廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

再来の歓びを噛みしめる

2018年12月01日 | jazz LP (Atlantic)

John Lewis / Improvised Meditations & Excurtions  ( 米 Atlantic 1313 )


ジョン・ルイスは高名なピアニストだから、いろんな立場の人が興味を持って聴く。 ただ、MJQから離れた一人のピアニストとしてこの人を鑑賞しようとする場合、
果たして適切なアルバムがあるかということになると、はたと困ってしまう。 "Afternoon in Paris" や "Grand Encounter" が名盤となっているのは
バルネやビル・パーキンスの名演がそうさせているのであって、これらを聴いてもジョン・ルイスの良さは何もわからない。 じゃあ、晩年のバッハ集を聴く?
いやいや、まさか。

ジャズ・ピアノを聴くなら結局のところ、ピアノ・トリオを聴くしかない。 そうするとこのアルバムなんかにぶつかることになる。 で、ジョン・ルイスはつまらない、
ということになってしまう。 もちろん、私も若い頃はそう思っていた。 特にこのアルバムはA面を聴いただけで投げ出してしまい、その後手にすることは
ついぞなかった。 今思えば、これは当然の反応だったろうと思う。 20代の若者がこれを褒めたりすれば、何か下心があるんじゃないのか?と勘繰ってしまう。

でも、歳を重ねて枯れてくると、この演奏の良さがじんわりと心の中に沁み込んでくるようになる。 人は外見も内面もどんどん変わっていく。 それに合わせて
自分に合う音楽も変わっていく。 そういう当たり前の事に、このレコードは気付かせてくれるのだと思う。 若い頃には高額過ぎてとても買えなかったレコードも
今なら少しは買えるようになって、そういう高額盤を手にして感慨に耽ることもある。 それはそれでいいことなんじゃないかと思う。 それは、まあいろいろあったけど、
何とか乗り越えてここまでやってこれた、一つの証の形じゃないか。 でも、昔は聴いてもその良さがわからなかった音楽が今は身に染みてわかるという体験は
内面の充実感を伴ったもっと違う形の感慨が沸いてくる。 それは他のものでは代替が効かない種類の想いだ。 だから、私はレコードをこうして漁り続ける。

古いスタンダードを気の知れた仲間と演奏したピアノトリオで、ジョン・ルイスなりの進化を遂げた個性的な演奏。 ポツリポツリと言葉少な気に物語を語るような
様子をじっくりと味わうことができる。 1度聴いてつまらなかったら、しばらく時間を置いて、忘れた頃にもう1度聴いてみるといいかもしれない。

コメント
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