廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

残念に思う気持ち

2018年12月09日 | jazz LP (Atlantic)

Tony Fruscella / S/T  ( 米 Atlantic 1220 )


たまたまアトランティック盤が続いてちょうどいいので、トニー・フラッセラを。 こういうタイミングを逃すと、もうブログにアップしようがない。
このアルバム、内容については語るべきことがほとんど何もない。

よくもまあ、ここまで無名の人ばかりを集めたものだ、と感心するメンバー構成で、レコードコレクターが唯一アレン・イーガーの名前を知っているくらいだろう。
その割には演奏が全体的にかなりしっかりとしているなあ、と感心するにはする。 フィル・サンケルが自作の楽曲を提供し、且つアルバム全体のアレンジを
やっていて、これが影の主役になっていてアルバムとしての成功要因になっている。 

個別に見ていくと、ピアノのビル・トリグリアが特にいい。 抑制されて無駄な音がなく、非常に趣味のいいピアノを弾いている。 そしてアレン・イーガーの
静かで枯れた演奏もこのアルバム・コンセプトと上手くマッチしてる。 柔らかくなめらかでくすんだトーンにも耳を奪われる。

フラッセラのトランペットも語り口のしっかりとしたもので、もっとたくさんのアルバムを残すべき人だった。 にもかかわらず、重度のジャンキーで且つ
アルコール依存症でまともに活動できず、42歳で亡くなった。 多くの才能がこうして無意味に失われていった。 秀逸なジャケットデザインとそこから受ける
印象を損なうことのないいい演奏で忘れ難い1枚になっているのに、1枚しか残せなかったというところにいつも後味の悪さがついて回る。
演奏を聴けば聴くほど、残念だという気持ちが音楽から受ける感銘を上回ってしまうのが何ともやり切れない。


コメント
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