Joe Castro / Groove Funk Soul ( 米 Atlantic Records 1324 )
ジョー・カストロはアトランティックにリーダー作を2枚残しただけなので、その実像はよくわからない。西海岸を拠点に活動していたようだが、
これといってスポットライトが当たることもなく、ひっそりとその生涯を終えたらしい。一時期、テディー・エドワーズと一緒に演奏をしていた
ようで、MetroJazzレーベルのロリンズのミュージック・インでのライヴ・アルバムの余白に収録されたテディー・エドワーズの演奏のバックで
ピアノを弾いている彼の様子が捉えられている。
私はテディー・エドワーズを聴いていると粗さを感じてしまうので好んで聴くことはないのだが、このアルバムを聴いて彼のテナーも含めた
音楽の良さに驚かされた。アップテンポの曲ではキレのよい闊達さで、ゆったりとした曲では深みのあるペーソス漂う表情で、いずれも懐の
深い音楽を展開している。このメンバーでこんなに豊かな情感が出てくるのか、というのが何よりの驚きだ。コンテンポラリー盤を聴いても
テディー・エドワーズの良さはあまりうまく捉えられていないと思うのは私だけなのだろうか。
カストロのピアノはバップの洗礼を受けていないような中道的なスタイルで、そういうところがこの音楽をありふれた雰囲気になることから
救っているような印象を受ける。テクニックを押し売りするようなところもなく、必要十分なだけの演奏で音楽を作り上げている。
ルロイ・ヴィネガーとビリー・ヒギンズの演奏もこれ以上ないくらいタイトで、この安定感があればこそ、という感じだ。特にヴィネガーのベースの
重量感のある音色が上手く録れており、全体がジャズのサウンドとして魅力的にまとまっている。アトランティックにしては珍しく音もよく、
このレーベルのモノラル盤に感じるストレスもまったくない。
こんなにいいレコードなのになぜ陽の目を見ることがないんだろう、とぼんやりと考えながら聴くけど、いつもその理由はよくわからない。