した局面に私たちは立たされている。
東京新聞が14日、姜尚中にインタビューしている。姜は、「これから数カ月間は『外交の曲芸』が試される。拉致問題で留飲を下げればいいという一次方程式ではなく、多次元方程式。北東アジアで戦争をすることは中東での戦争とは訳が違う。世界でこれだけの大規模な軍事力が密集している場所はない。ここで戦争が起きたら、第三次世界大戦以上のものになる」と語り、冷静な分析をもとにした対応を求めている。
以下、東京新聞からの引用。
――――――――――――――――――
■宣言の意味タイミング
――北朝鮮が核実験に踏み切った。その直前の三日には予告の宣言文を発表した。宣言文の意味と実験のタイミングをどう読むか。
宣言文はよく練られているが、かなり悲壮だ。外務省が国内向けに発表しているのは体制引き締めを狙ったから。最も意識する米国に対しては「核保有国として認知されたいし、今となっては必然だ」というメッセージとともに「交渉の余地があり、非核化にコミットする」と伝えている。特に「核の拡散や核兵器流出は一切しない」という部分は核関連物質や核技術の流出、移転を恐れる米国の懸念を消そうとしている。
その一方で、北朝鮮は今まで米国が武力衝突を挑んだ国で、核保有国が一つもない現実を知っている。
実験のタイミングは絶妙だった。米中間選挙前で米国内での争点化には最もよい時期。さらに朝鮮労働党の創建記念日が翌日で、中韓日をめぐる安倍外交の開始も当然、意識している。
■枠組みは 崩れたのか
――今回の実験で2003年以来の六カ国協議の枠が崩れたといわれるが。
六カ国協議は生きている。楽観論かもしれないが、今後の展開によっては北朝鮮が六者協議に復帰しないとは断言できない。
北朝鮮を含め、六者協議が死滅したと公式に言っている国はない。言ったら恐ろしいことになるからだ。六者協議は、二者、三者、四者での協議もある複合的フォーラム。その意味では米朝直接対話とも矛盾しない。六者協議がダメになったということは、すべての問題を国連に移すことであり、そうなれば破たんするのは目に見えている。
つまり、国連という表通りでことを構えれば、行くところまで行ってしまう。ところが、米国も湾岸戦争のような多国籍軍はつくれない。結局、あいまいだが実質解決できるのは六者協議の場しかないのだ。
ブッシュ政権には米朝国交正常化寸前まで行ったクリントン前政権とは対照的に、北朝鮮に対する統一的なポリシーがない。あるとすれば、金融制裁もそうだが問題を解決せず、現状を凍結するだけだった。
だが、北朝鮮には米国につきまとう理由がある。それは米国も加わった朝鮮戦争の休戦協定だ。これを変えねば、北朝鮮は国際通貨基金(IMF)にもアジア太平洋経済協力会議(APEC)にも入れない。
米国が北朝鮮の望む「相互不可侵条約」をいますぐ締結するとは思えない。
ただ、中間選挙で上下院で共和党が大幅に後退すれば、ブッシュ政権はレームダック(死に体)になる。ほどほどに負ければ、米国は二国間協議には応じず、その場合、北朝鮮はこれをしのいで次の政権に代わるのを待つ。その間に核開発を進める。北朝鮮はすでに退路を断っている。
■中韓両国の本音と行動
――今回の実験で韓国の太陽(融和)政策が失敗し、中国のメンツがつぶされたという評価がある。両国の本音と次の動きをどう予測するか。
中国にとって、北朝鮮の核保有は必ずしもマイナス面だけではない。もちろんドミノ現象で台湾や日本が核を持つことは危ぶむが、最も恐れる北朝鮮の体制崩壊を防げるというメリットも忘れてはいない。
中国が北朝鮮への食糧供給を止めたときは完全な兵糧攻めになるが、国連が制裁を決議しても、最後までこれはしないだろう。
中国が一番恐れるのは経済封鎖や臨検から偶発的な衝突が起きることで、それをどこまで防げるか。その危うさが分かっている分、中国は六者協議への復帰を必死に説得すると思う。
韓国はどうか。この間、進めてきた太陽政策の柱は軍事的な優位に立ったうえで、融和政策を進めるということ。一言で言うと「北朝鮮安楽死」政策だ。
これは甘いどころか、一見なだらかだが一番過酷な政策だ。国連制裁が課せられても、韓国が太陽政策を変えることはないだろう。
盧武鉉大統領は今、必死になって平壌との首脳会談をアレンジしているかもしれない。もともとミサイル発射がなければ、金大中氏が訪朝する予定だった。盧政権は来年でレームダックになる。やるなら今年中か来春。そのために近く、金大中氏を平壌へ派遣する可能性がある。
さらに盧政権は、米国が軍事衝突に前のめりになる状況をコントロールすることにも神経を使うだろう。戦時統制権を米国が握っていると、国連軍の名の下に朝鮮戦争をもう一回やることになりかねない。それゆえ、米国から戦時統制権の返還を求めている現在の政策を継続するだろう。
■日本は どうする
――こうした情勢下、日本は制裁の方法をめぐっても強硬論に傾きがちだ。
北朝鮮は圧力では動かない。戦時下が数十年、続いているのだ。北が核を小型化し、ミサイル搭載を可能にすれば、たとえ超大国アメリカでも手が出せない。
こうなると終わりだ。拉致問題も大切だが、優先順位が違う。核は何十万人死ぬか分からないのだから。今回の実験で多くの人が「ここまで来るのか」と息をのんだのではないか。世論と外交の溝を埋められなかったツケが来ている。
日米同盟というが、米国と日中韓の根本的な違いは地政学的なリスクだ。武力衝突になれば、後方支援にとどまらず、現実的に空中警戒管制機(AWACS)などが北朝鮮への武力制裁に加わる。そこまで想定せず、強硬にやるべしと言うのは無責任にすぎる。
この問題で、日本は落としどころを考えなくてはならない。新政権は今回の問題が政権の命取り程度でなく、国の安危にかかわるという重さを認識しているのか。日中韓で米国の過剰さを止めなくてはならない。
■世界で進む 核の拡散
――北朝鮮のみならず、冷戦的な米国による核覇権の論理は崩れ、世界では核拡散が一段と進んでいる。
たしかに戦術核や小型の核が使われ、拡散していく可能性は強い。止めるすべもない。さらに欧米は北朝鮮問題をイランの核問題とリンクしてとらえている。
これから数カ月間は「外交の曲芸」が試される。拉致問題で留飲を下げればいいという一次方程式ではなく、多次元方程式。北東アジアで戦争をすることは中東での戦争とは訳が違う。世界でこれだけの大規模な軍事力が密集している場所はない。ここで戦争が起きたら、第三次世界大戦以上のものになる。
今回は中韓と連携できたが、小泉政権だったらパニックになっていた。北東アジアには安全保障の枠組みがない。せめて東南アジアのような多国間の枠組みをつくるべきだ。北朝鮮問題は試金石。ここをクリアすれば、六カ国協議が緩やかな多国間の安全保障のフォーラムにもなりうる。
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太田光の読み方 -田中優子編

田中がいおうとするのは書評末尾のつぎの言葉に尽きている。
「遺産」になってしまったものを現実の力にするには、また難関が待っているに違いない。 |
太田と中沢二人が憲法を世界遺産にしようというのを逆手にとって、田中は「遺産」、つまり日本国憲法がほんとうになくなってしまい、過去のものになってしまったら、たとえば文書としてのみ残ったとしたら、と仮定して語っている。そうなったら-カッコでくくられた遺産が再び-現実の規範になるのは困難だろう。その意味で九条は「二度と取り消しがきかない」ものだという太田・中沢の主張はほとんどうなづける。
田中はまた、つぎのように語っている。
時代の変化に従い、社会の実情に合わせて理想を改変しよう、という考えを「堕落」という。憲法九条問題は、人が堕落しないでいられるその仕組みを、社会が失ったところに立ち上がってきた。憲法九条の存在は唯一の俗を超えるものとして、私たちの生活の中に措定できるものなのかも知れない。だとするとこれすらも喪ってしまったとき、日本人の精神はどうなるのだろうか? |
だから文字どおりの遺産にしてしまってはならないということだ。
憲法九条を失うという喪失感は、おそらく戦前の日本の精神を失うという、まさに「堕落」の極限をへて時の権力者が実感したであろう敗戦後の喪失感と、対極のものである。安倍をふくめて戦前への回帰を唱える者が克服しようとする敗戦直後の喪失感は、二人がいうように「血が結び合う共同体への愛情」にこそその根源があるだろう。
『憲法九条を世界遺産に』が発売されて間もないうちにこれを私は読んで、太田光と安倍晋三の言説をいくつか比較し、「安倍晋三と太田光の落差」という文章にまとめてきた。最近は少なくないブロガーのみなさんが二人の著書を取り上げている。その多くは憲法九条の意義を説き、改憲への流れに抗おうとしている。
太田光の言説がこんなふうに書評で取り上げられて、そして語られ、また、その本がよく読まれるのは、彼がお笑い芸人として世に知られているばかりでなく、何かをいう人物だということが同時に知られているということの証であるだろう。太田に何かを期待する人は、その彼のいうところによって自らの立ち位置を確かめるにちがいない。また、太田の言動を快く思わない、あるいは思ってこなかったものは、その意味であらためて太田の存在を再確認し、それゆえこれまた自らの立ち位置を確認することになるだろう。なにしろお定まりの「太田死ね」の悪罵が集中するほどの、試され済みの人物なのだから。
田中の書評はこんなことを考えさせた。
『憲法九条を世界遺産に』をひとつの拠り所として、憲法の問題を考え、安倍政権をみ、そして自らの位置を確かめてみるのも決して悪くはない。
【参考エントリ】
安倍晋三と太田光の落差3
安倍晋三と太田光の落差2
安倍晋三と太田光の落差
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安倍政権と衆院補選、沖縄県知事選

新聞報道によれば、神奈川で自民有利、大阪は自民が民主の後塵を拝するという見方のようだ。大阪も自民が肩を並べたという評価もある。
北朝鮮核実験の及ぼす影響はいうまでもなく少ないとはいえない。報道によれば民主党自身(鳩山由紀夫)がそのことに懸念を示し、どう巻き返すかについて語っている(毎日新聞15日付)。
マスメディアの論調はお決まりの自民・民主の争いで、しかもその主張に違いがないという。だが、争点が安倍内閣のすすめようとする日本国憲法と教育基本法改定、そして消費税増税にあるとすれば、その対決軸はかわってくる。はたして自民党と民主党の争いか。マスメディアはこの際、その報道姿勢を率直に点検すべきではないのか。
マスメディアの報道姿勢について直近の一例をあげる。
教育基本法が現局面の政治的対決点の一つであることを疑う人はいないだろう。
たとえば、教育基本法の改定に反対する集会が14日おこなわれ、実に2万7千人が集まったという。集会では佐高信や上原公子国立市長が挨拶している。しかし、これを報じたメディアがどこにあったか。
情報操作は確実におこなわれている。メディアは黙殺している。とくに小泉政権下でのマスメディアの姿勢に常々、私は疑問をもってきたが、この中央紙のていたらくにあらためて唖然とせざるをえない。
その上で、この2つの国政選挙以上の意義をもつ選挙として沖縄県知事選挙をあげておきたい。先日、同選挙を一度とりあげたが、あらためてふれることにすれば、沖縄県知事選挙はつぎの意味をもっている。
その一つは、曲折をへたとはいえ、野党共闘が成立をし、安倍政権と正面からたたかう候補者を擁立できたことである。参院議員だった糸数慶子が自民・公明の推す仲井真弘多と知事の椅子を争う。一部のマスコミはガラスの共闘と揶揄したが、野党共闘でたたかうという意味は大きい。沖縄固有の条件があるにしても、仮に野党が勝利することになれば沖縄の野党共闘が首長選挙の勝利型を示すことになる。
第二は、憲法改定を争点とする選挙だという点である。安倍内閣が憲法改定をねらい集団的自衛権の検討をもちだし、米軍基地再編を実施する内閣である以上、米軍基地をもつ沖縄の知事選はまさに憲法改定、基地再編、そして「戦争をする国」づくりの是非を問う選挙になるだろう。その意味で、先の2つの選挙以上に政局に与える影響は大きい。
糸数が勝てば、安倍が大打撃をうけることはまちがいない。それだけに自民党は、そして公明党=創価学会も総力をあげることになる。まさに、それがアメリカの意向でもあるだろう。
10月、11月のこれらの選挙は安倍にとっても来年の参院選の前哨戦と位置づけられる。沖縄で安倍が負ければ、政権そのものを大きく揺るがすことになる。
【参考エントリー】
安倍政権の今後占う沖縄知事選
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閑話休題 -11 国連安保理が北朝鮮制裁決議を採択

以下、朝日新聞からの引用。
国連安全保障理事会は14日午後(日本時間15日未明)、核実験を発表した北朝鮮に対する制裁決議案を理事国全15カ国による全会一致で採択した。 決議は、北朝鮮による核実験を非難し、核不拡散条約(NPT)からの脱退宣言の撤回などを求めている。強制措置を認める国連憲章7章に基づいて行動することを明記すると同時に、経済制裁など非軍事的措置を定めた同章41条も併記。北朝鮮の核・弾道ミサイル計画に従事していると認められた個人や団体の金融資産凍結などの制裁措置を定めている。 常任理事国と日本の6カ国はいったん米国案をもとに基本合意。これを受けて米国は13日、安保理の理事国8カ国と議決権のない韓国の計9カ国を提案国として同案を公式文書にしたが、その後、中国、ロシアが一部の表現について再修正を求め、交渉を続けていた。 関係者によると、中国は協議の大詰めの段階で、強制的な措置を伴う船舶などの貨物検査について、各国の判断がより尊重される形で決議案を修正するよう求めた。ロシアも、禁輸の対象となる大量破壊兵器関連品目の定義を狭めることなどを要求していた。 |
しかし一方で、軍事的行動も視野に入れたつぎのような発言があることを重視したい。オーストラリアの首相の発言である。以下、毎日新聞からの引用。
オーストラリアのハワード首相は13日、核実験実施を発表した北朝鮮への対応について、「軍事行動も選択肢として排除しない」と豪メディアに述べた。AFP通信が伝えた。 ブッシュ米大統領との電話協議の後でインタビューに答えたハワード首相は「軍事衝突は誰も望まないが、相手は国際社会からの圧力に応じない国家だ」と北朝鮮を非難。経済制裁などとともに軍事行動の可能性も排除しないと述べた。ただし、「外交手段が尽き、国際社会が一致して認めない限り、オーストラリアは行動を起こさない」と語った。 |
核実験は許されない暴挙だが、それにたいして軍事的な対応をもってこたえようというのは、戦争への未知を開くことになる。オーストラリア首相の今の時期のこの発言はただし書きがついているとはいえ、事態を危険なところに招くものだといえる。
【関連エントリ】
米主導の制裁決議案
「核実験」その後 -核実験が明らかにしたもの
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米主導の制裁決議案
北朝鮮核実験を契機に、一気に浮上した、「臨検」や北朝鮮を対象とした船舶検査活動を後方支援するための特別措置法。しかし、これを具体的に前にすすめるためには、国連安保理事会で「第7章にもとづく制裁」という決議が必要になる。
国連で北朝鮮制裁決議案の内容をめぐって、各国間の調整がおこなわれ、ほぼ固まったようだ。報道によるかぎり、やはりアメリカの影響力は貫かれた。
安保理での最大の対立点は、7月ミサイル発射時もそうだったが、今回も「国連憲章第7章」への言及だった。最終決議案では、朝日新聞によれば、7章下の制裁という原則は守ったまま「(経済制裁などに限定した)41条に基づく措置」と併記している。
中国は、「北朝鮮に十分な圧力をかけつつ、事態を良くするための余地を残しておかねばならない」(王光亜・国連大使)という発言にみられるように、北朝鮮への生産は非軍事的な形という主張をくりかえし、この中国の合意をどうとりつけるかが政策決議がまとまる最大のポイントでもあったようである。最終決議案は、7章下の制裁という原則は守ったまま「(経済制裁などに限定した)41条に基づく措置」と併記し、決議が軍事行動への一歩となりかねないとの中国の懸念に配慮した。
北朝鮮に出入りする貨物の検査についても、米国決議案(12日提示)が「加盟国が必要と考える措置を取るよう義務付ける」としていた。しかし、最終決議案は、核兵器などの武器の不正取引を防ぐための各国による「協調行動」の一例としてあげ、強制的な意味合いを薄め、国内法に基づいて適切な措置が可能であれば実施するとの趣旨に修正した。
しかし、以上のことから推測できるように、北朝鮮の動きはほとんどの行動が規制される。これを朝日新聞は、米国にとって「北朝鮮を出入りする人、モノ、カネの動きを規制して監視する。かつての対イラク並みの本格的な制裁の発動になる」としている。
久間章生防衛庁長官は13日、特措法検討の考えを示したり、「臨検」後方支援に言及したりと、まさに好機ととらえて、集団的自衛権の行使を視野にいれた動きをとった。だから、米軍の後方地域支援をする周辺事態法を使うのか、多少の時間をかけても、より活動範囲の広い特別措置法を新たに制定するのかについて議論を一歩先にすすめようとすした安倍政権にとって、今回の安保理決議案に強制措置を含む「国連憲章第7章」が残ったことに、安倍政権としては正直なところ安堵していると予想できる。
ともあれ、今回の国連安保理制裁決議案は非軍事的な内容で決着した。安倍がすでに集団的自衛権を検討するといった中身が、来た朝鮮の核実験を契機に、その検討内容の一端が明らかにされたといえる。
毎日新聞はつぎのように日米の共同体ぶりを伝えている。
塩崎恭久官房長官は13日、首相官邸でシーファー駐日米大使と会談。大使は決議案の船舶検査について「日本が憲法の制約の中で意味のある貢献をしてくれることに自信を持っている」と協力を要請。会談後には記者団に対し「日本が見せかけの寄与ではなく、内容のある貢献をしてくれると自信を持っている」とも語った。
日本はアメリカとともに強い決議を求めてきた。アメリカを前に、船舶検査で日本だけが「何もしない」という選択肢は取りにくい事情がある。
日本は、より活動範囲の広い特別措置法を制定するのかを俎上に乗せたという意味では「戦争する国」づくりへ一歩踏み込んだといえる。
閑話休題 -10 教育再生会議によせる和民社長の「夢」

メンバーを一瞥して、とても胡散臭いと思わずにいられなかったけれど、日経新聞(13日付)でそのことを再認識させられた。
渡辺美樹がいいたいことをいっている。一民間企業の経営者の頭のなかで考えている、他からの評価に耐えていない自論がそのまま具体化されてしまえば、とんでもないことになる。たまったものではない。関係部分を引用し、読者のみなさんに判断してもらおうと思う。
問;安倍晋三首相も免許更新制の導入などで問題を抱える教師に退場を迫る方針のようだ。 渡;研修を受ければ済むような更新制はだめ。問題教師をクビにするぐらいでないと。私が経営する学校では教師に成果主義に基づく賃金体系を導入し、生徒や保護者、教師同士が評価する仕組みにしている。評価の高い教師の給料を増やすなど、教育現場にも競争原理を働かせるべきだ。教師も失業と向かい合う必要がある。 問;学校の選別が進みそうだ。 渡;だめな教師が集まっている学校はつぶれてもいい。そんな先生に教わる子供への悪影響こそ考えるべきだ。私は異論の多いバウチャー(利用券)制度の導入も訴えたい。各学校が「うちならこういう能力を伸ばす」とアピールし、各人が行きたい学校を選ぶ。金メダルを取れる学校、出来が悪いとされる子供の能力を育てる学校などが登場するのでは。 問;理想の教育システムとは。 渡;日本の教育は大学に入るための勉強がすべて。しかも受験しない子供の学力は相当落ちている。「教育再生」を掲げるということは、首相も今の教育は死んでいるという前提に立っているrのだろう。厳しい意見をいってもよいとのことなので、再生会議では今までの流れを断ち切る改革に取り組みたい。 |
どうだろうか。「教育は死んでいる」という安倍の言葉の是非は措くとして、正直いって私は開いた口がふさがらない。
和民ではどんな労務管理がおこなわれているか。そして、郁文館とはどんな学校なのか、とても興味がわいてきた。さぞかし、円滑な労務管理が展開され、また、夢のような、理想的な教育がおこなわれているにちがいない。逆に、その対極にある企業社会と教育がそこにはある可能性もないわけではない。
渡辺美樹は、和民をふくむワタミ株式会社の創業者及びCEO。また、郁文館の理事長。ちなみに郁文館は学校法人郁文館夢学園が正式な名称。
(教育再生会議メンバー)
浅利慶太(劇団四季代表)▽池田守男(資生堂相談役)▽海老名香葉子(エッセイスト)▽小野元之(日本学術振興会理事長)▽陰山英男(立命館小副校長)▽葛西敬之(JR東海会長)▽門川大作(京都市教委教育長)▽川勝平太(国際日本文化研究センター教授)▽小谷実可子(スポーツコメンテーター)▽小宮山宏(東大総長)▽品川裕香(教育ジャーナリスト)▽白石真澄(東洋大教授)▽張富士夫(トヨタ自動車会長)▽中嶋嶺雄(国際教養大学長)▽野依良治(理化学研究所理事長)▽義家弘介(横浜市教委教育委員)▽渡辺美樹(ワタミ社長)
【参考エントリー】
安倍晋三の語る「教育の再生」 -安倍の出方6
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「核実験」その後 -核実験が明らかにしたもの

過去にさかのぼれば、天変地異にかこつけ国民がおどらされた経験を、関東大震災に求めることができる。事実無根の流言が飛び交い、社会不安はいやが上にも高まった。
私たち自身もすでに、北朝鮮ミサイル発射はつい最近のこととして記憶に刻まれているだろう。このときも日本中が浮き足だった。そして、核実験の知らせ。むろん現実のものになれば影響は計り知れないが。
「東京新聞」特報(10月12日)が面白い記事を書いている。因みに同欄では前日、「北朝鮮の核実験は本物か」と題して記事をまとめている。
この記事は、日本のメディアそのものがいわゆるガセネタに動かされて、いかに報道しているのかをえぐり出している。長文だが全文を掲載する。
一方、アメリカの動向は今のところ、きわめて冷静のように私にはみえる。その意味では、日本だけが「あわてふためき」、あるいはこの際とばかり看過できないことを閣僚がいってのけるなど、過敏症にあきれるばかりである。
そして、安倍首相は12日の参院予算委員会で、核実験実施を発表した北朝鮮に対して日本独自の追加制裁を決めた理由について、「ミサイル能力を向上させ、核実験を行ったと宣言したことから考えれば、日本に対する脅威は倍加した。地域に対する脅威だけでなく、まさに日本こそ脅威を受ける中で厳しい措置を決定した」と述べた。
その上で、北朝鮮が今後も核開発を継続させた場合について、首相は「日本に対する攻撃は自国への攻撃であると宣言している米国の存在、日米同盟による抑止力は揺るぎない」と強調。米国による「核の傘」を前提に対応する考えを示した。
私はこの点が重要であると思う。日本がまさにアメリカの目下の同盟者としてふるまう現実を明らかにする言動だし、アメリカの対応が局面を動かすことをこれは示している。
以下、東京新聞からの引用。
――――――――――――――――――
核の脅威が日本列島を震え上がらせている。十一日朝は、「北朝鮮が二度目の核実験を実施」という誤情報が国内を駆けめぐり、世界に飛び火した。今後、実験再実施の可能性は十分に有りそうだ。しかし誤情報は、なぜ独り歩きしたのか。不安の高まりが混乱を誘発したとしたら、北朝鮮が仕掛けた情報心理戦の術中にはまったようなもの。日本の危機管理は大丈夫か。
第一報を流したのは日本テレビ。「北朝鮮が午前七時四十分、二回目の地下核実験実施と政府関係者」というテロップが午前八時二十三分と同二十四分に流れた。
同三十二分ごろには、NHKがニュース番組で「北朝鮮二回目の地下核実験の情報 政府が確認中」と速報。アナウンサーが「政府関係者によると、今朝、北朝鮮で揺れが観測されたという情報があり、政府は北朝鮮が核実験を行った可能性もあるとして情報の収集を急いでいる」と伝えた。
テレビ朝日も同四十四分ごろ、北朝鮮問題の特集番組で、コメンテーターが「北朝鮮が二回目の核実験を実施したという情報があるが現在確認中」と話した。
■皮肉まじりに否定情報発信
しかし九時ごろ、韓国の聯合ニュースが「異常な動きは全くない」とする青瓦台(大統領官邸)当局者の談話を配信。韓国の地質資源研究院も「北朝鮮ではどのような地震波も感知されていない」と発表し、AP通信や米FOXテレビなど欧米メディアも否定する情報を流した。韓国のニュースチャンネルYTNは青瓦台関係者の話として「地震波は全く検知されていない。日本だけ検知されたということはあり得ない」と皮肉たっぷり。
■3時間経過し誤報を認める
結局、日本テレビは十一時半のニュースで「現時点で北朝鮮が核実験を行ったとの確認に至っておらず、引き続き情報収集を行うとともに、内容を訂正し、おわびします」と「誤報」を認めるが、取材源の秘匿の原則を理由に情報の出所を明らかにはしなかった。
この間、日本列島は上を下への大騒ぎだった。
地震波を観測する気象庁にはマスコミの問い合わせが殺到した。午前八時五十八分ごろには、福島県沖を震源とするマグニチュード(M)6・0の地震も発生しており、核実験と結びつける憶測が混乱に拍車を掛けた。気象庁は九時半、「十一日午前五時から八時半の間、北朝鮮北部周辺を震源とすると思われる振動波形は観測していない」と発表し、火消しに追われた。
防衛庁は午前九時四十五分、副長官を筆頭とする対策本部会議を開き、「特異な地震波はキャッチされていない」という気象庁の情報を確認。二十四時間態勢で警戒していた外務省でも、米国、中国、韓国などから情報を収集したが、「具体的な兆候は把握できなかった」とした。
しかし、麻生太郎外相は同日午前の参院予算委員会で「今日中に二回目の核実験を行うであろうという情報に接している」と述べていた。防衛庁広報課は「ノーコメント」とするが、別の政府関係者にも「数日中に核実験が行われる可能性がある」という米軍からの情報が入っている。
米国大使館は「コメントを可能にする情報を持っていない」としているが、この「予測」情報が勘違いされて伝わった可能性は否定できない。韓国軍関係者が「北朝鮮が核実験をするという情報はあった」と述べた報道もあり、韓国軍も同様の情報を把握していた可能性もある。
基地の町にも激震が走った。米軍、自衛隊の航空基地がある青森県三沢市基地対策課は「報道を受けて、米軍に警戒レベルを確認したが、四段階の一番下で通常通りだった」と話す。
しかし、三沢基地周辺町内連合会の岩本芳勝会長は「まさかと思ったが、あの国だから、追いつめられればやるのかと思った」と驚いたという。同基地では、自衛隊のT4練習機が放射性物質の粉じんを観測していることもあり、住民の関心は高い。岩本会長は「自衛隊も米軍も平静を装っているが、頻繁に訓練空域に飛んでいる。核実験があった後は、余計にそう感じる」と不安を口にする。
なぜ、ガセ情報は駆けめぐったのか。
軍事や危機管理の専門家たちは「不確定情報にメディアも政府も振り回されるのは、北朝鮮の核問題が情報心理戦に突入したことを示している」と指摘する。
北朝鮮のやり口は巧妙だ。二〇〇三年に核保有を表明し、今月三日には核実験を予告していた。そこまで手順を踏みながら、肝心の実験の映像は公開しなかった。これは普通ではない。
従来の核保有国は核実験の映像を世界に向けて公開してきた。「爆発の映像を見せ、相手の国をひるませることで、初めて軍事的な抑止効果が得られるからだ」と軍事ジャーナリストの前田哲男氏は話す。
だが北朝鮮は違った。「情報を小出しにしているため、こちら側が最悪のケースを想定して疑心暗鬼になっている。主導権が北朝鮮に握られてしまっている。少ない賭け金で大きな勝負をする、相当したたかなやり方だ」と前田氏はみる。
今回最も控えめな反応をしているのは米国かもしれない。「米国は北朝鮮が本当に核実験をやると予想していた。それに加え、北朝鮮が小出しに切ってくる核カードで交渉のテーブルにつくのは得策ではないと分かっていた」(前田氏)ことが背景にある。
■政府情報にも問題点あった
軍事ジャーナリストの神浦元彰氏は、今回情報に踊らされたもう一つの要因として、「日本政府が適切な情報を出さなかったせいでもある」と強調する。
そもそも軍事の世界では、核実験は短期間の間に複数回するのが常識だ。九八年五月にインドとパキスタンが相次いで核実験を行ったときは、インドが五回、パキスタンは六回の実験をほとんど日を置かずに実施した。複数回の実験で信頼性を高めなければ核武装するまでに至らないからだ。
「『北朝鮮は一回目の実験で失敗したので二回目を行う』という報道があるが、これは完全に間違っている。一回目に成功したら、立て続けに二回目、三回目の実験を行うのは当然のこと。二回目がないとしたら、それは実験が成功したことを意味するのではなく、まだ核武装する能力がないか、それとも成功してはいても核武装までする意志がないかのどちらかだ。政府は二回目、三回目の実験が当然あり得ると国民に向かって適切に情報を出すべきだった。そうすれば今回のようなことにはならなかった」と神浦氏は政府の対応を批判する。
情報心理戦になったとき、心得るべきことは何なのか。
■事実を把握し冷静に対応を
危機管理コンサルタント「リスク・ヘッジ」の田中辰巳代表は、企業の危機管理にかかわった経験から「暴力団やエセ右翼団体から脅迫されたり、インターネット上で誹謗(ひぼう)中傷されても、過剰反応したらかえって相手の術中にはまってしまう。北朝鮮に対しても同じことだ」としたうえで、こう話す。「危機管理の第一歩は事実を正確に把握し、それに即した対応策を冷静に練ることから始まる。相手を過度に怖がったり右往左往することは、最もやってはいけない愚策だ」
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納税者よ、反乱を起こせ! -新自由主義考

ある方からコメントをいただいた。ある面では、日本のいまの社会を象徴し、映し出すような内容のお尋ねのコメントだと思う。
以下、私が答えたコメントからはじめたい。
――――――――――――――――――
ご両親の負担額はたいへんなものですね。
この10月からはエントリーに書いているようにさまざまな形で国民へのしわ寄せが実施されたことに国民はもっと目をむけてもよいのでは、と私は率直に思っています。
医療費や介護利用料はそれぞれ異なる要素があると思いますので、高齢者への税金の負担がどのようにふえているのか、○○さんがあげられているケースで少しみてみました。
■70歳・一人世帯で300万円の場合
・定率減税の全廃、公的年金等控除の縮小、老年者控除の廃止、介護保険料値上げなどで負担増は、103,000円。
・これに消費税が10%になれば、さらに103,000円増えることになります。
■70歳・二人世帯で500万円の場合
・定率減税の全廃、公的年金等控除の縮小、老年者控除の廃止、介護保険料値上げなどで172,000円。
・「サラリーマン増税」になったらさらに71,000円、消費税額が10%になったらさらに 151,000円増え、合計394,000円の負担増となります。
いずれも、概算値で、「負担増」は2005年と2008年の比較です。
「サラリーマン増税」として、(1)給与所得控除を半減(最低額は65万円)、(2)配偶者控除、扶養控除、特定扶養控除を廃止――を仮定しています。
以上は、日本共産党の負担増シミュレーションにもとづいています。同党のホームページでシミュレーションが可能です。
私は、片方で大企業への減税を実施しながら、これらの負担増がおこなわれることに目をむけることが必要だと思うのです。たしかに、世帯構成や所得の多寡によって違いは生まれますが、高齢者全体、国民全体への負担増が大企業への優遇の裏返しであることが最も重要だと考えています。
――――――――――――――――――
上にかかげたやりとりの発端は、10月1日から実施された「現役並み高齢者」への負担強化である。
この方からのコメントは、50代後半といわれるご自分の両親が300万円弱の世帯年収から毎月10万円程度の医療費介護費を負担していること、一方で、一人世帯で300万円以上、二人世帯で500万円以上の年収がありながら3割の医療費が負担できない高齢者がいるが、負担できないなんて(自分の両親と比較すれば)よほど贅沢な生活をしているのではないか、という主旨だと理解した。
本来であれば、私自身が試算してみて返答すべきところだが、例によって時間がないため、上記のとおり日本共産党のホームページによって算出した、というより解答してもらったというわけだ。
私が伝えたかったのは、上記に尽きている。繰り返すと、医療や介護は健康の問題をはじめそれぞれの世帯の実情が異なり、ちがいも大きいため、税をとって庶民にとってはいちようにしわ寄せがかかっていることであった。しかも、その裏側にー私は法外と考えるが-大企業減税があることである。
安倍晋三は「階級史観」という言葉をもちいたが、この問題では、安倍のいう「階級史観」にあえて立たなければならないと考えている。ここには、どの階級のための政策かが明確に貫かれているからだ。要するに、一連の「税制改革」でおこなわれ、おこなわれようとしているものは、いっそうの大企業優遇といっそうの庶民いじめである。
小泉が政権についていたここ5年半ばかりで新自由主義という言葉も知られるようになった。今日、格差社会という単語は、まさに熟した言葉になった。新自由主義とは、誤解をおそれずにいえば、富める者はより富み、貧しき者はより貧しくするものだといえる。先の「税制改革」はこれを端的に示している。
私は庶民の側の収入の多寡によるちがいが現に存在することを認めるけれど、しかし、大事なことは以上に記したような基本点をおさえておくことではないかと思う。そうしないと新自由主義に立ち向かうことはおそらくできない。
これまた流行語にもなった「勝ち組・負け組」とは、つまるところ分断に乗せられることにほかならない。「勝ち組」になろうと煽りながら、その実、ほとんど「負け組」に追い込まれていくのが落ちだ。分断を乗り越えるには、税金のつかいみちについて国民がもっと目をむける必要がある。そして税制がどのように変化しているのかに関心をより寄せていかなければ分断は乗り越えられないと考えている。
アメリカでは1978年、カリフォルニア州で「納税者の反乱」(Tax War)といわれる、高い税金にたいする有権者の運動が起きたが、この日本で起きても少しもおかしくはない現状にある。現に端緒的だけれども、全国のいくつかの自治体の窓口では、住民税が高くなり、おまけに国民健康保険料があがったことに怒りの収まらない高齢者の抗議が相次いだそうである。
納税者よ怒れ!
(写真;石弘光・政府税制調査会会長)
【参考エントリー】
消費税論議の落とし穴
すでに日本は「小さな政府」
安倍晋三の「格差社会論」 -安倍の出方3
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安倍政権誕生から北朝鮮核実験報道まで

かつての風呂敷残業にくらべると、どこでも、手軽にできるように思える。しかし、時間を管理するにはほど遠い。なおかつ仕事と生活の区分はほとんどできない。ついつい「残業時間」がふえ、慢性的な精神疲労に陥りかねない。おそらく今日、こんな状況は誰にでも、どこにでも広がっているのだろう。
私自身、このメール残業をしなくてはならないことも多く、またやろうと試みるのだが、手許に資料がなくて、実際には思ったほど作業の効率があがらなくて困ることも多いのが事実だ。
こんな日常生活のなかでブログを書いているが、書いたものを公開してよいものかどうか、しばしば迷うことがある。限られた情報のなかで、しかもその情報が高度にスクリーニングされている昨今の状況を考えると、あふれるような情報の中から正確な情報を選びとることは我われにとっては至難の業だと思うからだ。躊躇することしばしばである。最後は、居直りで「ええいっ」とアップするのが落ちだ(笑)。
話をかえると、安倍首相が誕生し、ちょうど半月たった。
組閣から初の国会まで彼がどのようにふるまうか、我われは大いに注目してきた。あちこちでみられた、安倍個人の能力に結びつけて考えたくなる答弁やふるまいも数えるのに事欠かなかった。
しかし、組閣前の猟官運動はともかく、ここにきて自民党内での政権維持への結束が強まりつつあることに注目したい。それは、別のエントリーでふれたように、古賀派の古賀誠元幹事長の言動や森喜朗元首相の言葉はそのことを端的に示したものだろう。繰り返しになるが、古賀はこう語っていた。
批判のための批判ではなく、若い安倍晋三首相が誤りのない方向で国のかじ取りができるよう、私たちが役割を果たさなければならない。 |
党内の流れがこのように次第に政権維持を前面に意識するほうに動いていくなかで、たとえばつぎのような発言を目にした。自民党は教育
自民党の中川直秀幹事長は7日、神奈川県厚木市で講演し、教育改革について「10年に1回、教師の免許を見直す更新制の法案を準備中だ。次の国会に出してもらいたい」と述べ、来年の通常国会に関連法案を提出すべきだとの考えを示した。 |
参院選で過半数を確保することは自民党の最大の課題だから、自民党が時期を見計らえばおそらくこのようになるだろう。
こんななかで、9日の北朝鮮の核実験実施の報道は、可能性が指摘されていたこととはいえ、日本の政局にあたえる影響は以下の意味で大きいといえる。自民党の政権維持へのインセンティブをさらに加速させる役割を結果的に果たした。マスメディアはこれをいっせいに報道でとりあげ、国際的な非難のなかで孤立する北朝鮮への指弾と、安倍政権持ち上げに終始している。たとえば「拉致被害者の会」関係者も登場し、いやがおうにも安倍政権への支持と期待を高めるのに一役かった。今朝のNHKは世論調査結果をこの時期にあわせて発表、安倍政権にたいする国民の支持率を公表している。
日常、我われはこのような情報に取り巻かれている。
向こうから情報を「たれ流してくる」わけだから、いよいよ主体的にかかわり、読み解くことが求められている。自戒を込めてこう考えている。
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北朝鮮が核実験 -政府と各党の対応

この核実験の強行は、世界及び東アジアの平和と安定を願うものへの挑戦であり、また、六カ国協議、日朝ピョンヤン宣言にも反する暴挙だといえる。
各党見解(いずれも9日発表)と政府のこの問題への対応を新聞各紙などからひろった。
誕生間もない安倍内閣の対応ぶりがうかがえて面白い。
◆安保会議は5時間後 政権発足直後で不慣れも(政府)
政府は9日午前11時ごろ、中韓両国政府から北朝鮮の核実験実施情報を入手し、11時半に「官邸対策室」を設置。正午前、安倍晋三首相不在中の首相臨時代理を務めた塩崎恭久官房長官らが首相官邸に集まり、対応を協議した。
先週の北朝鮮の核実験宣言後、早期実施もあり得るとして警戒を強めていたことが功を奏した形で、政府の初動対応はまずまずだった。ただ安全保障会議の開催が情報入手から5時間後の午後4時にずれ込むなど、内閣発足直後の不慣れさも見えた。鳴り物入りで就任した小池百合子首相補佐官(国家安全保障問題担当)の出番は少なかった。
気象庁は午前10時35分ごろ、自然界で起きる地震とは異なる地震波を観測。中韓両国からの核実験情報と合わせ、政府は関係省庁の局長級幹部に緊急招集をかけた。
中韓歴訪中の首相は午前11時すぎ、政府専用機でソウルの空港に到着した。午後零時半ごろ、ソウル市内のホテルで記者団に「塩崎官房長官に情報収集するよう指示した」と説明、対応に万全を期していることを強調した。
そのころ官邸には麻生太郎外相、尾身幸次財務相、伊吹文明文部科学相、小池補佐官らが次々参集、対応を協議した。塩崎氏は午後1時5分から、官邸で緊急記者会見し「(北朝鮮実施が)仮に事実とすれば、厳重に抗議し断固として強く非難する」と強調した。
防衛庁でも正午前から幹部らが集まり始めた。久間章生防衛庁長官は衆院大阪9区補選応援のため大阪にいたが、連絡を受けて急きょ東京に戻り、安全保障会議に出席。
米国との関係では、午後1時48分、シーファー駐日米国大使が官邸を訪れ、麻生、塩崎両氏と情報交換した。
しかし北朝鮮の地震が核実験によるものかどうか断定が難しく、“見切り発車”で対応を協議せざるを得なかった。 【共同通信】
◆「重大な挑戦」と抗議声明 与党、国会決議も(与党)
自民党の中川秀直、公明党の北側一雄両幹事長は9日、自民党本部で記者会見し、北朝鮮の核実験情報に関し「事実とすれば、わが国、北東アジア、世界に対する重大な脅威であり、断じて許すことはできない。国際平和に対する重大、深刻な挑戦だ」と抗議する与党声明を発表した。北朝鮮が「国際社会のルールや秩序を無視する」態度を改めない場合、政府による経済制裁強化も求めている。
中川氏は「党利党略を超え、北朝鮮に対する一致結束した行動を呼び掛けたい」として国会決議を行う考えを表明。10日午前の与野党国対委員長会談で提案し、野党側も同意する見通しだ。
国会決議は「実験の強行には正当化の余地はなく、無謀な暴挙を絶対に容認することはできない。唯一の被爆国であることにかんがみ、厳重に抗議するとともに、直ちにすべての核兵器、既存の核計画を放棄することを強く求める」との内容で最終調整している。
与党は9日午後、中川氏を本部長、北側氏を本部長代理とする「北朝鮮核実験問題対策本部」を設置した。 【共同通信】
◆北朝鮮の地下核実験の強行は断じて容認できない;談話(民主党)
民主党北朝鮮核実験対策本部
本 部 長 菅 直 人
国連安保理議長声明をはじめ、国際的に厳しい非難を浴び自制を求められていた北朝鮮が、地下核実験を強行したとされる。事実とすれば、意図的に国際の平和と安全に対する脅威を作り出したものであり、一連の北朝鮮の行動は、地域の安全を弄ぶ危険極まりない蛮行である。国連安保理も含め、国際社会の真摯な警告を無視したもので、唯一の被爆国として断じて容認できない。
北朝鮮は、恫喝を背景にした手法を根本的に改めるべきであり、核開発、弾道ミサイル問題、ならびに拉致問題を始めとするすべての国際社会の平和と秩序に反する行為について、これまで行ってきた行為を全面的に明らかにし、ただちに停止・原状復帰を実施すべきである。
拉致問題に対する不誠実な対応、弾道ミサイル発射に続く今回の核実験は、それらの問題を包括的に解決することを約束した「日朝平壌宣言」の基本精神を完全に踏みにじるものである。政府は、すでに内外からの批判にさらされてきた同宣言を白紙に戻すべきである。
同時に、政府は、今まで日中韓の強固な連携を北朝鮮に対して十分に示すことができなかったこと、それにより北朝鮮が時間を得たことを厳しく自覚し、今後の対応を行うべきである。政府は、国連安保理議長国としてリーダーシップを発揮し、特に、米国、中国、韓国などとしっかり連携して、国連憲章に基づく新たな追加的措置の実施など、必要かつ適切な外交・安全保障上の努力を行っていくべきである。
◆北朝鮮の核実験強行に抗議する(共産党)
日本共産党幹部会委員長 志位和夫
1.北朝鮮政府は、9日、核実験を強行した。これは、国連安保理決議、安保理議長声明などが、世界とアジアの平和と安定への脅威として、一致して反対した国際社会の意思を無視したものである。また、六カ国協議や日朝平壌宣言などの国際取り決めを蹂躙する暴挙である。わが党は、これにきびしく抗議する。
1.わが党は、北朝鮮政府にたいし、核兵器および核兵器開発計画を放棄すること、即時・無条件で六カ国協議に復帰することを強くもとめる。
国際社会がこの事態にさいして、一致協力して対応し、問題の平和的・外交的解決という立場を堅持してのぞむことが大切であると考える。
◆北朝鮮の核実験実施を非難する;談話(社民党)
社会民主党党首 福島みずほ
本日、朝鮮中央通信は、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)が地下核実験を実施したと報じた。
社民党は、北朝鮮が国際社会からの度重なる中止要求を無視して核実験を強行したことに、断固抗議する。
今回の核実験は、昨年参加6ヵ国の間で確認しあった共同声明、及び核問題とミサイル問題についての日朝ピョンヤン宣言に違反するものであり、北東アジア地域の平和を脅かし、相互不信と不安定化を煽るものである。社民党は、アジア、特に北東アジア地域の非核地帯化を実現するために一貫して努力してきており、この観点からも強く非難する。そして、社民党は朝鮮半島の非核化に向けて、関係国に対して働きかけていく。
北朝鮮は、国連加盟国として国連安保理の決議を尊重するとともに、6ヵ国協議に直ちに応ずるべきである。そして、核実験を二度と行わないことを、国連および6ヵ国協議の場で表明することを強く求めるものである。
佐藤優が指摘する -日中首脳会談に寄せて

だからこそ、自民党総裁選の最中に、安倍晋三のひとつの発言が物議をかもした。
日中の首脳会談が再開されたこの時期、この「遺訓」の今日的評価をふくめた、日中間の不正常な関係の克服を、佐藤優が『月刊現代』(11月号)で論じている。佐藤優についてはすでに喜八さん が詳しく書かれているので、そちらをぜひ参照願いたい。
周恩来の「遺訓」とは、一握りの日本の軍国主義者が行った罪過は、中国人民だけでなく日本人民もまた犠牲者であった、というものである。すなわち、一部の軍国主義者によって、煽られ、戦争にかりだされた日本人民もまた犠牲者という意味になる。
佐藤によれば、この「遺訓」は、かつてソ連が平和共存路線をうちだす中で、日本の戦争責任を一部にとどめ、将来、日本の革命の主体たる日本人民とを明確に区別するという、中国自らの革命路線を貫こうとする立場からすれば有益であったというのだ。また、日本からみると、ソ連の平和共存路線と中国の革命路線を比較した場合、日本にとってより影響力が少ないとの判断でこの「遺訓」を利用したにすぎない、と佐藤は分析している。このように日本、中国、それぞれ異なる理由がありながら、それぞれに国益にてらして周恩来の「遺訓」をお互いに利用してきたと、佐藤は指摘しているのだ。
一方で、安倍の発言は、総裁選討論会のなかでの谷垣禎一がこの「遺訓」をもちだし、安倍にその評価を尋ねたところに発している。やりとりをみてみよう。(谷;谷垣、安;安倍)
谷;胡錦濤政権は日中関係を改善したいという意欲を持ってスタートした政権だと理解している。経済・財政関係で向こうの要人と会うが、関係改善したいという意欲は持っている。そののどに刺さったトゲが靖国問題。日中国交回復したときに、中国は戦争指導者と一般日本国民を分けて国民に説明した経験がある。一般の日本人は敵ではない、一握りの戦争責任者(に責任がある)として国交を回復した経験がある。だから中国政府も国民に説明するのにそこがうまくいかないのだと思う。 安;国境を接している国同士、国益がぶつかることは世界中の国々でよく起こること。問題があるからこそ首脳が会って、胸襟を開いて問題を解決していく努力が大切だ。それを自然に受け入れられるように成熟した関係を構築すべく努力したい。具体的な方法については、今ここでつまびらかにするものではない。結果を出していきたい。 谷;中国が戦争責任者と一般国民を分けて国交回復したことを安倍氏はどう考えているか。 安;その文書は文書として残っていないと思う。国と国とが国交を正常化する、あるいは講和条約を結ぶ時、これは交わした文書がすべてなんだと思う。日本国民を2つの層に分けるということは、それは中国側の理解かもしれないけれども、日本側はそれで皆が理解しているということではない。やや階級史観風ではないかという議論もあるのではないか。 谷;安倍氏に聞くが、「村山談話」は侵略戦争だったことを認めているが、どう考えているか。 安:村山談話は閣議決定した談話。歴史的に政府が内外に発表した文章であり、その精神はこれからも続いていくと思っている。他方、個々の歴史の事実などの分析については本来は歴史家に任せるべきだ。政治家が発すると政治的なメッセージになる。外交的な作用を起こすことを念頭に判断するということになれば、それは正しい分析であるかどうかということになる。基本的に政治家はそういうことに対して謙虚であらねばならないと思っている。 |
佐藤は、この安倍の発言を2つの角度から分析し、安倍のとった対応を評価している。
その一つは、「国と国とが国交を正常化する、あるいは講和条約を結ぶ時、これは交わした文書がすべてなんだと思う」という発言だ。これを佐藤は、「合意は拘束する」という外交の大原則にてらし、安倍の発言を正当としている。なぜなら、そもそも公の場で確認できるような合意内容ならば、両国が文書にすればよいことだ。事実関係を「言った」「言わない」というレベルで、曖昧にする魂胆は排除されなければならない。佐藤は「あくまでも両国間の合意文書を基礎に進めようとする安倍氏に主張は正しい」という。
もう一つ、佐藤は、周恩来の「遺訓」にたいする安部の評価を検証している。この「遺訓」にたいする安部の評価について、国家というものは利己的なものだという認識にたつ佐藤は、いくつか世界史的にふりかえりながら「やや階級史観風ではないかという議論もあるのではないか」という安倍の評価を妥当だと指摘している。
その上で-ここからが核心だと思う-安倍が上に示した理解の上にたってどのようにふるまおうとしているのかどうかは別にして、佐藤は、日本にとって一見有利なようにみえる周恩来の「遺訓」に甘んずることなく、日本自身がより大きな立場に立って道義的責任をとる姿勢を明確にすることを説いているのだ。佐藤は、周恩来の「遺訓」の意義について次のように指摘している。
中国共産党には当初からマルクス主義とナショナリズムが混在していたが、突き放してみるならば、時の経過と共にナショナリズムがマルクス主義を凌駕していったのである。あえて図式的整理をしてみよう。マルクス主義ならば切り口は「階級」なので、民族に意味はない。毛沢東・周恩来時代の建前では、中国から資本家は放逐されているので、中国の労働者・農民・知識人と日本の一般人民は手を握ることができる。しかし、ナショナリズムならば「切り口」は「民族」になり、資本家、労働者などの階級対立は二義的問題になる。中国がマルクス主義からナショナリズムに転換する過程で、『周恩来の『遺訓』」が効力を失うことは必然的であると筆者は考える。 |
なるほど、中国共産党に「当初からマルクス主義とナショナリズムが混在」していたことはうなづけるものであるが、マルクス主義ならば「民族に意味はない」と断定するのは佐藤の勇み足である。当時の帝国主義的戦争のなかで中国人民は、侵略者としての列強を階級的にも、民族的にもとらえる必要があったし、とらえていたのではないか。だが、ここではそれは措いて、中国に「マルクス主義とナショナリズムが混在していた」事実と、マルクス主義からナショナリズムに転換する過程で、『周恩来の『遺訓』」の意義が相対的に低下していくことをつかんでおくことが必要だ。
今日、中国は、本格的な産業社会に移行しつつある。そうした場合、社会を推進する主体となる中国人民にナショナリズムが生まれ、同時に他者が敵にみえてくるのも不思議ではない。
佐藤はこの点をみのがしてはいない。その上で、安倍につぎのように注文をつけている。この注文にたいして異論をはさむのは容易だろう。だが、まさにいま、中国首脳との会談に臨んだ安倍が正面からうけとめる必要がある指摘ではないか。
安倍政権が「タカ派」であると決めつけてはならない。(上述で=引用者)引用した自民党総裁選候補討論会で安倍氏は、「村山談話は閣議決定した談話。歴史的に政府が内外に発表した文章であり、その精神はこれからも続いていくと思っている」と明確に述べている。思いつきで発言しているのでないならば、村山談話の歴史認識と「周恩来の『遺訓」の克服』という連立方程式の解を見出さなくてはならない。この解を見出したときに、小泉前総理の遺産である「日中間の不正常な関係」を日本は克服することができる。 |
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